表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異質なその者は、世界の常識を改変する。  作者: 久米鱈 鯛子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/13

第12話 詠唱


 俺は問うた。

 その、突然現れた異変分子に対して。


 何故、そんな不利益な行動を取ったのかと。


 すると、その者は至極真っ当な疑問とでも言いたげに──



「──お前……!! どうして、エルフ語を話せる!」



 などと、意味の分からないことを口にしていた。


『エルフ語』。

 ……どうやら、先程この女が口にしていた幾つかの言葉は、そう呼ばれているものらしい。


 そんな言語、今までに聞いたことがないが……。


 しかし、それを踏まえた上でも、この者の言動は理解が出来なかった。


 自分からそのエルフ語とやらで話しかけてきて、『何故話せる!?』と疑問が湧くのはおかしいだろう。



 意味が通じないのを前提に、あれだけ声を張り上げていたのか。


 はたまた、他に扱える言語が無く仕方なくそれを使っていたのか。


 或いは、そんな些細なことを気に掛ける余裕すらないほどに、この女が切羽詰まっていたのか。


 ──どの道、向こうから先に危害を加えてきたことに変わりはない。


「……再、質問。……何故、私を攻撃してきた?」


「っ!!」


 再度、俺は先に投げたものと同じことを問う。


 その際、軽く身を返した。


 言葉を発する為に。

 そして、質問相手の方を確実に振り返り、その女の様子を伺う為に。


 ……すると、その者はこちらの挙動に反応し、持っていた弓を更に引き絞った。


「動くなっ! ……答えろ、貴様は何者だっ! ここで一体何をしているっ?!」


 そこから動くな、そして近づくな。


 そんなことを言いたげに、女は声を張り上げた。


 しかも、その剣幕はあまりに迫真的で、僅かな刺激でもその左手で引いた矢を離してしまいそうである。


「──っ、……ふ、ぅ……」


「……?」


 ……だが、そう怒鳴り声を上げた後、どういう訳かその者は小刻みに息を吐き出していた。


 いや、それだけではない。

 先程は気付かなかったが、この女。よく見れば随分と()()()()()ようであった。


 息を切らし、血の気の引いたような青白い肌で、額には油汗が滲んでいる。


 絶えずこちらを睨んではいるが、その焦点はどこか揺らいでいて定まっていない。


 ──それはまるで、高熱か何かにでも侵されているような面持ちであった。


「疑問。……体調でも、悪いの?」


「ッ……!?」


 これは、心遣いではない。


 ただ、そんな正気かも怪しい状態で、どうしてこちらに干渉してきたのかという素朴な疑問であった。


 しかも、こんな夜の森の中で。


「たっ……体調、だとッ……? そんなの、こんな異様な”瘴気”に当てられてたら、誰だって────」


 思えば、女のその険悪な態度には怒りや警戒も確かにあった。

 しかし、同時にその身体の異常を耐え忍ぶ為でもあるようだった。


 そして、この者は言った。


 自分がここまで苦しんでいる、その理由は”異常なモノ”に晒されているからだと。


 それは、今も尚この空間に満ちている──



 ──『瘴気』、であると。なるほど。



 一瞬、俺の思考の中にその単語が留まった。


 ここで目覚めてから、俺はそれに類似する言葉を一度しか目にしていない。


 つまり、これは……。




「────ノ・ファイ。ディクス=ブレイズ、ウガ。──『ファイ=ブレイズ』っ!!」




 そんなことを考えていると、またしても別の誰かの声が響いた。


 それは、俺と目の前の耳を尖らせた女、その側方から聞こえた。


 朽ちた森、黒変した葉、その先から。



 ──そして、轟々と燃える鮮やかな橙色の揺らぎが、こちらに迫って来ていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ