表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔族の女王が転生したら聖女になっていた  作者: 白神 エル
第六章:王都への道 ― 新たなる星座の旅路 ―

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
99/107

帝国への第一歩 ― サンテスの街へ ―

いつもご覧いただきありがとうございます。


今回は帝国最初の街・サンテスへ到着し、アルカンダダンジョンに関する情報収集を行います。新たな情報を得たレオネリア達が、どのような判断を下すのかにもご注目ください。


それでは、第六章の続きをお楽しみください。

レオネリアとメルキオラはテントへ入ると、入口から見える位置に寝袋を二つ並べた。

もちろん、それは偽装用である。

誰かが覗いても、二人がそこで眠っているように見せるためだ。

メルキオラは静かに異空間へ繋がる扉を開く。


「行きましょう。」


「ええ。」


二人は扉をくぐった。

その瞬間、狭いテントの中とは思えないほど広々とした空間が目の前に広がる。

リビングや寝室、キッチンまで備えられた快適な空間。

リディア達とは出会ったばかりということもあり、この異空間の存在だけはまだ秘密にしていた。


「まずはエルシア様へご報告しましょう。」


メルキオラは通信機を取り出し、魔力を流す。


しばらくすると、通信機から聞き慣れた声が聞こえてきた。


『はい、エリスです。』


「エルシア様、レオネリアです。

 ご報告いたします。」


『うん、聞かせて。』


「私達は本日、昨日お話ししたAランク冒険者パーティ『リディア』の皆さんと共に、ローレンツを出発いたしました。

 道中ではゴブリンの群れと交戦しましたが、無事に討伐しております。

 やはり魔族による改造個体だったようで、魔石は黒く変色していました。

 それ以外に大きな問題はなく、予定通り明日には帝国へ入国できる見込みです。」


通信の向こうでエリスが静かに頷く。


『分かったわ。

 こちらも報告するね。

 私達は少し事情があって、ミネアヴィレッジにしばらく滞在することになったの。

 だから、予定より少し足止めになりそう。』


「承知いたしました。

 そちらもお気を付けください。」


『ありがとう。

 レオネリア達も気を付けてね。

 何かあったら、すぐ連絡して。』


「はい,それでは失礼いたします。」


通信が途切れる。

メルキオラは通信機を静かにしまった。


「お互いの状況は把握できましたね。」


レオネリアも小さく頷く。


「ええ、明日はいよいよ帝国ね。

 何事もなく入国できればいいのだけれど。」


二人は明日に備えてそれぞれ休む支度を始めた。

異空間の静かな夜は、ゆっくりと更けていくのだった。



翌朝。

テントの隙間から差し込む柔らかな朝日を浴び、リディアはゆっくりと目を覚ました。


「よく眠れた……。」


思わず小さく呟く。

野営では交代で見張りを立てるのが当たり前。

しかし昨夜は、メルキオラが設置した防護結界のおかげで見張りをする必要がなかった。

朝までぐっすり眠れたのは久しぶりだった。


「やっぱり見張りをしなくていいだけで、疲れの取れ方が全然違うわね。」


隣を見ると、ソフィアとスピカはまだ気持ち良さそうに眠っている。

起こさないよう静かに身支度を整えていると、小さな物音で二人も目を覚ました。


「おはよう。」


「「おはよう。」」


三人は朝の挨拶を交わす。

リディアは先にテントの外へ出た。

外へ出ると、すでにレオネリアとメルキオラは起きており、簡易テーブルを囲んで湯気の立つお茶を飲んでいた。


「おはようございます。」


「「おはよう。」」


朝の挨拶を交わすと、リディアは少し驚いたように笑う。


「二人とも早起きなんですね。」


レオネリアは穏やかに微笑んだ。


「習慣なの。

 どうしてもこの時間には目が覚めてしまうのよ。」


メルキオラがティーカップを一つ用意する。


「リディアさんも、お茶はいかがですか?」


「ありがとうございます。

 いただきます。」


リディアは温かいお茶を受け取り、一口飲んだ。


「美味しい……。」


自然と笑みがこぼれる。

ほどなくして、ソフィアとスピカもテントから出てきた。


「「おはようございます。」」


「「おはよう。」」


二人にもお茶が振る舞われ、五人は朝の穏やかな時間を過ごす。

やがて簡単な朝食を作り、全員で食卓を囲んだ。

食事を終えると、手際よく後片付けを済ませる。

メルキオラが魔道具へ魔力を流すと、防護結界が静かに解除された。

巨大な岩はゆっくりと姿を消し、隠されていた馬車が再び姿を現す。


「何度見ても凄いわね……。」


リディアは感心したように呟いた。

荷物を馬車へ積み込み、それぞれが乗り込む。

レオネリアが手綱を握る。


「それじゃあ、出発しましょう。」


「いよいよ帝国ね。」


リディアの言葉に全員が頷いた。


馬車はゆっくりと動き出し、帝国へ続く街道を進み始める。

今日はいよいよ、帝国へ入国する日。

新たな出会いと試練が待つその地を目指し、五人を乗せた馬車は朝日に照らされながら走り続けた。

街道は穏やかで、旅は順調そのものだった。

途中、何度か魔物が行く手を阻んだものの、その度にレオネリアとメルキオラが馬車を降り、難なく討伐していく。

リディア達が剣を抜く暇もないほど鮮やかな戦いぶりに、馬車の中では感嘆の声が漏れた。

二人が何事もなかったかのように馬車へ戻ると、一行は再び帝国の国境を目指して街道を進んでいくのだった。


そうして数時間後。


一行の前方に、高くそびえる石造りの城壁が見えてきた。

その中央には、サントス国とヴァルガディア帝国を結ぶ巨大な国門がある。


「見えてきたわ。」


リディアが前方を指差した。


「帝国ね。」


やがて馬車はサントス国側の国門を通り抜け、帝国側の入国審査を待つ列へと並ぶ。

商人や旅人、冒険者達が順番を待っており、検問は思っていたよりも厳重だった。


しばらくして、ようやく五人の番が回ってきた。


「ギルドカードと入国許可証ビザを提示してください。」


門兵の声に、五人はそれぞれ冒険者ギルドカードとビザを差し出した。


門兵は一枚ずつ内容を確認していく。


「入国の目的は?」


リディアが代表して答える。


「アルカンダダンジョンへ向かいます。」


門兵は頷き、再び五人のギルドカードへ目を通した。


全員Aランク冒険者。


ビザにも問題はない。


「確認した。」


「入国を許可する。」


「ヴァルガディア帝国へようこそ。」


門兵からギルドカードとビザを受け取ると、レオネリアは軽く一礼した。


「ありがとうございます。」


馬車はゆっくりと国門をくぐり、ついにヴァルガディア帝国へと足を踏み入れた。

しばらく走ったところで、スピカが嬉しそうに笑う。


「やっと帝国ですね!」


ソフィアも周囲を見回しながら頷いた。


「ここまで長かったわね。」


リディアも安堵したように息を吐く。


「まずは無事に入国できて良かった。」


レオネリアは静かに前を見据える。


「ここからが本番ね。」


メルキオラも小さく頷いた。


「ええ、まずはアルカンダダンジョンの情報を集めましょう。」


五人を乗せた馬車は、ヴァルガディア帝国へ向けてゆっくりと走り出した。

馬車は帝国最初の街、サンテスを目指して街道を進んでいた。


サントス王国では、国境付近に街は存在しない。

過去に帝国との戦争が幾度となく繰り返され、その度に国境の街は戦火に巻き込まれてきたためである。現在も国境には騎士団の駐屯地が置かれているだけだった。


一方、ヴァルガディア帝国はサントス王国より国土が狭く、国境からおよそ馬車で二時間ほどの場所に最初の街、サンテスがある。


街道を進み続けること約二時間。

前方に石造りの城壁が見え始めた。


「あれがサンテスね。」


リディアが指差す。

ほどなくして一行は街門へ到着した。


入門の際、門兵へ冒険者ギルドカードとビザを提示する。

国境で入国手続きを済ませていることもあり、簡単な確認だけで街への入場が認められた。

街へ足を踏み入れたレオネリアは辺りを見回す。

サンテスはローレンツと同じくらいの規模の街だった。

国境の街ということもあり、宿屋や商店が数多く立ち並び、旅人や冒険者の姿が目立つ。

リディアは辺りを見回しながら口を開いた。


「まずは冒険者ギルドへ行きましょう。」


「アルカンダダンジョンの情報を集めないとね。」


「そうね。」


全員が頷き、冒険者ギルドへ向かう。

ギルドへ入ると、そこは多くの冒険者で賑わっていた。

サントス王国から入国してきた者達も多いようで、情報収集や依頼の確認をしている姿があちこちで見られる。

リディア達は受付へ向かった。


「アルカンダダンジョンに関する情報はありますか?」


受付嬢は資料を確認しながら答える。


「後ほどご説明します。その前に現在受けられる依頼もご覧になりますか?」


「お願いします。」


依頼書に目を通した後、リディアは続けて尋ねた。


「それと、この街でおすすめの宿はありますか?」


「はい。」


受付嬢は笑顔で頷き、評判の良い宿を二軒紹介してくれた。

受付嬢から紹介された宿の一覧を見ると、


『明星亭』

『双剣亭』


という二軒の名前が書かれていた。


「明星亭はAランク冒険者の利用も多く、この街では特に評判の良い宿です。

 その分宿代は少し高めですが、食事も設備も充実しています。

 双剣亭は明星亭よりリーズナブルなので、長期滞在される冒険者に人気ですね。」


受付嬢は笑顔で説明した。

レオネリアとメルキオラは顔を見合わせる。

今回は宿代をリディア達が負担すると決まっているため、自分達から希望を口にすることはしなかった。

リディアは二人へ視線を向ける。


「私達は明星亭にしようと思うんだけど、どうかな?」


レオネリアは少し遠慮がちに答える。


「私達はどちらでも構いません。」


するとスピカが笑顔で言った。


「結界や水の魔道具まで作ってもらうんだから、このくらいはお礼をさせてください。」


ソフィアも頷く。


「そうそう。Aランク冒険者なら、このくらいの宿代は問題ないわ。

 決まりね。」


リディアがそう言うと、全員が頷いた。

続いて依頼掲示板へ目を向ける。

魔物討伐や護衛依頼が並ぶ中、一枚の依頼書が目に留まった。


『盗賊団捕縛依頼』


レオネリアとメルキオラは思わず顔を見合わせる。


「……サントスでも盗賊が増えていたわね。」


レオネリアが小さく呟く。

メルキオラも静かに頷いた。


「帝国でも同じ状況ということですね。」


二人は魔族が各地で混乱を招いている可能性を改めて感じていた。

その様子を見ていた受付嬢が口を開く。


「それでは、アルカンダダンジョンについてご説明します。」


全員が受付へ向き直る。


「最近は以前よりも出現する魔物が明らかに強くなっています。

 そのため、現在はBランク以上の冒険者しか入場できないよう制限されています。

 それから……。」


受付嬢は声を少し潜めた。


「最近、濁った黒い魔石を落とす魔物の目撃報告が急増しています。」


その言葉にレオネリアとメルキオラの表情が僅かに引き締まる。

やはり帝国でも同じ現象が起きている。

二人は確信した。


説明を聞き終えると、一行は受付嬢へ礼を言い、冒険者ギルドを後にした。

そして紹介された宿、『明星亭』へ向かう。

最後までお読みいただきありがとうございました。


無事にサンテスへ到着し、アルカンダダンジョンでは魔物の強化や濁った魔石など、不穏な情報が次々と明らかになりました。そして一行は、この日の宿となる『明星亭』へ向かいます。


次回は宿で荷物を置いた後、冒険者に人気の食事処『ローストオーク』で昼食を楽しみながら、メルキオラの魔道具に必要な材料についても語られます。


次回も『魔族の女王が転生したら聖女になっていた』をよろしくお願いいたします。

感想や評価、ブックマークなども大変励みになります!


次回の更新は、7月28日18時を予定してます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
https://ncode.syosetu.com/n5658ly/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ