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魔族の女王が転生したら聖女になっていた  作者: 白神 エル
第三章:王都に向かって ― 旅立ちと覚悟 ―

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旅立ちの準備 ー 共に旅立つ仲間

エリスは、二人に話を終えると——


「……行ってくるね」

そう一言告げて、家を出た。

向かう先は、ただ一つ。

マリンの家。

扉の前に立ち、軽くノックをする。


「マリン、いる?」


すぐに扉が開いた。


「エリス?」


少し驚いたような顔。


「どうしたの?」


エリスは、まっすぐにマリンを見た。


「お願いしたいことがあるの」


その一言で——

空気が少し変わる。

マリンは、すぐに察した。


「……分かった

 外、行こうか」


二人は並んで歩き出す。

向かう先は——

いつもの噴水のある広場。


噴水の水音が、静かに響いていた。

いつもと変わらない景色。

いつもと同じベンチ。

それなのに——

空気だけが、少し違っていた。

エリスは、すぐには話さなかった。

手を膝の上でぎゅっと握る。

マリンは、黙って待っている。

急かさない。

それが、いつもの距離感だった。


やがて——


「……ねえ、マリン」


エリスが、ゆっくりと口を開いた。


「ちょっと……長くなるかもしれないけど

 ちゃんと聞いてほしいの」


マリンは、小さく頷く。


「うん」


その一言に、エリスは少しだけ安心した。


「……私ね

 “境界の子”なんだって」


マリンの目が、わずかに見開かれる。


でも、口は挟まない。


エリスは続けた。


「人でも、魔族でも、神でもない存在で……

 どこにも属してないから

 全部に干渉できるって言われた」


自分の手を見つめる。


「この前、ゴブリンが消えたのも

 傷が元に戻ったのも……

 全部、それ」


マリンの表情が、ゆっくりと理解に変わっていく。

エリスは、言葉を選びながら続けた。


「役割は一つで……

 世界のバランスを保つこと

 人界と魔界と天界……その全部のバランスが崩れたら

 それを元に戻すのが、私の役目なんだって」


「……元に戻すって?」


マリンが、静かに問いかける。

エリスは、一瞬だけ迷って——


「……消すの」


正直に答えた。


「原因になってるものを

 存在ごと、なかったことにする」


噴水の音だけが、響く。

エリスは、小さく息を吐いた。


「でもね……

 それって、すごく怖いことだと思うの

 だって……間違えたら

 守りたいものまで、消しちゃうかもしれないから」


マリンは、じっとエリスを見ている。

エリスは、顔を上げた。


「前にいた境界の子……アテナって人は

 ちゃんと役目を果たしたって言ってた

 でも……すごく一人だったって

 全部、自分で決めて……誰にも頼れなかったって」


少しだけ、声が揺れる。


「……でも、私は」


すぐに、強く言い直した。


「そうなりたくない

 消すんじゃなくて……

 一緒にいられる道を、探したい

 人も、魔族も……

 ちゃんと生きていける世界を」


そして——

本題を告げる。


「そのために……王都に行こうと思ってるの

 グランヴェイルに」


マリンが、わずかに息を呑む。


「サントス国をまとめるには

 王族と関わる必要があるって言われた

 だから……」


一瞬、言葉が止まる。

でも——

しっかりと、マリンを見る。


「一緒に来てほしいの」


その一言には——

願いと、信頼が込められていた。

エリスは静かに、そう言った。

マリンは、すぐには答えなかった。

視線を落とし、考えている。

水の音だけが、響く。


やがて——


「……ごめん」


小さく、そう言った。

エリスの胸が、少しだけざわつく。


「すぐには……答えられない」


マリンは顔を上げた。


「こういうのって……私だけで決めちゃダメだから

 母さんに、ちゃんと話さないと」


その言葉は、とてもまっすぐだった。

エリスは、すぐに頷く。


「……うん、そうだよね

 もしよかったら、一緒にお願いに行くよ?」


マリンは、少しだけ笑った。


「大丈夫

 ちゃんと、自分で話す」


その言葉には、覚悟があった。

そして——

少しだけ、エリスの方を見て。


「でもね

 心配しないで」


ふっと、優しく笑う。


「多分……大丈夫だから」


その一言で、

エリスの不安が、少しだけ和らぐ。

「……うん」


小さく、頷いた。

それ以上は、何も言わない。

二人の間には——

言葉にしなくても分かる信頼があった。

やがて立ち上がり、

それぞれの帰り道へと歩き出す。


振り返ることはない。

けれど——

同じ方向を見ていることだけは、確かだった。




————マリンはエリスと別れて


マリンは家に戻ると、

すぐにミリアの姿を探した。


「母さん」


台所にいたミリアが、振り返る。


「おかえり、マリン」


いつも通りの穏やかな声。

だが——

マリンの表情を見て、何かを察した。


「……どうしたの?」


マリンは、一度だけ深呼吸をする。


「話があるの」


その言葉に、ミリアは静かに頷いた。

二人はテーブルを挟んで向かい合う。


「エリスから……お願いされたの

 王都グランヴェイルに行くから、一緒に来てほしいって」


ミリアの目が、わずかに細まる。


「……理由は?」


マリンは、少し迷ったあと——


「境界の子のこと、関係してる」


そう答えた。


その瞬間。


ミリアの表情が、静かに変わる。


「……やっぱりね」


その反応に、マリンは驚いた。


「え……?

 なんで……母さん、知ってるの?」


まだ、話していないはずだった。

ミリアは、落ち着いた様子で答える。


「この前、教会で調べたのよ

 あの子の力……どう考えても普通じゃなかったから

 文献に、似た記述があったの

 “境界の子”ってね」


マリンは、ゆっくりとその言葉を受け止める。


「……そっか」


だから、理解が早かったのかと納得する。

ミリアは、まっすぐにマリンを見た。


「それで?

 あなたは、どうしたいの?」


試すような問いではなかった。

ただ、確認するような問い。

マリンは、迷わなかった。


「……行きたい」


はっきりと答える。


「大変なのは、分かってる

 危ないのも、分かってる」


それでも——


「でも、エリスを一人にしたくない

 親友だから」


その言葉に、迷いはなかった。

ミリアは、しばらく何も言わずにマリンを見つめる。


やがて——


小さく息を吐いた。


「……そう」


そして、ゆっくりと口を開く。


「なら、止めないわ」


マリンの表情が、少しだけ明るくなる。

だが——


「その代わり、条件がある」


空気が引き締まる。


「……条件?」


ミリアは、はっきりと言った。


「カイルとルシアン

 あの二人を同行させなさい」


マリンは、一瞬驚く。


「……え?」


「あなた達だけじゃ危険すぎるわ

 あの二人なら、経験もあるし、判断もできる」


冷静で、的確な判断だった。

そして——


「それと、もう一つ」


ミリアの声が、少しだけ柔らかくなる。


「私は、すぐには行けないけど

 いずれ合流するわ

 それまで、無茶はしないこと」


その言葉は——

母としての約束だった。

マリンは、ゆっくりと頷く。


「……分かった

 約束する」


迷いのない返事。


ミリアは、ふっと微笑んだ。


「行ってきなさい」


その一言で——

すべてが決まった。

マリンは、立ち上がる。


「……ありがとう、母さん」


そして——

迷わず家を飛び出した。

向かう先は、一つ。

エリスの元へ。


新しい旅の始まりを、伝えるために。


心の中には——

もう、答えがある。


マリンはエリスの家に着くと

扉の前に立ち、軽くノックをする。

すぐに扉が開いた。


「マリン」


エリスが、少しほっとしたような顔をする。


「……入って」


マリンは小さく頷き、そのまま家の中へ入った。


「居間にいこう」


エリスに案内され、奥へと進む。

扉を開けた瞬間——


マリンの足が、わずかに止まった。


「……え?」


そこには、すでに二人の姿があった。


「よう」


軽く手を上げるルシアン。


「久しぶりだな」


カイルも静かに頷く。


「……なんで二人が?」


マリンが驚くのも無理はなかった。

クラリスが、少し後ろから答える。


「私が呼んだの

 もう話はしてあるわ」


マリンは、ゆっくりと二人を見る。

ルシアンが、肩をすくめた。


「いやはや……

 今までの疑問が、全部繋がったよ

 あの力も、あの違和感もな」


カイルも続ける。


「納得した

 あれは……普通じゃない」


だが、その言葉に恐れはなかった。

ただ——理解があった。

ルシアンが、ふっと笑う。


「まあ、クラリスに頼まれたらな

 断る理由もない」


カイルも静かに言った。


「協力する

 最後までな」


その言葉に——

エリスの表情が、わずかに緩む。

マリンは、ようやく状況を理解した。

そして、少しだけ笑う。


「……そっか

 なら、ちょうどいいね」


エリスが、マリンを見る。


「……どうだった?」


その問いに、マリンはしっかりと頷いた。


「母さん、許してくれたよ

 ただし、条件付き」


エリスの表情が少し引き締まる。


「カイルさんとルシアンさんを同行させること」


一瞬の沈黙。

そして——


マリンが、ふっと笑った。


「でも、それ……もう問題ないよね」


その言葉に、場の空気が少しだけ緩む。

ルシアンが、小さく笑った。


「確かにな」


カイルも、静かに頷く。


「条件は満たされている」


エリスは、ゆっくりと息を吐いた。


「……ありがとう」


その一言には、

安心と決意が込められていた。

ルシアンが立ち上がる。


「さて

 準備もあるだろうしな

 出発は——三日後だ」


はっきりと告げる。


「それまでに整えておけ」


カイルも、それに続いた。


「装備、食料、経路

 確認しておく」


二人は、それ以上は語らず——

静かに家を後にした。

もう、戻らない。


ここから——


すべてが、動き出す。

最後まで読んで頂きありがとうございます

次回の更新は4月22日18時を予定してます

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