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魔族の女王が転生したら聖女になっていた  作者: 白神 エル
第六章:王都への道 ― 新たなる星座の旅路 ―

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ベルハイムとの別れ ― 新たな旅路、交易都市アルフェリアへ ―

ベルハイムでの短い滞在も、いよいよ終わりを迎えます。

人との出会い、美味しい郷土料理、そしてベルハイムならではのスイーツ。


それぞれが思い思いの時間を過ごし、英気を養った一行は、次なる目的地である交易都市アルフェリアへ向けて旅立つことになります。

新たな出会いと出来事が待つ旅路へ――。


それでは、第六章の続きをお楽しみください。

みんなそれぞれベルハイムでのひとときを楽しみ、夕方になる頃には宿へ戻って来た。

唯一、エリスとマリンだけは少しだけ心残りがあった。


「あと一軒だったのにね……」


「うん……また途中で終わっちゃった。」


二人は苦笑いを浮かべながら宿へ入っていった。

夜になり、一行は宿の食堂で夕食を取ることにした。

冒険者が多く利用する宿だけあって、メニューには肉料理を中心とした料理が並んでいる。

それぞれがメニューを見ながら注文を決めていった。


ルシアン、カイル、ガルド、そしてレオネリアは『ベルハイムスタイルステーキ』。

エリス、マリン、メルキオラは『ベルハイムチーズ包みハンバーグ』。

クラリスとミリアは『平原牛のボロネーゼ』を注文した。


しばらくすると、料理が次々と運ばれてくる。

ベルハイムスタイルステーキは、厚さが五センチはあろうかという迫力の一品だった。

香ばしく焼き上げられた肉からは肉汁が溢れ、見ているだけで食欲をそそる。


「これは食べ応えがありそうだな。」


ガルドが嬉しそうに笑う。


「さすがベルハイム名物だ。」


ルシアンも頷いた。


一方、エリス達の前に運ばれてきたベルハイムチーズ包みハンバーグは、ナイフを入れた瞬間、中から濃厚なチーズがとろりと溢れ出した。


「わぁ!」


エリスが思わず声を上げる。


「すごい……!」


マリンも目を輝かせていた。

メルキオラも興味深そうに眺める。


「中へこのようにチーズを入れるのですね。」


三人は早速一口食べる。

肉の旨味と濃厚なチーズが絶妙に絡み合い、思わず笑みがこぼれた。


「美味しい!」


エリスとマリンは顔を見合わせて笑う。

クラリスとミリアの前には、平原牛のボロネーゼが運ばれてきた。

濃厚なトマトベースのソースに、平原牛の挽き肉がたっぷりと使われている。


「いい香りね。」


クラリスが微笑む。


「牛肉の旨味がしっかり出ていて、とても美味しいわ。」


ミリアも満足そうに頷いた。

それぞれがベルハイム最後の夕食を堪能していると、ルシアンが静かに口を開いた。


「そういえば、酒場で少し気になる情報を仕入れた。」


全員の視線がルシアンへ向く。


「この先、交易都市アルフェリアまでの街道だが、最近は魔物が以前より強くなっているらしい。

 それだけじゃない。元兵士と思われる盗賊まで現れているそうだ。」


ガルドも腕を組みながら頷く。


「普通の盗賊とは違って、連携も取れているらしい。」


カイルが静かに続ける。


「油断は禁物だ。」


その話を聞き、エリスは静かに頷いた。

確かに気になる情報だった。

だが、この場にはクラリス達がいる。

さらにレオネリアとメルキオラも加わり、一行の戦力は以前よりも充実していた。


(みんながいるから大丈夫。)


エリスは仲間達の顔を見渡し、小さく微笑んだ。

ルシアンは食後のお茶を一口飲み、静かに言った。


「明日は朝早く出発する。

 今日は早めに休もう。」


「そうね。」


クラリスも頷く。

食事を終えた一行は、それぞれ自分達の部屋へ戻っていった。

ベルハイムでの一日は、こうして静かに幕を閉じる。

明日はいよいよ、次なる目的地――交易都市アルフェリアへの旅が始まるのだった。



食事を終えると、一行はそれぞれ自分達の部屋へ戻っていった。

エリスとマリンも部屋へ戻ると、ベッドへ横になりながら明日からの旅について話していた。


「次はいよいよアルフェリアだね。」


「うん。大きな街って聞いてるし、きっとスイーツのお店もたくさんあるよ!」


二人は期待に胸を膨らませる。

だが、今日の出来事を思い返すと、やはり心残りがあった。


「ベルハイムもあと一軒行きたかったなぁ……」


「うん……また途中で終わっちゃったもんね。」


しばらく黙っていたエリスが、ふと思いついたように起き上がる。


「そうだ!」


「どうしたの?」


「今度、メルキオラに相談してみようよ。」


「相談?」


「スイーツを長い間美味しいまま保存できる魔道具って作れないかなって。」


マリンは目を丸くした。


「それ、できたら最高じゃない!

 旅の途中でも好きな時に食べられるし!」


二人は顔を見合わせる。


「明日相談してみよう!」


「うん!」


そんな夢のような魔道具が本当に作れるのか。

それはまだ誰にも分からない。

それでも二人の期待は膨らむばかりだった。


「アルフェリアではどんなスイーツがあるんだろうね。」


「楽しみ!」


スイーツの話に夢中になっているうちに、先ほどルシアンから聞いた街道の危険な情報も、一時だけ頭の片隅へ追いやられていた。

やがて眠気が二人を包み込む。


「おやすみ。」


「おやすみ。」


そう言葉を交わすと、二人は静かに眠りへ落ちていった。



部屋へ差し込む朝日に照らされ、エリスとマリンは目を覚ました。


「おはよう。」


「おはよう。」


二人は挨拶を交わすと身だしなみを整え、宿の食堂へ向かった。

食堂へ入ると、既にクラリスとミリアが朝食を食べ始めていた。


「おはよう。」


「おはよう、二人とも。」


挨拶を交わし、二人は空いている席へ座る。

すると店員が皿を持ってやって来た。


「朝食は、あちらに並んでいるお料理を自由にお取りください。」


「ありがとうございます。」


エリスとマリンは料理が並ぶ台へ向かう。

焼きたてのクロワッサン。

目玉焼き。

香ばしく焼かれたベーコン。

新鮮な野菜のサラダ。

それぞれ好きなものを皿へ取り分け、席へ戻った。


「いただきます。」


食べ始めようとした、その時だった。


「おはようございます。」


レオネリアとメルキオラも食堂へやって来た。

二人も同じように朝食を取り、エリス達の席へ座る。

メルキオラが席に着いたのを見たエリスは、待っていましたと言わんばかりに身を乗り出した。


「メルキオラ、ちょっと相談があるんだけど。」


「はい、何でしょうか。エルシア様。」


「スイーツを長い間、美味しいまま保存できる魔道具って作れたりしないかな?」


その言葉に、メルキオラは一瞬きょとんとした。


「……スイーツを保存する魔道具、ですか?」


「うん!」


「旅の途中でも美味しく食べたいの!」


マリンも大きく頷く。


「絶対に欲しい!」


二人の息はぴったりだった。

メルキオラは思わず苦笑する。


「まさか、そのような相談を受けるとは思いませんでした……。」


少し考え込んだ後、優しく微笑んだ。


「すぐにお約束はできませんが、エルシア様がお望みでしたら、一度考えてみましょう。」


「本当!?」


「やったー!」


エリスとマリンは嬉しそうに顔を見合わせた。

その様子を見ていたクラリスとミリアは、呆れたように苦笑する。


「もっと旅に必要な魔道具は他にもあるでしょうに……。」


「でも、二人らしいといえば二人らしいわね。」


ミリアの言葉に、その場にいた全員が思わず笑うのだった。

そんな他愛もない話をしながら朝食を楽しんでいると、ルシアン達男性陣も食堂へやって来た。


「おはよう。」


互いに挨拶を交わし、それぞれ朝食を取り始める。

全員が食べ終わると、ルシアンが立ち上がった。


「それじゃあ、各自部屋へ戻って荷物を持ってきてくれ。

 馬車を預けている場所に集合だ。」


「「「はい。」」」


全員が頷き、それぞれ部屋へ戻って荷物をまとめる。

やがて馬車を預けていた場所へ全員が集まった。

宿の従業員へ礼を伝え、馬の様子を確認すると、いよいよ出発である。

まだ宿の敷地内ということもあり、ここで異空間へ入るのは不自然だ。

そのため、ルシアンとカイルが御者台へ座り、クラリス達は荷台にある長いベンチ型の椅子へ腰掛けた。


「それじゃあ、行こうか。」


ルシアンが手綱を握る。

馬車はゆっくりと動き出し、ベルハイムの街を後にした。

次なる目的地は、交易都市アルフェリア。

新たな出会いと出来事を求め、一行は再び旅路へと戻るのだった。



一方その頃――

魔族領では、ゼルヴァークの命令により、ヴァルガディア帝国侵攻へ向けた準備が着々と進められていた。

帝国は魔族領と直接国境を接していない。

そのため、海を越えて軍を送り込む手段の確保が最大の課題となっていた。

玉座に座るゼルヴァークは、静かに口を開く。


「グリムヴァル。」


「はっ。」


研究責任者グリムヴァルが一歩前へ出る。


「帝国に悟られることなく海を渡る方法を確立せよ。

 艦隊を隠蔽する魔法でもよい。魔道具でもよい。

 我が軍が安全に帝国へ到達できる手段を開発しろ。」


「承知いたしました。」


グリムヴァルは深々と頭を下げる。

続いてゼルヴァークはディアゼルへ視線を向けた。


「ディアゼル。」


「はっ。」


「海上侵攻の戦略を完成させろ。

 上陸地点、兵站、侵攻経路……すべてを想定し、万全の態勢を整えよ。」


「お任せください。」


ディアゼルは力強く答えた。

最後に、ゼルヴァークの視線はノクスへ向けられる。


「ノクス。」


「はっ。」


「引き続き、境界の子を監視せよ。

 奴らの動向は逐一報告するのだ。」


「御意。」


ノクスは静かに頭を下げた。

それぞれが命令を受け、その場を後にする。

魔族側もまた、静かに、そして着実に侵略への準備を進めていた。

最後まで読んで頂きありがとうございます。


今回でベルハイム編は一区切りとなります。


ベルハイムでは、仲間達がそれぞれ思い思いの時間を過ごし、人間の文化や料理に触れながら、束の間の休息を楽しむことができました。


また、エリスとマリンから飛び出した「スイーツを美味しいまま保存できる魔道具」という、二人らしいお願いも登場しました。メルキオラがどのような魔道具を考えるのか、それも今後のお楽しみです。


一方その頃、魔族側でも帝国侵攻へ向けた準備が着実に進み始めています。エリス達が穏やかに旅を続ける裏で、世界は少しずつ大きく動き始めていました。


次回からは、交易都市アルフェリアへ向けた旅が本格的に始まります。新たな出会い、そして新たな試練が待ち受けるアルフェリア編を、ぜひお楽しみください。


今後とも『魔族の女王が転生したら聖女になっていた』をよろしくお願いいたします。

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次回の更新は、7月16日18時を予定してます

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