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魔族の女王が転生したら聖女になっていた  作者: 白神 エル
第六章:王都への道 ― 新たなる星座の旅路 ―

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聖女が灯す希望 ― 奇跡が結ぶ人々の笑顔 ―

いつもご覧いただきありがとうございます。


今回はエリスがミネアヴィレッジの教会で治療を行います。聖女の奇跡を目の当たりにした人々は、どのような想いを抱くのでしょうか。


それでは、第六章の続きをお楽しみください。

時は少しだけ遡って――。


エリス達はミネアヴィレッジで初めての朝を迎えた。

これまでなら宿に泊まるだけで野営の疲れは取れていた。しかし今では、馬車の異空間にある部屋で眠る方がぐっすりと眠れるようになっていた。いつの間にか、あの部屋は完全に自分達の部屋になっている。

もちろん、今泊まっている宿に不満があるわけではない。ただ、それだけ馬車の異空間が快適だったということだ。

エリスが目を覚ますと、隣で寝ていたマリンもゆっくりと目を開けた。


「おはよう。」


「おはよう、エリス。」


挨拶を交わし、二人は身支度を整えると部屋を出て食堂へ向かった。


すると、クラリス達はすでに席に着いていた。


「おはよう。」


「おはよう。」


互いに挨拶を交わし、エリスとマリンも同じテーブルに腰を下ろす。

しばらくすると、ルシアン達も食堂へやって来た。

全員が揃ったところで朝食を取りに向かう。

この宿の朝食はビュッフェ形式で、自分の好きな料理を取ってくる方式だった。


エリスとマリンはパンケーキにヨーグルト、そしてサラダを選ぶ。

ルシアン達はソーセージにベーコン、トースト。

クラリス達はトーストにサラダ、それに卵料理を皿へ盛り付けた。


全員が席へ戻ると、朝食を食べながらルシアンが口を開いた。


「じゃあ、今日の予定を確認しておこう。」


全員がルシアンへ視線を向ける。


「エリスとミリアは教会へ向かってくれ。」


「分かりました。」


「はい。」


エリスとミリアが頷く。


「俺達は騎士団庁舎へ行って、盗賊達の取り調べを手伝う。」


クラリス達も異論はないようで頷いた。


「それじゃあ、朝食を済ませたらそれぞれ向かおう。」


全員が頷き、朝食を食べ終えると席を立つ。

そして、それぞれの目的地へ向かった。



宿で朝食を終えると、エリスとミリアは教会へ向かう準備を整えた。

すると、約束どおり司祭のポーラが迎えにやって来た。


「おはようございます、聖女様。」


ポーラは笑顔で頭を下げる。


「おはようございます。」


エリスとミリアも挨拶を返した。

三人は教会へ向かって歩き始める。

しばらくすると、遠目にも教会の前へ大勢の人が集まっているのが見えた。


「すごい人……。」


エリスが思わず足を止める。


ポーラは申し訳なさそうに微笑んだ。


「実は、聖女様が治療してくださるという噂が広まりまして……。」


ポーラは申し訳なさそうな表情を浮かべる。


「ご安心ください。診ていただきたい患者様は教会の中でお待ちいただいております。」


「外にいらっしゃる皆様は……。」


ポーラは教会の前に集まる村人達へ視線を向けた。


「聖女様が治療してくださるという噂を聞きつけ、一目お会いしたいと集まられた方々です。

 中には軽い怪我や体調不良の方もいらっしゃいますが、緊急性の高い方ではございません。

 優先して診ていただきたい方は、すでに教会内でお待ちいただいております。」


「そうだったんですね。」


エリスはほっと胸を撫で下ろした。

教会の前まで来ると、村人達が一斉にエリスへ気付く。


「あっ、聖女様だ!」


「本当に来てくださった!」


「聖女様!」


次々と歓声が上がり、村人達の表情が一気に明るくなった。

エリスは少し照れながらも、笑顔で手を振る。


「おはようございます。」


その一言だけで、教会の前はさらに大きな歓声に包まれた。


「これは……。」


あまりの歓迎ぶりに少し照れくさくなりながら、エリスは足早に教会の中へ入っていった。

教会の中には数人の患者が静かに椅子へ腰掛け、順番を待っていた。

ポーラに案内され、エリスは最初の患者の前へ立つ。

四十歳くらいの男性だった。


「今日はよろしくお願いいたします。」


男性は深く頭を下げた。


「症状を教えていただけますか?」


エリスが優しく尋ねる。


「はい。」


男性は頷いた。


「山で仕事をしていた時に落石がありまして……。

 逃げ遅れて、脚が岩の下敷きになってしまったんです。

 仲間に助けてもらえたんですが、それ以来、脚が動かなくなってしまいました。」


そう言って、自分の脚を悔しそうに見つめる。


「まだ子供も小さいんです。

 働けなくなると家族を養えません。」


その言葉を聞いたエリスは静かに頷いた。


「分かりました。」


エリスは男性の脚へそっと手をかざす。


「──治って。」


優しい声とともに、淡い聖なる光が男性の脚を包み込んだ。

しばらくすると、光はゆっくりと消えていく。


「一度、立ってみてください。」


恐る恐る男性は立ち上がる。

震えていた脚はしっかりと身体を支え、一歩踏み出した。

そして、もう一歩。


「歩ける……。」


男性は信じられないという表情で自分の脚を見つめた。

何度か足踏みを繰り返し、やがて目には涙が浮かぶ。


「ありがとうございます……!

 本当にありがとうございます!」


教会の中は大きな拍手と歓声に包まれた。

また一つ、聖女の奇跡が人々の心へ希望を灯したのだった。


次に案内されたのは、まだ幼い少女だった。

少女は母親に手を引かれながら、ゆっくりとエリスの前まで歩いて来る。


「今日はよろしくお願いします。」


母親は深々と頭を下げた。


「症状を教えていただけますか?」


エリスが優しく尋ねる。


母親は少女の肩にそっと手を置きながら話し始めた。


「少し前に盗賊に襲われまして……。」


「幸い、騎士団の方々に助けていただけたのですが、その時に頭を強く打ってしまったようで……。」


「それ以来、この子の目が見えなくなってしまったんです。」


少女は何も見えないまま、不安そうに母親の服を握りしめていた。


「分かりました。」


エリスは優しく微笑むと、少女の前へしゃがみ込む。


「すぐに治しますからね。」


少女は小さく頷いた。


エリスは少女の両目へそっと手をかざす。


「──目が見えるようになって。」


その瞬間、柔らかな聖なる光が少女の目元を優しく包み込んだ。

しばらくすると光は静かに消えていく。


「ゆっくり目を開けてみて。」


少女は恐る恐る目を開いた。


「あっ……。」


今まで真っ暗だった世界に、光が差し込む。

目の前には優しく微笑むエリス。

隣には涙を浮かべる母親の姿。


「お母さん……見える!」


少女は嬉しそうに声を上げた。


「見えるよ!」


その言葉を聞いた母親は娘を強く抱きしめる。


「よかった……本当によかった……。」


親子は涙を流しながら何度もエリスへ頭を下げた。


「ありがとうございます!」


「本当にありがとうございました!」


教会の中は温かな拍手に包まれる。

その後もエリスは、一人ひとりの症状を丁寧に聞きながら治療を続けていった。

腰を痛めた老人。

長年、肩が上がらなくなっていた女性。

高熱が続いて苦しんでいた少年。

エリスが手をかざし、優しく願うたびに、聖なる光が傷や病を癒していく。

その光景を目の当たりにした人々の目には、エリスの姿はまさに聖女そのものとして映っていた。


エリスはその後も、一人ひとりの症状を確認しながら治療を続けた。

腰を痛めた老人。

長年、腕が上がらなくなっていた女性。

高熱に苦しむ少年。

さらに二人を治療し、今日の治療は七人で終わりとなった。


実は、この人数はポーラがあらかじめ決めていたものだった。

あまり無理をさせたくない。

そんな配慮から、今日の治療は七人までに絞っていたのである。

一方のエリスは、まだ余力を残していた。

以前と比べれば、魔力はかなり増えている。

力を使えば使うほど魔力も成長していることを、エリス自身も実感していた。

それでも、ここはポーラの好意に甘えることにした。


「聖女様、本日はありがとうございました。」


ポーラは深々と頭を下げる。


「もしよろしければ、明日も治療をお願いできませんでしょうか。」


「もちろんです。」


エリスは笑顔で頷いた。


「私にできることなら、お手伝いします。」


そこでエリスは周囲を見回した。


「ミリアさんは?」


教会の中には姿が見当たらない。

ポーラが教会の外へ視線を向ける。


「ミリア様でしたら、外で軽い怪我をされた方々の治療をしてくださっています。」


エリスは教会の外へ出ると、村人達を治療しているミリアの姿を見つけた。


「ミリアさん。」


エリスが声を掛けると、ミリアは振り返った。


「終わったの?」


「はい、今日はここまでみたいです。」


ミリアも頷くと、治療を終えて立ち上がった。

二人は改めてポーラへ挨拶をする。


「ありがとうございました。」


「こちらこそ、本当にありがとうございました。」


ポーラは深々と頭を下げ、二人を見送った。

エリスとミリアは教会を後にするのだった。



一方その頃。


ルシアン達は騎士団庁舎で、盗賊達の事情聴取を手伝っていた。

捕らえられた盗賊全員が素直に口を割るわけではない。


中には黙秘を続ける者や、はぐらかそうとする者もいた。

そんな時だった。

クラリスが静かに一歩前へ出る。

そして、にこりと微笑みながら腰に差した剣の柄へそっと手を添えた。


「さて……もう一度聞くけれど。」


その笑顔を見た盗賊は、一瞬で顔色を変えた。


「い、言います!

 全部話します!」


先ほどまで口を閉ざしていた盗賊が、堰を切ったように喋り始める。

その様子に騎士達は思わず苦笑した。

さすがは元王国騎士団の実力者。

エリスの前では決して見せない一面だった。


――もっとも。

その一部始終を、マリンだけはしっかりと見ていたのだった。

最後までお読みいただきありがとうございました。


今回はエリスが教会で多くの人々を治療し、改めて聖女としての存在を村人達へ示すお話となりました。一方で、ルシアン達も騎士団庁舎で盗賊達の事情聴取を手伝い、それぞれが自分にできる役目を果たしています。


次回も引き続きエリス達のお話をお届けします。ミネアヴィレッジで待ち受ける新たな出来事を、ぜひお楽しみください。


次回も『魔族の女王が転生したら聖女になっていた』をよろしくお願いいたします。

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次回の更新は、7月31日18時を予定してます

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