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魔族の女王が転生したら聖女になっていた  作者: 白神 エル
第六章:王都への道 ― 新たなる星座の旅路 ―

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モニカからの褒賞 ― 新たな仲間と帰還への一歩 ―

いつも『魔族の女王が転生したら聖女になっていた』をお読みいただき、ありがとうございます。


リディア、ソフィア、スピカの三人も加わり、新たな旅を始めることになったエリス達。

翌朝、一行はモニカを発つための予定を確認していました。

そんな中、待っていた領主からの連絡が届きます。

モニカをスタンピードから救ったエリス達に贈られる褒賞とは――。


それでは、第六章の続きをお楽しみください。

翌朝。


エリス達は宿の食堂で朝食を済ませると、再びルシアン達の部屋へ集まっていた。

昨日の話し合いで、リディア、ソフィア、スピカの三人も、これからエリス達と共に行動することが決まった。

そのため、今日はモニカを出た後の予定について確認しておくことになった。


「まずは、領主からの連絡を待つ」


ルシアンが全員を見回しながら口を開く。


「昨日の騎士の話なら、今日には何かしら連絡が来るはずだ。それが終わったら、ミネアヴィレッジへ戻る。それでいいな?」


「ええ」


クラリスが頷いた。

他の仲間達からも異論はない。

今度はリディア達三人も加わり、十二人全員でミネアヴィレッジへ戻ることになる。

すると、リディアが口を開いた。


「その前に、一ついいですか?」


「何?」


クラリスが尋ねる。


「戻る前に、メルキオラさんに作っていただいた魔道具を回収しに行きたいんです」


「ああ、あれですね」


メルキオラもすぐに思い出したようだった。


「そのまま置いておく必要もございませんし、回収しておきましょう」


「ありがとうございます」


リディアが頭を下げる。

そこでメルキオラが、何かを思い出したように僅かに目を見開いた。


「そういえば……馬車も置いたままでしたね」


「ああ、そうだったわね」


レオネリアも思い出したように答える。

帝国内での移動に使うため、レオネリアとメルキオラが購入した馬車だ。

今回モニカへ向かうことになったため、その馬車も途中に置いたままになっている。


「馬車はどうする?」


ルシアンが尋ねた。


「今後は皆様と一緒に行動することになりましたので、あちらの馬車は必要ございませんね」


メルキオラが答える。

ミネアヴィレッジには、エリス達がこれまで使っていた馬車が置いてある。

今後はリディア達三人も加わるため人数は増えるものの、あの馬車なら全員で旅を続けることができる。


「でしたら、馬車の方は処分してしまいましょう」


「それでいいと思うわ」


レオネリアも同意する。


「ただ、馬は連れて帰った方がよろしいかと」


「馬は?」


エリスが尋ねる。


「はい。ミネアヴィレッジに置いてある馬車は、現在一頭の馬で牽いております」


メルキオラは少し考えてから続ける。


「これまでは一頭でも問題ございませんでしたが、リディアさん達が加わり人数も増えました。今後は二頭で牽くようにした方が、馬への負担も少なくなるでしょう」


「確かに、その方がいいわね」


クラリスが頷いた。


「では、馬車は処分して、馬だけ連れて帰るということでよろしいでしょうか?」


「ええ」


これでモニカを出た後の予定も決まった。

領主からの連絡を受けた後、まずはリディアが回収したいと言っていた魔道具の場所へ向かう。

そこでレオネリアとメルキオラが使っていた馬車を処分し、馬だけを連れてミネアヴィレッジへ戻る。

そこまで話した時だった。


――コンコン。


部屋の扉を叩く音が響いた。

全員の視線が扉へ向く。


「誰だ?」


ルシアンが声を掛ける。


「モニカ騎士団の者です」


その声を聞き、クラリスとルシアンが顔を見合わせた。

どうやら、待っていた連絡が来たらしい。

ルシアンが立ち上がり、扉を開ける。

そこには、モニカの騎士が立っていた。


「朝早くから申し訳ない」


「いや、ちょうど全員揃っていたところだ。どうぞ」


ルシアンに促され、騎士が部屋へ入ってくる。

騎士は全員が集まっていることを確認すると、クラリス達へ向き直った。


「領主様から皆さんへの伝言と、昨日の件について褒賞を預かってきた」


「領主様から?」


クラリスが立ち上がる。


「ああ。昨日のスタンピードについては、すでに領主様へ報告してある。あなた達が多数の魔物やキメラを討伐し、最後には邪龍と、魔物を送り出していたあの奇妙なものまで破壊したことも伝えてある」


騎士は姿勢を正す。


「領主様も大変感謝されている。あなた達がいなければ、モニカの被害はさらに大きなものになっていただろうとのことだ」


「そうですか」


「その功績に対して、領主様から褒賞を授けることが決まった」


エリスとマリンが顔を見合わせる。

昨日、褒賞が出るかもしれないとは聞いていた。

どうやら本当に用意されたらしい。


「本来であれば、領主様が直接お会いして礼を申し上げたいとのことだった」


騎士の表情が少し曇る。


「ただ、現在は街の被害状況の確認と復興の指揮に追われている。申し訳ないが、皆さんとお会いする時間を作ることができないそうだ」


その言葉を聞いた瞬間、エリスは内心で少しだけ安心した。

領主と直接会わなくて済む。

昨日、メルキオラが用意した偽造の入国許可証で、どうにか身分確認を切り抜けたばかりだった。

領主と直接面会することになれば、どこから来たのか、いつ帝国へ入ったのかなど、詳しいことを尋ねられる可能性もある。

できることなら、それは避けたい。

領主が復興で忙しく会えないというのは、エリス達にとっては好都合だった。

もちろん、それを喜ぶことなどできない。

クラリスも普段と変わらない表情で騎士に答える。


「お会いできないのは残念ですが、今は街の復興が何よりも大切ですから」


「ああ」


「褒賞の方はありがたく頂戴いたしますと、領主様にお伝えください」


「必ず伝えよう」


騎士は頷くと、持ってきた大きな袋をテーブルの上へ置いた。

ずしりと重い音が響く。


「まずは報奨金だ」


袋の口が開かれる。

中には帝国で使われている金貨がぎっしりと詰まっていた。


「帝国金貨百枚。今回の功績に対する報奨金として、領主様から預かってきた」


「百枚……」


マリンが思わず呟く。

エリスも驚いたように袋を見る。

決して少ない金額ではない。

それだけ今回のスタンピードが、モニカにとって大きな危機だったということなのだろう。

騎士はさらに、何枚もの書類を取り出した。


「それと、もう一つある」


「これは?」


クラリスが尋ねる。


「ヴァルガディア帝国への永久入国許可証だ」


その言葉に、エリス達の表情が一瞬固まった。


「永久入国許可証……ですか?」


クラリスが聞き返す。


「ああ。今回モニカを救ってくれた功績に対する特別な褒賞だ」


騎士は人数分の許可証をクラリスへ差し出す。


「これがあれば、今後ヴァルガディア帝国へ入る際、通常の入国許可証を取得する必要はない」


「それは……」


クラリスも僅かに驚いた様子を見せた。

昨日まで、エリス達が持っていたのはメルキオラが偽造した入国許可証だった。

それが一夜明けてみれば、本物の永久入国許可証を手にすることになった。

これさえあれば、今後帝国へ来ることになっても、今回のような心配をする必要はなくなる。


「ありがとうございます」


クラリスは永久入国許可証を受け取った。


「こちらについても、領主様にお礼をお伝えください」


「ああ。伝えておこう」


クラリスは受け取った永久入国許可証を、それぞれの持ち主へ渡していく。

エリスも自分の名前が記された許可証を受け取った。

手元の許可証を見つめながら、エリスは内心でほっとする。

これがあれば、今後ヴァルガディア帝国を訪れることになっても、今回のように身分確認で焦る必要はない。

隣を見ると、マリンも許可証を手にしていた。

一瞬だけ目が合う。

二人とも何も言わなかった。

今ここで余計なことを口にする必要がないことくらい、分かっている。

エリスは何事もなかったように許可証をしまった。

騎士は用件を伝え終えると、クラリスへ尋ねる。


「皆さんは、今日はどうする予定だ?」


「私達は今日、モニカを発つ予定です」


クラリスが答えた。


「もう発つのか?」


「はい。こちらでの用事も済みましたので」


騎士は少し残念そうな表情を浮かべたものの、すぐに頷いた。


「そうか。領主様にも伝えておこう」


「お願いします」


「本当に世話になった。あなた達のおかげでモニカは救われた」


騎士が改めて頭を下げる。

クラリスも頭を下げた。


「一日も早く、街が元の姿に戻ることを願っています」


「ああ。ありがとう」


騎士はもう一度礼を言うと、部屋を後にした。

扉が閉まる。

ルシアンがテーブルの上に置かれた金貨の袋を見る。


「さて、こっちも分けておくか」


「そうね」


クラリスが袋を手元へ引き寄せた。

今回の報奨金は帝国金貨百枚。

そして、今回の戦いに参加したのは十二人。

クラリスは金貨を数えると、そのうち二十五枚を分けた。


「リディア」


「はい?」


呼ばれたリディアがクラリスを見る。

クラリスは二十五枚の金貨をリディアの前へ差し出した。


「これは、あなた達三人の分よ」


「私達の分ですか?」


「ええ。全部で十二人。そのうちあなた達は三人だから、四分の一ね」


金貨百枚の四分の一。

二十五枚。


「こんなにいただいていいんですか?」


リディアが驚いたように尋ねる。


「もちろんよ」


クラリスは当然のように答えた。


「あなた達も一緒に戦ったんだから、受け取る権利はあるわ」


リディアはソフィアとスピカを見る。

二人とも予想外だったらしく、驚いた表情で金貨を見ていた。

ソフィアが先に頷く。

スピカも笑顔で頷いた。

リディアはもう一度クラリスを見る。


「分かりました」


差し出された金貨を受け取る。


「まさか報奨金までいただけるとは思っていなかったので……ありがたくいただきます」


「ええ」


クラリスが笑顔で頷いた。

リディア達にとっては、まったく予期していなかった収入だった。

残る七十五枚は、エリス達九人の分となる。

領主からの連絡も受けた。

報奨金も受け取った。

そして永久入国許可証まで手に入った。

これでモニカでの用事はすべて終わった。

エリス達は宿を出ると、モニカの街の出口へ向かった。

街には昨日の戦いの痕跡がまだ色濃く残っている。


壊れた建物。

傷ついた道路。


海岸付近では、騎士や住民達が協力して瓦礫を片付けていた。

それでも、昨日のような混乱はない。

住民達はそれぞれに動き始め、街を元の姿へ戻そうとしている。

エリスは歩きながら、その光景を静かに眺めていた。


「早く元に戻るといいね」


隣を歩くマリンが言う。


「うん」


エリスも頷いた。

昨日まで魔物が溢れていた街とは思えない。

まだ復興には時間が掛かるだろう。

それでも、新たな魔物が現れることはもうない。

一行はそのまま街の門を抜けた。

しばらく街道を進み、モニカの城壁が少し遠くなったところで、メルキオラが立ち止まる。

周囲に人がいないことを確認する。

転移魔法は伝説とされる魔法だ。

いくら永久入国許可証を手に入れたとはいえ、メルキオラが転移魔法を使えることまで帝国側に知られる必要はない。


「この辺りでしたら問題ございませんね」


メルキオラが言う。


「まずは魔道具を回収しに参りましょう」


「お願いします」


リディアが答える。

メルキオラの周囲へ全員が集まった。

足元に魔法陣が広がっていく。

淡い光が十二人を包み込む。


「では、参ります」


メルキオラが魔力を展開すると、足元に魔法陣が広がっていく。

淡い光が十二人を包み込んだ。

次の瞬間――。

エリス達の姿がその場から消える。

一瞬だけ視界が光に包まれ、次に景色が見えた時には、先ほどまでとはまったく違う場所に立っていた。

そして目の前には、レオネリアとメルキオラが置いていった馬車があった。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


モニカを救った功績として贈られた帝国金貨百枚と、ヴァルガディア帝国への永久入国許可証。

思わぬ形ではありましたが、これでエリス達は今後、正式に帝国へ入ることができるようになりました。

報奨金についても、共に戦ったリディア達三人へ四分の一となる二十五枚を渡し、モニカでの用事はすべて終了。

一行はその日のうちにモニカを発ち、リディアが回収したいと言っていた魔道具のもとへ転移しました。

魔道具を回収し、不要となった馬車を処分した後は、馬を連れてミネアヴィレッジへ。

次回は、十二人となったエリス達がミネアヴィレッジへ戻ってからのお話です。


次回も『魔族の女王が転生したら聖女になっていた』をよろしくお願いいたします。

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次回の更新は、8月25日18時を予定してます

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