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魔族の女王が転生したら聖女になっていた  作者: 白神 エル
第六章:王都への道 ― 新たなる星座の旅路 ―

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ミネアヴィレッジでの新たな役目 ― 再会が繋ぐ縁と聖女への願い ―

ミネアヴィレッジへ到着したエリス達は、思いがけずクラリスの元部下である騎士隊長エリックとの再会を果たします。


盗賊の引き渡しを終えた一行は、しばらく村へ滞在することに。そして、その夜、聖女であるエリスへ新たな依頼が舞い込むのでした。


それでは、第六章の続きをお楽しみください。

エリックの案内で、一行は騎士隊の演習場へと向かった。

道中では、クラリスとエリックが並んで先頭を歩いていた。

久しぶりの再会ということもあり、自然と昔話に花が咲く。


「団……いえ、クラリス様が騎士団を辞められた後、どうされていたのか気になっていました。」


エリックが尋ねる。

クラリスは懐かしそうに微笑んだ。


「騎士を辞めた後は冒険者になったの。

 『白銀の聖剣団』というパーティを組んで、各地を旅していたわ。」


「白銀の聖剣団……。」


エリックは感慨深そうに頷く。

その名は現役の騎士達の間でも語り継がれている伝説のパーティだった。


「セントポルでのご活躍も伺いました。

 団長の剣は、少しも衰えていなかったと聞いて、とても嬉しかったです。」


クラリスは苦笑しながら首を横に振った。


「そんなことはないわ。

 最初はかなり苦戦したのよ。

 十五年も剣を握っていなかったもの。」


エリックは驚いたように目を見開く。


「そうだったのですか?」


クラリスは静かに頷いた。


「リンドルの郊外で魔族と戦った時なんて、思うように体が動かなくて苦労したわ。

 あの頃は、昔の感覚なんてほとんど残っていなかったもの。

 でも、その後も盗賊や魔物、それにキメラとの戦いが続いたでしょう。

 戦う度に少しずつ感覚を取り戻していって……。

 セントポルへ着く頃には、ようやく昔みたいに剣を振れるようになっていたの。」


エリックは納得したように頷いた。


「そういうことだったのですね。

 ですが、その努力があったからこそ、皆さんを守れたのだと思います。」


クラリスは少し照れくさそうに笑った。


「そう言ってもらえると嬉しいわ。」


今度はクラリスが尋ねる。


「それより、エリックはどうしてこの村へ来たの?」


エリックは少し照れくさそうに笑った。


「ここが私の故郷なんです。

 騎士として経験を積んだ後、故郷を守りたいと思いまして。

 こちらへの異動を願い出たところ、認めていただきました。

 今は、この村で騎士隊長を任されています。」


クラリスは嬉しそうに頷く。


「そうだったの。

 故郷を守るために帰って来たのね。

 本当に立派になったわ。」


そんな話をしているうちに、一行は騎士隊の演習場へ到着した。

広い演習場では、数人の騎士達が訓練を終えたところだった。

エリックが声を張る。


「これより盗賊達を引き渡していただく!

 全員、警戒を怠るな!」


「「はっ!」」


騎士達が一斉に返事をする。

エリスはメルキオラから預かっていた魔道具を取り出した。

静かに魔力を流し込むと、目の前の空間が揺らぎ、小さな扉が現れる。


「それじゃあ、出します。」


その言葉とともに、拘束された盗賊達が一人、また一人と演習場へ姿を現した。

やがて四十人全員が並ぶ。


「なっ……!」


「人が……空間から現れた!?」


演習場にいた騎士達から驚きの声が上がる。

エリックも一瞬目を見開いたが、すぐに表情を引き締めた。


「全員拘束!

 取り調べの準備を!」


騎士達は素早く盗賊達を取り囲み、一人ずつ縄で拘束していく。

盗賊達は既に抵抗する気力もなく、大人しく連行されていった。

すべての引き渡しが終わると、エリックはクラリス達へ向き直った。


「皆様、本当にありがとうございました。

 これだけの人数になりますと、取り調べや被害の確認にも数日掛かると思われます。

 できましたら、それまでこの村へ滞在していただけないでしょうか。」


クラリスは仲間達へ視線を向けた。

誰一人反対する者はいない。

ルシアンも静かに頷く。


「分かったわ。

 それじゃあ、取り調べが終わるまで滞在させてもらうわね。」


エリックはほっとしたように微笑んだ。


「ありがとうございます。

 宿でしたら、『泊木』という宿がお勧めです。

 冒険者や商人もよく利用しておりますので、皆様でもゆっくりお休みいただけると思います。」


「ありがとう。」


クラリスが礼を言うと、一行は演習場を後にしようとした。

その時だった。


「お待ちください。」


落ち着いた女性の声が聞こえた。

振り返ると、白い法衣を身に纏った一人の女性がこちらへ歩いて来る。

年齢は五十代ほど。

穏やかな雰囲気を纏ったその女性は、エリスの前まで来ると丁寧に頭を下げた。


「突然お声掛けして申し訳ございません。

 私は、この村の司教を務めております、マザー・ポーラと申します。」


エリスも軽く頭を下げる。


「は、初めまして。」


ポーラは真剣な表情で尋ねた。


「失礼ながら……聖女様でいらっしゃいますでしょうか。」


突然そう尋ねられ、エリスは少し戸惑ったように目を瞬かせた。

まだ”聖女様”と呼ばれることには慣れていない。

少し照れたように視線を逸らすと、小さく頷いた。


「は、はい……。」


ポーラは深々と頭を下げた。


「お願いがございます。

 この村には、司祭や助祭が聖魔法を尽くしても治すことのできない病や怪我に苦しんでいる方々がおります。

 どうか、聖女様のお力をお貸しいただけないでしょうか。」


エリスはルシアンへ視線を向けた。

ルシアンは静かに頷く。


「問題ない。

 数日ぐらいなら予定に影響はない。」


その言葉を聞いたエリスは、優しく微笑んだ。


「私がこの村にいる間でしたら、お力になれると思います。」


その返事を聞いたポーラは、胸の前で手を組み、安堵したように微笑んだ。


「ありがとうございます、聖女様。」


その表情には、長年抱えていた不安が少し和らいだような笑みが浮かんでいた。


「それでは、今日はもう遅い時間ですので、治療は明日からお願いいたします。」


エリスは少し照れたように頷く。


「は、はい……。」


「差し支えなければ、皆様はどちらへお泊まりでしょうか?」


ポーラが尋ねる。

クラリスが答えた。


「泊木という宿に泊まる予定です。」


「承知いたしました。

 では、明日の朝十時頃、お迎えに参ります。

 よろしくお願いいたします。」


ポーラは再び深々と頭を下げると、満足そうな笑みを浮かべながら教会へ戻っていった。

エリス達も、この場でやるべきことは終わったと判断する。

クラリスはエリックへ向き直った。


「それじゃあ、私達は宿へ向かうわ。」


「はい。」


「取り調べが終わりましたら、ご報告に伺います。」


エリックはそう言って一礼した。

エリス達は騎士隊の演習場を後にし、教えてもらった宿『泊木』へ向かった。

宿へ着くと、ルシアンが受付へ向かう。


「七人なんだが、三部屋借りたい。」


宿の主人は帳簿を開き、空室を確認した。


「少々お待ちください。」


しばらくして顔を上げる。


「はい、三部屋でしたら問題なくお取りできます。」


「助かる。」


宿帳へ名前を書き終えると、いつも通りの部屋割りで宿泊することになった。

荷物をそれぞれの部屋へ運び終えると、ルシアンが皆へ声を掛ける。


「食事に行くぞ。

 荷物を置いたら、一階に集合だ。」


全員が頷き、それぞれ部屋へ向かった。

再び一階へ集まった一行は、宿の近くにある酒場『一番亭』へ向かった。

店内は村人や冒険者達で賑わっており、香ばしい肉の匂いが食欲をそそる。

席へ着くと店員が注文を取りに来た。

ルシアンが尋ねる。


「この店のお勧めは何だ?」


店員は笑顔で答えた。


「ミネアヴィレッジへ来られたのでしたら、『ミネアスタイルカットステーキ』がお勧めです。

 この村で育った牛を使った名物料理ですよ。」


「じゃあ、それを七人前頼む。」


「かしこまりました。」


続いて飲み物も注文する。


ルシアン、カイル、ガルドはエール。

クラリスとミリアは赤ワイン。

エリスとマリンは葡萄ジュースを頼んだ。


しばらくすると、大きな木皿に乗せられた料理が運ばれてくる。


「これは……。」


全員が思わず目を見開いた。

皿の大きさは普通だが、ステーキの厚みが尋常ではない。

五センチ以上はあると思われる分厚い肉だった。


「これは流石に食べ応えがありそうね。」


クラリスが苦笑すると、ミリアも頷いた。

一方で、エリスとマリンは目を輝かせる。


「すごい!」


「美味しそう!」


二人は早速ナイフを入れた。

分厚い肉にもかかわらず、驚くほど柔らかく切れていく。

一口食べると、肉汁が口いっぱいに広がった。


「美味しい……。」


エリスが思わず呟く。


「柔らかいね!」


マリンも嬉しそうに笑う。

牧草地で育った牛だけあって、肉の旨味が濃く、それでいて驚くほど柔らかい。

クラリス達も、その味に満足そうに頷きながら食事を楽しんだ。

食事を終え、一息ついたところでルシアンが口を開く。


「明日は二手に分かれる。」


全員の視線がルシアンへ向く。


「エリスとミリアは教会へ行ってくれ。

 村人の治療を頼む。」


エリスは小さく頷く。


「は、はい。」


ミリアも穏やかに微笑んだ。


「ええ、任せて。」


ルシアンは頷く。


「頼んだ。」


ルシアンは続ける。


「俺達は盗賊の取り調べに協力する。

 何か情報が出るかもしれないからな。」


「そうね。」


クラリスも頷いた。


「魔族との繋がりがあるかもしれないし、一応確認しておいた方がいいわね。」


誰も異論はなく、翌日の予定が決まった。

店を出ると、夜風が心地よく吹き抜ける。

エリス達は宿へ戻り、それぞれの部屋へ入っていった。

明日は、エリス達は教会で村人達の治療を。

クラリス達は盗賊達の取り調べを手伝うことになる。

それぞれが明日の役目を胸に、ミネアヴィレッジでの最初の夜は静かに更けていくのだった。



最後まで読んで頂きありがとうございます。

今回は、ミネアヴィレッジでの最初の一日を描きました。


クラリスとエリックの再会では、騎士団長だった頃の繋がりが今も変わらず残っていることを書きたかった場面です。また、十五年というブランクを経て、旅の中で少しずつ剣の勘を取り戻してきたクラリスの歩みも振り返ることができました。


そしてエリス達は村へ滞在することになり、聖女として初めて本格的に村人達の治療へ携わることになります。


次回は場面が変わり、レオネリアとメルキオラの視点です。いよいよ帝国へ足を踏み入れ、新たな出会いと物語が動き始めます。


次回も『魔族の女王が転生したら聖女になっていた』をよろしくお願いいたします。

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次回の更新は、7月24日18時を予定してます

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