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魔族の女王が転生したら聖女になっていた  作者: 白神 エル
第六章:王都への道 ― 新たなる星座の旅路 ―

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帝国に広がる異変 ― サンテスで掴んだ新たな情報 ―

いつもご覧いただきありがとうございます。


今回は帝国最初の街・サンテスで情報収集を行います。冒険者ギルドや酒場で集めた情報から、サントス王国だけではない異変の存在が少しずつ明らかになっていきます。


それでは、第六章の続きをお楽しみください。

明星亭へ到着すると、リディアは受付へ向かった。


「五人で泊まりたいのですが、三人部屋一室と二人部屋一室は空いていますか?」


受付係は帳簿を確認すると申し訳なさそうに答えた。


「申し訳ございません。本日は三人部屋が満室となっております。二人部屋でしたら二部屋ご用意できますが、一部屋に追加ベッドを入れれば三名でご利用いただけます。」


リディア達は顔を見合わせた。


「一泊だけだし、そのくらいなら問題ないわね。」


全員が頷き、その内容でお願いすることにした。


「二人部屋が一部屋十五銀貨、追加ベッド代が五銀貨ですので、合計三十五銀貨になります。朝食付きとなっております。」


リディアが宿代を支払い、鍵を受け取った。


「荷物を置いたら受付に集合しましょう。昼食を食べに行くわ。」


「「了解。」」


五人はそれぞれ荷物を部屋へ置き、再び受付で合流した。

受付で近くにおすすめの店がないか尋ねると、すぐ近くにある『ローストオーク』が冒険者に人気だと教えられる。

礼を言うと、一行はそのままローストオークへ向かった。

店へ入ると、中は評判通り多くの冒険者で賑わっていた。

空いている席へ座り、メニューを開く。

店名の通り、オーク肉を使った料理が数多く並んでいる。

スピカが店員を呼んだ。


「オーク肉の一撃ステーキってどんな料理なんですか?」


店員は笑顔で答えた。


「当店の看板料理です! とにかく大きくて分厚いオーク肉を豪快に焼いた一品で、一枚食べれば疲れなんて吹き飛びますよ。」


「じゃあ、コカトリスの鉄鍋モモステーキは?」


「店名はローストオークですが、コカトリス料理も人気なんですよ。プリプリでジューシーなコカトリスのモモ肉を鉄鍋で焼き上げていて、ニンニクもガッツリ効いています。」


「オーク肉の黒胡椒岩塩焼きは?」


「こちらは黒胡椒と岩塩で濃いめに味付けした一品です。オーク肉の脂の旨味を存分に味わえますので、中毒性があるって常連さんにも評判ですね。」


説明を聞き、それぞれ注文を決めた。


レオネリアとリディアはオーク肉の一撃ステーキ。

メルキオラとソフィアはオーク肉の黒胡椒岩塩焼き。

スピカはコカトリスの鉄鍋モモステーキを注文した。


それぞれが食事を堪能しながら、スピカはメルキオラへ尋ねる。


「そういえば、魔道具を作るのに必要な材料って何がいるんですか?」


「ああ、そういえば言い忘れていましたね。」


メルキオラは少し苦笑した。


「そんなに難しいものではありません。一つ作るのに必要なのは魔石が合計十五個です。ただし、この前のゴブリンが落としたような濁った魔石は使えません。透明な通常の魔石をご用意ください。」


スピカは安心したように頷く。


「魔石ならすぐに集められそうですね。」


「ええ。種類は問いませんが、高位の魔物の魔石ほど性能は良くなります。防護結界なら強度が上がりますし、水の魔道具なら一度に出せる水の量が増えます。」


少し考えてから続けた。


「ですから、防護結界の魔道具に使うなら、なるべく高位の魔物の魔石がおすすめです。シルバーウォーウルフくらいの魔石なら、それなりに性能の良いものができますよ。」


「特別な材料はいらないんですね。」


「ええ。ギルドや道具屋に行けば、すぐに揃えられると思います。」


それを聞いたスピカは、嬉しそうに身を乗り出した。


「それなら今日のうちにギルドか道具屋で揃えてきます!」


リディアも笑う。


「夕食の時に渡せばいいかな?」


「ええ。」


メルキオラは頷いた。


「その時に確認させていただきます。」


「ありがとうございます!」


スピカは満面の笑みを浮かべた。


和やかな雰囲気の中、五人は昼食を楽しみ、しばらく談笑を続ける。

やがて全員が食べ終えると、タイミングを見計らった店員が伝票を手にテーブルへやって来た。。

リディアが五人分をまとめて支払おうとすると、レオネリアが慌てて手を伸ばした。


「待って。私達の分は私達が払うわ。」


そう言って銀貨を差し出す。

しかしリディアは首を横に振った。


「いいのよ。このくらい。」


「約束は宿代と夕食だけよ。昼食までご馳走になるわけにはいかないわ。」


レオネリアも譲らない。


「でも、魔道具を作ってもらうんだから……。」


リディアも負けじと言い返す。

二人が譲らない様子を見ていたメルキオラが静かに口を開いた。


「約束は、魔道具をお作りするお礼として、宿代と夕食をご馳走していただくことです。」


穏やかな口調だったが、その声音は真剣だった。


「それ以上お気遣いいただくのであれば、私達も約束どおり魔道具をお作りすることができません。」


その一言でリディアは苦笑する。


「……そこまで言われたら仕方ないわね。

 それじゃあ、お昼はそれぞれ自分で払いましょう。」


レオネリア達は軽く頭を下げ、自分達の昼食代を支払った。

店を出ると、一行は明星亭へ戻る。

受付の前でリディアが口を開いた。


「夕方まで自由行動にしましょう。

 十八時にここへ集合でいい?」


「ええ。」


全員が頷く。

リディア達とレオネリア達は二手に分かれ、それぞれ目的地へ向かった。



リディア達は冒険者ギルドへ戻ると、受付へ向かった。


「魔石を購入したいのですが、在庫はありますか?」


受付嬢は資料を確認しながら答える。


「ございます。」


「ワイバーンの魔石が五個、ロックゴーレムの魔石が七個、シルバーウォーウルフの魔石が十個、トレントの魔石が二十個、ゴブリンの魔石は多数ございます。」


「値段は、ワイバーンの魔石が一つ金貨二枚、ロックゴーレムの魔石が一つ金貨一枚、シルバーウォーウルフの魔石が一つ銀貨五十枚、トレントの魔石が一つ銀貨三十枚、ゴブリンの魔石が一つ銀貨十枚になります。」


それを聞いたスピカが考え込む。


「防護結界の方は、できるだけ良い魔石を使った方がいいよね。」


リディアも頷いた。


「そうね。

 だったら、ワイバーンとロックゴーレムは全部買って、足りない分をシルバーウォーウルフで補えばいいんじゃない?」


その案に全員が賛成した。


ワイバーンの魔石五個。

ロックゴーレムの魔石七個。

そして不足分としてシルバーウォーウルフの魔石三個。

合計十五個。


代金は金貨十八枚と銀貨五十枚になった。


「水の魔道具は、一度にそんなに大量の水が出なくても十分よね。」


ソフィアがそう言うと、リディアも頷く。


「だったら、トレントの魔石でいいわ。」


こちらはトレントの魔石十五個。

代金は金貨四枚と銀貨五十枚。

合計で金貨二十三枚となった。

決して安い買い物ではない。

しかし、今まで依頼をこなして貯めてきた資金がある。

Aランク冒険者である彼女達にとって、この程度の出費は十分支払える金額だった。

それに、この先の旅が格段に快適になることを思えば、むしろ安い買い物だとさえ感じていた。



一方その頃。

レオネリアとメルキオラは情報収集のため、冒険者ギルド近くの酒場を訪れていた。

昼間にもかかわらず、多くの冒険者が酒を飲みながら情報交換をしている。

空いている席へ腰を下ろすと、一人の冒険者が近付いてきた。


「見かけない顔だな。

 どこから来た?」


レオネリアは警戒されないように答える。


「サントス国からよ。」


「そうか。」


男は少し身を乗り出した。


「なら聞きたいことがある。

 サントスでも最近、魔物に変わった様子はあったか?」


レオネリアは逆に尋ねる。


「どうしてそんなことを聞くの?」


男は眉をひそめた。


「今、帝国内じゃ魔物の様子がおかしいんだ。

 他の国でも同じなのか気になってな。」


メルキオラが静かに口を開く。


「どのようにおかしいのですか?」


冒険者は周囲を気にしてから声を潜めた。


「まず、魔物そのものが前より明らかに強くなっている。

 それだけじゃない。

 倒して手に入る魔石が黒く濁っているんだ。」


一拍置き、さらに続ける。


「しかも、今まで誰も見たことがない魔物まで現れ始めている。」


レオネリアとメルキオラは互いに視線を交わした。

話を聞く限り、帝国内でもサントス王国と同じような異変が起きているようだった。

レオネリアは静かに頷いた。


「サントスでも同じようなことが起きていたわ。」


冒険者の男が驚いた表情を浮かべる。


「やっぱりか。」


「ええ。魔物が以前より強くなっているし、倒した後の魔石も黒く濁っていたわ。」


レオネリアは一呼吸置いて続けた。


「それだけじゃない。今まで見たことのないキメラも何体か現れたの。」


男は思わず息を呑む。


「キメラまで……。」


「さらに、セントポルではスタンピードまで起きたわ。」


もちろん、そのスタンピードを自分達が鎮圧したことまでは話さなかった。

男は腕を組み、難しい表情で考え込む。


「スタンピードまで起きたのか……。

 そうなると、こっちでも起きるかもしれねぇな。」


しばらく黙っていた男は、やがて笑みを浮かべた。


「貴重な情報をありがとうよ。

 お礼と言っちゃなんだが、エールを一杯奢らせてくれ。」


そう言うと店員を呼び、レオネリアとメルキオラの分のエールを注文した。


「ありがとうございます。」


メルキオラは軽く頭を下げた。

二人は差し出されたエールを受け取りながら、小さく視線を交わす。

サントス王国で起きていた異変は、帝国でも起き始めている。

やはり魔族は、その矛先を帝国へ向け始めたのではないか。

二人は改めて、その可能性を強く感じていた。


最後までお読みいただきありがとうございました。


今回はサンテスでの情報収集を中心にお届けしました。アルカンダダンジョンだけでなく、帝国内各地でもサントス王国と同じような異変が起きていることが判明し、レオネリア達も魔族の狙いが帝国へ向いた可能性を強く意識し始めます。


次回は再びエリス達の視点へ戻り、ミネアヴィレッジでのお話が始まります。聖女の来訪に村はどのような反応を見せるのか、お楽しみに。


次回も『魔族の女王が転生したら聖女になっていた』をよろしくお願いいたします。

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次回の更新は、7月30日18時を予定してます

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