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魔族の女王が転生したら聖女になっていた  作者: 白神 エル
第六章:王都への道 ― 新たなる星座の旅路 ―

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甘い時間は突然に ― 聖女様、また見つかりました ―

ベルハイムでの自由時間を満喫するエリス達。

中でも、セントポルで果たせなかったスイーツ巡りを楽しみにしていたエリスとマリンは、目星を付けていた人気店へ向かいます。

果たして二人は、念願だったベルハイムのスイーツを心ゆくまで堪能することができるのでしょうか。

それでは、第六章の続きをお楽しみください。

さて、待ちに待ったスイーツ巡りである。

エリスとマリンは、事前に目星を付けていた店へと足を運んだ。

最初に訪れたのは、『メゾン・デュ・フラン』。

店内へ足を踏み入れた瞬間、甘く優しい香りが二人を包み込む。


「いい匂い……」


「もうこれだけで幸せだね」


二人は笑顔を浮かべながらメニューを開いた。


しかし――。


「……なんだろう?」


「全然わからないね」


メニューには、


クレーム・カラメル

フラン


という二つの種類があり、それぞれ様々なアレンジが施されているようだった。

だが、肝心のベースとなるスイーツがどんなものなのか分からない。

困っていると、店員が笑顔で近づいてきた。


「ご注文はお決まりでしょうか?」


エリスは少し照れながら尋ねる。


「あの……クレーム・カラメルとフランって、どういうお菓子なんですか?」


店員は慣れた様子で説明を始めた。


「クレーム・カラメルは、器の底にカラメルを敷き、その上から卵とミルクで作った生地を流し込んで湯煎焼きにしたお菓子です。

 焼き上がった後、お皿へひっくり返してお出しします。」


続いてもう一つ。


「フランは、タルト生地の上へカスタード液を流し込み、そのまま焼き上げた焼き菓子になります。」


説明を聞いた二人は顔を見合わせた。


「どっちも美味しそう……」


「悩むね」


しばらく考えた末、


エリスは『ストロベリーアラモード・クレーム・カラメル』。

マリンは『ベリーベリーフラン』を注文した。


しばらく待つと、店員が二人の前へ皿を運んできた。


「お待たせしました。」


目の前に置かれたスイーツを見た二人は、思わず息を呑む。


「すごく綺麗……」


「食べるのがもったいないくらい」


エリスのクレーム・カラメルには、真っ白な生クリームがたっぷりと添えられ、その上には真っ赤なイチゴが美しく並べられていた。


一口食べる。


口の中でとろけるような滑らかな食感。

卵の優しい甘さと、ほろ苦いカラメルの香りが絶妙に合わさる。

さらに生クリームとイチゴが加わることで、上品な甘さが口いっぱいに広がった。


「美味しい……!」


エリスは思わず笑みをこぼした。


一方、マリンのベリーベリーフランは、香ばしく焼き上げられたタルト生地の上に、なめらかな焼きカスタードがたっぷりと乗せられ、その上にはブルーベリーとイチゴが彩りよく飾られていた。


タルトのサクサクとした食感。

焼きカスタードの濃厚な甘さ。

そして甘酸っぱいベリーが絶妙なアクセントになっている。


「これもすごく美味しい!」


マリンは目を輝かせた。


「一口交換しよう!」


「うん!」


二人は互いのスイーツを少しずつ交換して食べ比べる。


「こっちも美味しい!」


「どっちも当たりだね!」


顔を見合わせて笑い合う二人。

セントポルでは叶わなかったスイーツ巡り。

その最初の一軒は、大満足のスタートとなった。



エリスとマリンは『メゾン・デュ・フラン』を後にすると、次の目当ての店へ向かった。


『フロコン・ドゥ・ネージュ』。


こちらもベルハイムでは人気のスイーツ店らしく、多くの客で賑わっていた。


「やっぱり人気なんだね」


「でも運がいいよ!」


ちょうど席が一つ空き、二人は待つことなく座ることができた。

早速メニューを開く。

すると、二人の目が同時に一つのメニューで止まる。


『ベルハイム名物 ふわ雪スフレ』


「ベルハイム名物?」


「ってことは、この街でしか食べられないってことだよね!」


二人は顔を見合わせた。


「これは頼むしかない!」


「うん!」


注文を取りに来た店員へ、エリスが尋ねる。


「あの、この『ふわ雪スフレ』って、どんなお菓子なんですか?」


店員はにこやかに説明を始めた。


「ベルハイム産の新鮮な卵と牛乳をたっぷり使って焼き上げる、当店自慢のスフレです。

 焼きたてが一番美味しいのですが、とても繊細なお菓子でして……

 時間が経つとしぼんでしまいます。そのため、ご注文をいただいてから一つ一つ焼き上げています。

 ですので、少々お時間をいただきますが、よろしいでしょうか?」


「はい!」


「もちろんです!」


待ち時間など二人にはまったく気にならなかった。

むしろ期待はどんどん膨らんでいく。


「どんな味なんだろうね」


「名前からすると、ふわふわなのかな?」


そんな話をしながら待っていると、甘く香ばしい香りが漂ってきた。


「お待たせしました。」


店員が運んできたのは、まるで雪山のようにふんわりと膨らんだ黄金色のスフレだった。

表面には粉砂糖が雪のように振りかけられ、湯気が立ち上っている。


「焼きたてですので、お早めにお召し上がりください。」


「いただきます!」


マリンがスプーンを入れる。

驚くほど軽い。

まるで空気をすくっているようだった。

そのまま口へ運ぶ。


「えっ!? なにこれ!?」


思わず目を丸くする。


「口の中で消えちゃった!」


隣のエリスも一口食べる。

ふわりとした食感が一瞬で溶け、卵とミルクの優しい甘さだけが口いっぱいに広がった。


「こんな食感……初めて。」


二人は顔を見合わせる。


「すごいね!」


「本当に雪みたい!」


焼きたてだからこそ味わえる、ふわふわで儚い食感。

ベルハイム名物と呼ばれる理由を、二人は身をもって実感するのだった。



エリスとマリンは『フロコン・ドゥ・ネージュ』を後にすると、次の目的地『ハイム・プレッツェル』を目指して大通りを歩いていた。


「次はプレッツェルのお店だね!」


「どんなスイーツがあるのかな?」


そんな話をしながら歩いていた、その時だった。


「きゃあああっ!」


悲鳴が響く。

同時に馬の激しいいななきと、蹄の音が大通りへ鳴り響いた。

暴走した馬車が一直線にこちらへ向かってくる。

逃げ遅れた人が次々と弾き飛ばされ、人々は悲鳴を上げながら道の端へ逃げ惑っていた。


「マリン!」


「任せて!」


言葉を交わしたのは、それだけだった。

マリンはすぐに地面へ手をかざす。


「アースウォール!」


馬車の進行方向へ何重もの低い土壁が次々と現れる。

暴走する馬車は一枚、また一枚と土壁を突き破る。

そのたびに勢いが削られていく。

最後の土壁を越えた時には、馬車は完全に止まっていた。


「よかった……」


マリンは安堵の息をつく。

一方、エリスはすぐに怪我人の元へ駆け寄った。

辺りには、倒れた人達が苦しそうにうめいている。

足を骨折した男性。

頭を打ち、血を流している女性。

腕を擦りむいた子供。

エリスは最も重傷そうな男性の前へ膝をついた。

足は明らかに骨折し、不自然な方向へ曲がっている。

エリスは静かに手をかざした。


「治って」


白い光が優しく包み込む。

すると曲がっていた足は元の形へ戻り、腫れも痛みも跡形もなく消えていった。


「う、動く……」


男性は驚きながら立ち上がる。

エリスは次の怪我人へ向かった。

頭から血を流している女性へ同じように手をかざす。


「治って」


白い光が傷口を包み込む。

流れていた血は元へ戻り、裂けた傷口も綺麗に塞がっていく。

その様子を見ていた一人の女性が、思わず声を上げた。


「あなた……!」


女性はエリスを指差した。


「聖女様ではありませんか!」


その場にいた全員が一斉にエリスを見る。


「私、この前セントポルにいました!

 大聖堂の前で怪我人を治していた聖女様ですよね!」


その言葉を聞いた瞬間。

エリスとマリンは顔を見合わせた。


(まずい……。)


二人の考えは完全に一致した。


「マリン!」


「うん!」


次の瞬間。

二人は一目散にその場から駆け出していた。


「聖女様ー!」


「待ってくださーい!」


後ろから呼び止める声が響く。

しかし二人は振り返らない。


こうしてまたしても――

エリスとマリンのスイーツ巡りは、志半ばで中断となってしまうのだった。

最後まで読んで頂きありがとうございます。

今回は、ようやくエリスとマリンのスイーツ巡りを書くことができました。


ベルハイムならではの名物スイーツを楽しむ二人でしたが、困っている人を見れば放っておけないのがエリスです。

その結果、またしても聖女だと気付かれてしまい、スイーツ巡りは思わぬ形で中断することになってしまいました。

果たして二人は、このまま無事にスイーツ巡りを続けることができるのでしょうか。


次回も『魔族の女王が転生したら聖女になっていた』をよろしくお願いいたします。

感想や評価、ブックマークなども大変励みになります!


次回の更新は、7月15日18時を予定してます

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