第11話 対話
俺の腹部から、矢じりが覗いていた。
どうやら、背後から不意を突かれ、射貫かれたらしい。
……だが、何故か不思議と痛みは無かった。
というより、刺さっているという感覚すらなかった。
例えるなら、そう……違和感だ。
何かが引っ掛かっているような感じがして、苦痛は無いが、少々こそばゆく気に掛かる程度。
……血すら、出ていない。
ただ、刺さった部分には黒い靄が渦を巻いて────異物が混ざっている、という感覚だけが残り続けていた。
「──Sae'liar!」
俺がそのことを理解していると、突然背後の茂みから声がした。
そして、俺は振り返る──すると、そこには尖った耳をした女が立っていた。
金色で長い髪を後ろで結わい、隙間からは件の三角形の耳。
森で活動するのに適したような、少々旧来の動きやすい服装。
──おまけに、その手には矢を握りしめ、背中には矢筒を背負っていた。
「Sae'liar! Venri'a!」
女は、頻りに何かを叫んでいた。
しかも、その手元の弓はギリギリと音が鳴りそうな程に弦が張っていて、矢先がこちらを向いてる。
……なるほど。俺は恐らく、この者に”攻撃”されたのだろう。
何故かは分からない。
が、その怒鳴るような声音と、迫真迫った表情がそれを物語っていた。
「Rae'lin! Sae var!」
再び、その女は叫ぶ。
何と言っているのか、その意味は分からない。
しかし、特定の発音や似たような言葉の響きがあることから、少なくとも『言語』であることは理解できる。
見知らぬ女。
常人ならざる、その身体的特徴。
けれども意志を持ち、思考して、”言葉”を話している。
……理解が、必要。
この女が言っていることに関して。
読み取って、汲み取って。
そしてこちらも、話して、言って、そして聞かせて貰わねば────何故、コチラヲ”害シタ”ノカ。
「──質問。……なぜ、私を攻撃してきた?」
「……っ!!」
俺は、純粋に、最も初めに湧いた疑問を相手に投げ掛けた。
どうして、こんな無意味な行動を取ったのか。
何故、謂われも無い俺に危害を加えたのか。
その真意を、目の前の存在に問うた。
……すると、目の前の女は、酷く驚いた表情を浮かべながら──
「────お前……どうして、エルフ語を話せる……!!」
と、至極意味の分からない言葉を口走っていた。
どうして、そっちが驚くのだろう。
……先に私に干渉してきたのは、オマエだというのに。




