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魔族の女王が転生したら聖女になっていた  作者: 白神 エル
第六章:王都への道 ― 新たなる星座の旅路 ―

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束の間の休日 ― それぞれのベルハイム散策 ―

ベルハイムで一夜を過ごすことになったエリス達。

盗賊の引き渡しも無事に終わり、ようやく訪れた束の間の自由時間。

スイーツを求めて街を歩く者、人間の文化に触れる者、そして酒場で次の旅の情報を集める者──。

それぞれが思い思いの時間を過ごす中、新たな発見と、次の旅へ繋がる情報が少しずつ集まり始めます。


それでは、第六章の続きをお楽しみください。

食事を終えたエリス達は、それぞれ自由にベルハイムの街を見て回ることにした。

ルシアンは先ほど受け取った盗賊討伐の報酬から、一人につき金貨二枚ずつを手渡す。


「余程高価な物でも買わない限り、これで十分だろう」


そう言われ、全員が金貨を受け取った。


「それじゃあ、行こう!」


「うん!」


エリスとマリンは顔を見合わせると、当然のようにスイーツ店が並ぶ通りへ駆け出していく。


「まずはあのお店!」


「でも、その隣も気になるよ!」


二人の目的は最初から決まっていた。

そんな様子を見送りながら、レオネリアとメルキオラは街並みを見渡す。


「人間の街には興味がありますが……」


「何処から見ればよいのでしょうか」


少し困ったように呟く二人。

その様子を見たクラリスが優しく声を掛けた。


「雑貨や洋服に興味があるなら、一緒に来る?」


ミリアも笑顔で頷く。


「可愛い小物なんかもあるかもしれないわよ」


二人は顔を見合わせる。


「ぜひ、ご一緒させてください」


「よろしくお願いいたします」


レオネリアとメルキオラは嬉しそうに頭を下げた。

こうして四人は女性同士で街の中心街へ歩いていく。

一方、その様子を見ていたルシアンは苦笑する。


「さて、俺達はどうするか」


「せっかくの街だし、酒場でも覗いてみるか」


ガルドがそう言うと、カイルも静かに頷いた。


「情報収集にもなる」


「そうだな」


ルシアンも賛成する。

三人はベルハイムの酒場を目指し、ゆっくりと歩き始めた。

それぞれが思い思いの時間を過ごす、束の間の自由行動が始まるのだった。



クラリス達四人は、ベルハイムの商店街へ向かって歩いていた。

通りの両脇には洋服店や雑貨店、アクセサリー店などが軒を連ね、多くの人で賑わっている。

レオネリアとメルキオラは周囲を見渡しながら歩いていた。


「人間の街には、こんなにも店があるのですね」


「見ているだけでも楽しいです」


二人にとって、人間の街で買い物をするのは初めてだった。

クラリスは微笑みながら、一軒の洋服店へ入る。


「まずは服を見ましょう」


「旅の途中でも着替えは何着かあった方が便利だからね」


ミリアも頷いた。


店内には色とりどりの洋服が並んでいる。


レオネリアは一着のワンピースを手に取り、不思議そうに眺めた。


「どれも私達の服とは違う作りですね。」


「ですが……」


「戦闘には向かなそうです」


その言葉にクラリスは思わず笑ってしまった。


「これは戦うための服じゃないの

 宿でくつろいだり、街を歩いたりする時に着る服よ」


「そういうものなのですね」


レオネリアは納得したように頷く。


一方、メルキオラは店内をきょろきょろと見回していた。


「どれが自分に似合うのか分かりません……」


すると店員が笑顔で近付いてきた。


「でしたら、こちらはいかがでしょう?」


二人の髪色や雰囲気に合わせて、何着か服を選んでくれる。


「こちらのお客様でしたら、この色もよくお似合いですよ」


店員の勧めもあり、二人は気に入った服を二着ずつ購入した。


「ありがとうございます」


代金を払い終えると、メルキオラは何気なく紙袋へ手を伸ばした。


「では、異空間へ──」


その瞬間。


「あっ、待って!」


クラリスが慌てて止めた。


「ここで異空間を使っちゃ駄目よ。」


「え?」


メルキオラは首を傾げる。

ミリアが苦笑しながら説明した。


「人前でそんな魔法を使ったら、大騒ぎになっちゃうわ。」


「ああ……なるほど。」


メルキオラは納得し、紙袋を抱え直した。


「人気のない場所まで我慢ね」


クラリスが笑うと、メルキオラも照れくさそうに微笑んだ。


「以後、気を付けます」


その様子を見ながら、ミリアはふと思う。


(本当に便利な魔法ね……。)


異空間へ自由に荷物を収納できる能力。

旅をする者にとって、これほど便利な魔法は他にないだろう。

四人は笑顔を交わしながら、次の店へと足を向けた。


クラリス達四人は商店街を歩きながら、次はどの店へ入ろうかと話していた。

すると、一軒の武具店が目に入る。

店先には剣や槍、弓、杖などが並び、磨き上げられた武器が陽の光を受けて輝いていた。


「少し見てみたいです」


レオネリアが足を止める。


「私もです。人間の武具には興味があります」


メルキオラも頷いた。

クラリスとミリアも特に行き先を決めていたわけではなかったため、そのまま店へ入ることにした。

店内には様々な武具が整然と並べられている。

レオネリアは一本の剣を手に取り、刀身をじっと見つめた。


「綺麗な波紋ですね……」


魔族の剣とはまた違った美しさがある。

隣ではメルキオラが杖を一本一本見比べていた。


「魔力の通りを考えた造りになっていますね」


クラリスは二人の様子を見ながら微笑む。


「人間は魔族ほど身体能力に恵まれていないことが多いから、その分、鍛冶技術を発展させてきたの。

 切れ味や扱いやすさを追求した結果が、こういう武器なのよ」


「なるほど……」


レオネリアは感心したように頷いた。

その時だった。


カラン――。

店の扉が開く音が響く。


「おや?」


入って来たのは、ベルハイム冒険者ギルドのギルドマスター、ローガンだった。

ローガンはクラリス達を見つけると、穏やかな笑みを浮かべる。


「これはこれは。またお会いしましたね」


「こんにちは」


クラリス達も笑顔で挨拶を返した。


「武器をお探しですかな?」


ローガンが尋ねる。

クラリスは首を横に振った。


「いいえ。少し見に来ただけです」


「そうでしたか」


そこへレオネリアが口を開く。


「十分見せていただきました。

 次のお店へ参りましょう」


メルキオラも頷く。


「はい」


クラリス達はローガンへ軽く会釈をすると、そのまま武具店を後にした。

四人を見送った店主が、不思議そうな顔でローガンを見る。


「ギルドマスター、お知り合いなんですか?」


ローガンはいたずらっぽく笑った。


「今の女性の中に、『白銀の剣姫』がいたと言えば、お分かりかな?」


「えっ!?」


店主は目を丸くする。


「まさか……あのお方が!?」


慌てて店の外へ視線を向けるが、四人の姿はもう人混みの中へ消えていた。


「もっと早く気付いていれば……」


店主は残念そうに肩を落とす。

その様子を見て、ローガンは思わず苦笑するのだった。



その頃――


ルシアン達三人は、宿の近くにある酒場へ足を運んでいた。

外から見ても賑わっていたが、中へ入ると予想以上だった。

店内には多くの冒険者達が集まり、あちらこちらで酒を片手に武勇伝を語り合っている。


討伐した魔物の話。

依頼での失敗談。


笑い声が絶えず響き、いかにも冒険者の酒場という雰囲気だった。

三人は空いている席を見つけると腰を下ろす。

店員が注文を取りに来ると、ルシアンが尋ねた。


「この街でおすすめの酒はあるか?」


店員は笑顔で答える。


「でしたら『ベルハイムエール』ですね。この街自慢の地酒で、旅人にも人気があります。」


「それを三つ頼む」


「かしこまりました」


しばらくすると、大きな木製ジョッキに入ったベルハイムエールが運ばれてきた。


「それじゃあ」


「「乾杯」」


三人はジョッキを軽く合わせ、喉を潤す。


「これは飲みやすいな」


ガルドが満足そうに言う。


「香りもいい」


カイルも静かに頷いた。

ルシアンも一口飲み、小さく笑みを浮かべる。


「なかなか美味い」


三人は明日からの旅について話し合っていた。


その時だった。

近くの席から聞き覚えのある地名が耳に入る。


「アルフェリアまで行ってきたんだがよ……」


「最近は魔物が強くなってて大変だったぜ」


ルシアンはさりげなく耳を傾ける。


アルフェリア――。

次に自分達が向かう交易都市だ。

聞き逃すわけにはいかなかった。


ルシアンはジョッキを片手に、その冒険者達の席へ近付く。


「悪い。少し話を聞かせてもらってもいいか?」


そう言って店員を呼ぶ。


「この人達にも一杯」


「おっ、気前がいいな!」


冒険者達は笑いながら席を勧めた。


「実は俺達も明日アルフェリアへ向かう予定なんだ

 最近の様子を聞かせてもらえると助かる」


冒険者達は快く話してくれた。


「以前より魔物が一回り強くなってる。

 特に街道沿いでも油断できねぇ。」


さらにもう一つ。


「それと最近は元兵士じゃねぇかと思うような動きをする盗賊まで現れてる。

 普通の盗賊とは違って、連携も取れてるから厄介だ。」


ルシアンは静かに頷いた。


「貴重な情報をありがとう。」


礼を言って席へ戻る。


「どうだった?」


ガルドが尋ねる。


「収穫はあった。」


ルシアンは静かに答えた。


「アルフェリアまでの街道は、思っていた以上に厄介かもしれない。」


三人はジョッキを傾けながら、明日からの旅路へ思いを巡らせるのだった。



最後まで読んで頂きありがとうございます


今回はベルハイムでの自由行動を中心に描きました。

レオネリアとメルキオラにとっては、人間の街で買い物をすることも、人間の武具に触れることも初めての経験でした。魔族として生きてきた二人が、人間の文化を少しずつ知っていく様子も、この旅の見どころの一つになればと思います。


一方、ルシアン達は酒場で次の目的地である交易都市アルフェリアについての情報を集め、今後の旅に役立つ情報を得ることができました。


次回はいよいよ、エリスとマリンのお待ちかねのスイーツ探しです。

セントポルでは聖女騒動のおかげで、楽しみにしていたスイーツ巡りはまさかの中断。

「今度こそは!」とベルハイムでリベンジを誓う二人ですが、果たして無事にスイーツを満喫することはできるのでしょうか。


引き続き応援していただけると嬉しいです。

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次回の更新は、7月14日18時を予定してます

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