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魔族の女王が転生したら聖女になっていた  作者: 白神 エル
第六章:王都への道 ― 新たなる星座の旅路 ―

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旅立ちの日 ― 水都セントポルとの別れ ―

前章「迫り来る影 ― 魔族の策謀と水都の試練 ―」では、セントポルを襲ったスタンピードとの激戦が描かれました。


数々の試練を乗り越え、街を守り抜いたエリス達。

そして今、新たなる星座は王都グランヴェイルへ向けて新たな一歩を踏み出します。


第六章「王都への道 ― 新たなる星座の旅路 ―」


多くの人々との出会いと別れを胸に、彼女達の旅は再び動き始めます。

送別会が終わり、日付も変わって朝を迎えた。


いよいよ今日、エリス達は王都へ向けてセントポルを出発する。

豪華な辺境伯城の客室とも今日でお別れだ。


エリスが目を覚ますと、既にクラリスとミリアは起きていた。


「おはよう、エリス」


「おはようございます、お母さん。ミリアさん」


朝の挨拶を交わし、身支度を整える。

しばらくすると、マリンも眠そうに目を擦りながら起きてきた。


「ふわぁ……おはよう……」


「おはよう、マリン」


今日の予定について話していると、部屋の扉をノックする音が響いた。


コンコン――。

クラリスが扉を開けると、そこには侍女が立っていた。


「皆様、おはようございます。朝食の準備が整いましたのでご案内いたします」


「分かりました。今向かいます」


エリス達は侍女に案内されながら食堂へ向かった。

食堂に入ると、既にヴァルディスとセレフィーナが席に着いていた。


「おはようございます」


「おはようございます」


互いに挨拶を交わし、席に着く。

全員が揃ったところで、ヴァルディスが改めて口を開いた。


「皆様には何度感謝しても足りません。本当にありがとうございました」


そう言って深く頭を下げる。

スタンピードからセントポルを守り、多くの人々を救った恩人達への心からの感謝だった。


「それと、王都へ向かわれるのでしたな」


ヴァルディスはそう言うと、一通の封筒を取り出した。


「妻のセレフィーナが紹介状を書きました。王都で何かと役立つでしょう。どうかお持ちください」


「ありがとうございます」


クラリスは礼を述べ、丁寧に受け取った。

すると今度はセレフィーナが微笑む。


「大したものではありませんけれど、少しでも皆様のお役に立てればと思いまして」


「お気遣いありがとうございます」


クラリスは再び頭を下げた。

さらにヴァルディスは続ける。


「それから旅路で必要になる食料も用意しております」


「そこまでしていただくのは……」


クラリスは遠慮しようとした。

だがヴァルディスは苦笑する。


「既に準備を終えております。受け取っていただけなければ処分するしかありません」


「そう言われてしまうと断れませんね」


クラリスは小さく笑った。


「では、ありがたく頂戴いたします」


「ええ、そうしてくだされ」


こうして一行は大量の保存食や飲料水などの支援物資を受け取ることになった。

和やかな雰囲気の中、最後の朝食が進んでいく。

食事も終わりに差しかかった頃、ヴァルディスがふと思い出したように口を開いた。


「そういえば、以前保護した帝国の兵士達の件ですが」


その言葉にエリス達は顔を上げる。


「あの者達は、しばらくこのセントポルで保護することにしました」


エリス達がスタンピードの際に救出し、魔族による異物の支配から解放した帝国兵達のことだった。


「彼らは皆さんに大変感謝していました。そして――もし皆さんが帝国へ向かうことになれば、自分達も協力したいと言っております」


「そうですか……」


クラリスは頷いた。

サントス国での問題が落ち着けば、いずれ帝国とも向き合うことになるだろう。

その時、現地に協力者がいるのは心強い。


「それはありがたいですね。ぜひ、その気持ちに感謝しているとお伝えください」


「承知しました」


ヴァルディスは満足そうに頷いた。

やがて食事も終わり、一行は部屋へ戻る。


荷物の最終確認を済ませ、出発の準備を整える。

長く滞在したセントポルとも、いよいよ別れの時だ。


王都グランヴェイルへ――。


新たなる星座の旅が、再び動き始めようとしていた。



エリス達は部屋へ戻ると、それぞれ荷物をまとめてメルキオラの工房へ向かった。

工房の前には既にレオネリアとメルキオラの姿があった。

二人はヴァルディス達から贈られた大量の食料を馬車へ積み込んでいる最中だった。


「手伝います」


エリスが声を掛ける。

だが、レオネリアは首を横に振った。


「大丈夫ですよ、エルシア様。もうすぐ終わりますので」


「もう少しで終わりますので、お任せください、エルシア様」


メルキオラも笑顔で答える。

エリス達は無理に手伝わず、積み込みが終わるのを待つことにした。

やがて作業は無事に終わり、ほどなくしてルシアン達もやって来る。

これで全員が揃った。


「それじゃあ出発するか」


ルシアンの言葉に全員が頷く。


御者台にはルシアンとカイルが座った。


そしてエリス、マリン、クラリス、ミリア、ガルド、レオネリア、メルキオラの七人は荷台へ乗り込む。


見た目はどこにでもある大型の幌馬車。

だが、その内部にはメルキオラの技術が詰め込まれていた。

こうして馬車はゆっくりと動き始めた。

石畳の道を進み、やがて辺境伯城の正門へと近づいていく。


すると――


「わぁ……」


マリンが思わず声を漏らした。

門の前にはヴァルディスとセレフィーナが立っていた。

それだけではない。

大勢の騎士や使用人達まで整列している。


その光景を見て、エリスは内心ほっとした。


(異空間に入っていなくてよかった……)


秘密の空間を使っていたら、誰もいない馬車が出発するように見えてしまうところだった。

馬車が止まると、エリス達は降りて二人のもとへ向かう。


「本当にお世話になりました」


クラリスが頭を下げる。


「こちらこそ、皆様には感謝しかありません」


ヴァルディスは穏やかに微笑んだ。


「皆様もお元気で」


セレフィーナは少し寂しそうに言う。


「王都へ行かれても、どうかお気を付けください」


「何かあれば、いつでも連絡をください」


ヴァルディスも力強く頷いた。

既に通信機と転移魔法陣が設置されている。

距離は離れても、以前よりずっと近い関係になっていた。

別れの挨拶を終えると、一行は再び馬車へ乗り込む。


ヴァルディスが手を上げた。

それを合図に――


「白銀の剣姫様に栄光あれ!」


「聖女様、どうかお元気で!」


「セントポルを救ってくださりありがとうございました!」


「お気を付けて!」


整列した騎士達や使用人達から次々と声が上がる。

クラリスは少し困ったように苦笑しながら手を振った。


「白銀の剣姫だなんて、もう昔の話なのにね」


「でも、騎士さん達にとっては今でも憧れなんじゃないかな?」


マリンがそう言うと、クラリスは照れくさそうに笑った。

一方で、


「聖女様ー!」


という声が聞こえるたび、エリスはなんとも言えない表情になる。


「まだ慣れない……」


「諦めなさい」


ミリアが即座に返した。


やがて馬車はゆっくりと動き出す。

ヴァルディスとセレフィーナの姿が少しずつ遠ざかっていく。


「本当にお世話になったわね」


クラリスがしみじみと呟いた。


「そうですね」


ミリアも頷く。


「また会えるよね」


マリンがそう言うと、エリスは微笑んだ。


「うん。きっとまた会えるよ」


馬車は辺境伯城の城門を抜け、そのままセントポルの街中へと向かっていく。

まだセントポルを出るわけではない。

この先には、彼女達の旅立ちを見送ろうと待つ人々がいることを、エリス達はまだ知らなかった。



エリス達は辺境伯城を後にし、セントポルの中心街へ向かっていた。

しばらく進んだところで、ふと全員が同じことに気付く。


「そういえば……全然揺れないわね」


マリンが不思議そうに辺りを見回した。

普通なら馬車は石畳の道を進むたびに細かな振動が伝わってくるはずだ。


だが、この馬車は違った。

走っているにもかかわらず、不思議なほど揺れを感じない。


「確かにそうね」


クラリスも感心したように頷く。

するとメルキオラが少し得意げに胸を張った。


「車輪の部分に魔道具を組み込んでるの。衝撃や振動を吸収する仕組みになってるわ」


「なるほどな」


ガルドが感心したように唸る。


「これなら長旅でも疲労がかなり違いそうだ」


「でしょ?」


メルキオラは満足そうに微笑んだ。

一同が感心しているうちに、馬車は中心街へと近づいていく。


そして――


「えっ……?」


最初に声を上げたのはエリスだった。

目の前に広がっていた光景に思わず言葉を失う。

道そのものは馬車が通れるように空けられている。

だが、その両脇には数え切れないほどの人々が集まっていた。

通りは見送りに来た市民達で埋め尽くされていたのだ。


「白銀の剣姫様ー!」


「聖女様ー!」


「ありがとうございました!」


「お気を付けてー!」


あちこちから声が飛ぶ。

特に多かったのは、


――白銀の剣姫。


そして、


――聖女様。


という呼び声だった。


「これは……」


クラリスも思わず目を丸くする。


「予想以上ね……」


ミリアも苦笑した。

これほど多くの人々が集まっているとは誰も思っていなかった。

エリスとクラリスは顔を見合わせる。

流石にこのまま馬車の中にいるわけにもいかない。

二人は馬車の後ろへ移動すると、人々へ向かって手を振った。

挿絵(By みてみん)


その瞬間――


「おおおおおおっ!」


「聖女様だ!」


「白銀の剣姫様ー!」


割れんばかりの歓声が響き渡る。

エリスは少し照れながらも懸命に手を振り続けた。

沿道に並ぶ人々の表情は皆笑顔だった。

子供達は目を輝かせ、大人達も感謝と祝福の言葉を送ってくれる。

その光景を見ていると、エリスの胸は自然と温かくなった。


(また来たいな……)


そんな思いが心の中に浮かぶ。

人々の見送りは街の正門近くまで途切れることなく続いた。

やがて馬車はセントポルの門へと到着する。

そこで待っていた衛兵達が敬礼をした。


「聖女様、白銀の剣姫様、そして皆様

 またのお越しを心よりお待ちしております」


さらに衛兵は続ける。


「それと、辺境伯様より皆様には貴族専用門の使用許可が与えられております

 次回以降セントポルへ来られる際は、どうぞ貴族専用門をご利用ください」


その言葉に一同は驚いた。

貴族でもない自分達に、そのような許可が与えられるとは思ってもいなかったのだ。


「ずいぶんと大きな信用をいただいたものね」


クラリスが苦笑する。

ヴァルディス達がどれだけ自分達を評価してくれているのかが伝わってきた。


衛兵達へ礼を述べると、馬車は再び動き出す。

城門をくぐり抜けると、そこにはセントポルの外へ続く街道が広がっていた。


こうしてエリス達は、多くの人々に見送られながらセントポルを後にする。


目指すは王都グランヴェイル。

新たなる星座の旅路が、再び始まろうとしていた。

最後まで読んで頂きありがとうございます。

第六章が始まりました。


今回は戦いではなく、セントポルで出会った人々との別れと旅立ちが中心のお話でした。

ヴァルディスやセレフィーナをはじめ、多くの人々に見送られながら王都へ向かうエリス達。


そして旅の仲間も増え、新たなる星座はこれまで以上に賑やかなパーティとなりました。

もちろん、平和な旅がそう長く続くはずもありません。


王都への道中では、新たな出会いや試練、そして魔族達の思惑も少しずつ動き始めます。


これから始まる第六章も楽しんでいただければ幸いです。

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次回の更新は、7月7日18時を予定してます

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