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魔族の女王が転生したら聖女になっていた  作者: 白神 エル
第六章:王都への道 ― 新たなる星座の旅路 ―

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邪龍との決着 ― モニカを襲うスタンピードの終焉 ―

いつも『魔族の女王が転生したら聖女になっていた』をお読みいただき、ありがとうございます。


今回は、再び集結したエリス達が、邪龍を相手にする者達とゲートを破壊する者達に分かれ、最後の戦いへ挑みます。

強固な防御を誇る邪龍。そして、今も魔物を送り出し続ける黒いゲート。

モニカを襲ったスタンピードを終わらせるため、それぞれの戦いが始まります。


それでは、第六章の続きをお楽しみください。

邪龍も何かを察したのか。


「グルルルルル……」


低い唸り声を上げた。

巨大な翼がゆっくりと広がる。

その背後では、黒いゲートが再び不気味に揺らぎ始めていた。


「行くよ!」


エリスの声を合図に、全員が一斉に動き出した。

最初に仕掛けたのはメルキオラだった。

杖を邪龍へ向ける。


「アビスバインド!」


邪龍の周囲に黒い魔法陣が浮かび上がった。

そこから無数の黒い鎖が飛び出し、邪龍の前脚、後脚、胴体、翼、そして首へ次々と絡みついていく。


「今です!」


メルキオラが杖を握る手に力を込めた。

黒い鎖が一斉に締まり、巨大な邪龍の動きを封じようとする。

だが。


「グオオオオオオオッ!」


邪龍が激しく咆哮した。

空気が震え、砂浜が揺れる。

次の瞬間。


バキン!


一本の鎖が引き千切られた。

続いて二本目。

三本目。


「くっ……!」


メルキオラがさらに魔力を込める。

しかし、邪龍が巨大な翼を大きく広げると、残っていた鎖まで次々と砕け散っていった。


「アビスバインドを力だけで……」


メルキオラの表情が険しくなる。

拘束は失敗した。

だが。


「行くよ!」


エリスは止まらなかった。


クラリス。

レオネリア。

そしてセラ。


三人もすでに邪龍へ向かって駆け出している。


「エリス、どこを狙う?」


クラリスが走りながら尋ねる。


「喉!」


先ほど戦った時、邪龍の鱗が全身を強固に守っていることは分かっていた。

どこを狙っても硬いのであれば、一ヶ所へ攻撃を集中させる。


『分かった!』


セラが一気に加速した。

邪龍がセラへ巨大な爪を振り下ろす。


『当たらないよ!』


セラは素早く横へ跳んだ。

巨大な爪が砂浜へ突き刺さり、大量の砂が舞い上がる。

その隙にクラリスが踏み込んだ。


「はぁっ!」


狙うのは喉、鋭い斬撃が邪龍の鱗へ叩き込まれる。


ガキィン!


金属同士がぶつかったような音が響いた。


「硬い……!」


クラリスの剣ですら弾かれる。

だが、すぐにレオネリアが続いた。


「同じ場所ね!」


クラリスが攻撃した場所へ剣を振り抜く。


ガキン!


さらにセラが跳び上がり、鋭い爪を振り下ろした。


『えいっ!』


ガギッ!


鱗の表面に僅かな傷が走る。


「そこ!」


最後にエリスが飛び込んだ。

三人が攻撃した、まったく同じ場所。


「はぁぁっ!」


全力で剣を叩き込む。


ガギィン!


凄まじい衝撃が両腕へ伝わった。

それでもエリスは剣を押し込む。


ピシッ。


小さな音がした。

邪龍の喉を覆う鱗の一枚に、僅かな亀裂が走った。


「入った!」


エリスが声を上げる。

四人で同じ場所へ攻撃を集中させ、ようやく傷をつけることができた。

しかし。


「まだ浅いわ!」


クラリスが叫ぶ。

その通りだった。

倒すには程遠い。

邪龍が怒りの咆哮を上げる。


「グオオオオオオッ!」


「離れて!」


四人が一斉に飛び退いた。

直後、巨大な尾が砂浜を薙ぎ払う。

さらに邪龍が口を開いた。

黒い魔力が集まり、次の瞬間には炎となって吐き出される。


『来るよ!』


エリス達が左右へ散る。

黒い炎が砂浜へ直撃し、大量の砂を吹き飛ばした。


「やっぱり、普通に攻撃しているだけじゃ時間が掛かるわね」


クラリスが剣を構え直す。

その時だった。


「メルキオラ!」


マリンが声を上げる。


「はい!」


「私達で大きいのを一発入れよう!」


メルキオラはすぐに意図を理解した。


「承知しました」


二人が並んで杖を構える。


「エリス! 少し離れて!」


「分かった!」


エリス達が一斉に邪龍から距離を取った。

マリンとメルキオラの足元へ巨大な魔法陣が広がる。

二人の魔力が重なり合い、上空にも巨大な魔法陣が浮かび上がった。

邪龍が異変に気づいて空を見上げる。

だが、遅い。


「行くよ!」


「はい!」


二人が同時に杖を振り下ろした。


「「メテオホール!」」


巨大な炎の塊が空から落下した。

まるで隕石。

燃え盛る巨大な塊が凄まじい勢いで邪龍へ迫る。


「グオオオオオッ!」


邪龍が翼を広げる。

しかし、回避する時間はなかった。


ドォォォォォン!


メテオホールが直撃した。

凄まじい轟音とともに爆炎が邪龍を包み込む。

海面が激しく波打ち、大量の砂が舞い上がった。


「どう……?」


マリンが息を切らしながら煙の向こうを見る。

やがて、煙が晴れていく。


「まだ立ってる……!」


邪龍は倒れていなかった。

だが、無傷でもない。

全身の鱗が黒く焼け焦げ、何枚もの鱗が剥がれ落ちている。

そして、先ほどエリス達が集中攻撃した喉元。


そこには大きな亀裂が走っていた。


「効いてる!」


エリスが叫ぶ。

明らかに防御は崩れている。

それでも邪龍は低い唸り声を上げ、まだ立ち続けていた。


「これでも倒れないの……」


マリンが悔しそうに杖を握る。


「十分でございます」


メルキオラが静かに言った。


「今の攻撃で、邪龍を守っていた魔力と鱗の双方にかなりの損傷を与えられました」


メルキオラは邪龍の喉元を見る。


「特に、エルシア様達が攻撃された場所。あそこなら、今まで以上に攻撃を通せるはずです」


「じゃあ、もう一度!」


エリスが剣を構える。


「お待ちください、エルシア様」


メルキオラが呼び止めた。


「何?」


「もう一手加えます」


メルキオラは杖を構える。


「エルシア様、クラリス様、レオネリア。剣をこちらへ」


その言葉を聞いたクラリスは、すぐにメルキオラの意図を理解した。


「アビスソードね」


「はい」


エリスとレオネリアもクラリスに続き、それぞれの剣をメルキオラへ向ける。

メルキオラが杖を掲げた。


「アビスソード!」


三人の剣の周囲に魔法陣が浮かび上がる。

そこから溢れ出した魔力が刃へと纏わりつき、三本の剣を包み込んだ。


エリスは魔力を纏った自分の剣を見る。


「これがアビスソード……」


エリスにとっては初めて受ける魔法だった。


「はい。これなら、先ほどよりも深く斬り込めるはずでございます」


クラリスはすでにその効果を知っている。

光を纏った剣を構え直すと、邪龍の喉元へ視線を向けた。


「だったら、あとはあの傷を狙えばいいわね」


「ええ」


レオネリアも剣を構える。

エリスも邪龍の喉を見据えた。


「同じ場所に三人で攻撃を集中させましょう」


「なら、狙う場所は決まったわね」


「うん」


エリスも剣を構える。

狙うのは喉。

何度も攻撃した場所。

そして、メテオホールによって大きく防御が崩れた場所。


「お母さん」


「ええ」


「レオネリア」


「いつでもいいわ」


三人が並んだ。

邪龍も危険を感じたのか、大きく口を開く。

黒い魔力が集まり始めた。


「させないよ!」


マリンが杖を振るった。

魔法が邪龍の顔面へ直撃する。


「グオッ!?」


邪龍の頭が横へ逸れた。


「今です!」


メルキオラが叫ぶ。

三人が同時に地面を蹴った。

最初にクラリス。


「はぁぁっ!」


魔力を纏った剣を振り抜く。


ザシュッ!


今までとは違う。

剣が割れた鱗を突破した。

続いてレオネリア。


「そこね!」


クラリスが切り開いた傷へ剣を叩き込む。


ザンッ!


傷がさらに深くなる。


「グオオオッ!」


邪龍が苦しそうに首を振る。

そして、最後にエリスが地面を蹴った。

高く跳び上がる。

両手で剣を握り締めた。

狙うのは、二人が切り開いた一点。


「これで――!」


全力で剣を振り下ろす。


「終わり!」


ザンッ!


刃が深く食い込んだ。


「グオオオオオオオオッ!」


邪龍が悲鳴にも似た咆哮を上げる。

巨大な翼を広げ、身体を支えようとする。

だが、その巨体が大きく傾いた。

エリスは剣を引き抜くと、すぐに飛び退く。

次の瞬間。


ドォォォン!


邪龍が砂浜へ倒れ込んだ。

大量の砂が舞い上がる。

エリス達は警戒したまま、その姿を見つめる。

だが、邪龍はもう起き上がらなかった。


『倒した!』


セラが嬉しそうに声を上げる。


「やった……」


マリンが大きく息を吐いた。

クラリスも剣を下ろす。


「さすがに硬かったわね」


「ええ。これだけ集中して攻撃して、やっとですからね」


レオネリアも剣を下ろした。

しかし、エリスはすぐに海へ顔を向ける。


「ゲート!」


まだ、もう一つの戦いが残っている。


     ◇ ◇ ◇


その頃、ルシアン達もゲートへ向かって進んでいた。


目的はただ一つ。

スタンピードの原因となっているゲートを破壊すること。

しかし、黒いゲートは今も魔物を送り出し続けている。


「来るぞ!」


カイルが弓を引き絞る。

放たれた矢が、ゲートから姿を現した魔物の頭部を正確に射抜いた。

だが、その後ろからさらに二体。


「本当にキリがないわね!」


ミリアが杖を向ける。


「ホーリーランス!」


光の槍が魔物を貫く。


「リディア!」


ソフィアが剣を構えた。


「ええ!」


リディアとソフィアが前へ出る。

二人が左右に分かれ、海岸へ上がろうとする魔物を次々と斬り倒していった。


「進むぞ!」


ルシアンが叫ぶ。

全員が一気に前へ進む。

ゲートとの距離を縮める。

しかし、再び黒い空間が揺らいだ。

新たな魔物達が姿を現す。


「全部倒そうとするな!」


ルシアンが杖を振るう。


「目的はゲートだ! 邪魔な奴だけ倒して前へ進め!」


「分かったわ!」


リディアが魔物を斬り払う。

その死角から別の魔物が迫るが。


「右!」


カイルの矢が飛んだ。

リディアへ迫っていた魔物の身体を射抜く。


「ありがとう!」


さらにソフィアの前へ二体の魔物が現れた。


「こっちは私が!」


スピカが杖を向ける。

魔法が一体を吹き飛ばす。

残った一体をソフィアが斬り倒した。

リディアとソフィアが前衛。

カイルが遠距離から二人を援護。

ミリアとスピカが魔法で魔物を減らし。

ルシアンが全体を見ながら進む道を指示する。

少しずつ、ゲートが近づいてくる。

その時


ドォォォン!


背後から巨大な音が響いた。

リディアが一瞬だけ振り返る。


「……!」


邪龍の巨体が砂浜へ倒れている。

その近くにはクラリス達の姿があった。


「クラリスさん達がやったみたいね!」


「あっちは終わったか!」


ルシアンも一瞬だけ振り返る。

すぐにゲートへ向き直った。


「なら、こっちも終わらせるぞ!」


「ああ!」


カイルが弓を構える。

ゲートまではもう僅か。

だが、再び黒い空間が揺らぐ。


「また来るわ!」


スピカが叫ぶ。


「ここは私達に任せて!」


リディアが走り出す。


「ソフィア!」


「ええ!」


二人がゲートから出現した魔物へ斬り込んだ。


「今のうちよ!」


ミリアが杖をゲートへ向ける。

ルシアン。

スピカ。

そしてカイルも続く。


「一気に行くぞ!」


ルシアンが叫んだ。


「リディア! ソフィア! 離れろ!」


二人が左右へ飛び退く。

その瞬間、三つの魔法が同時に放たれた。

さらにカイルの矢。

すべての攻撃がゲートの一点へ集中する。


ドォン!


黒いゲートが大きく揺れた。

空間そのものが歪む。

だが、まだ消えない。


「もう一度!」


ミリアが叫ぶ。

その時、ゲートから新たな魔物が出ようとする。


「させないわ!」


リディアが飛び込んだ。

完全に姿を現す前の魔物へ剣を叩き込む。

反対側から出てきた魔物はソフィアが斬り払った。


「今よ!」


ルシアン達が再びゲートを狙う。

先ほど攻撃を集中させた場所。

そこには小さな亀裂が走っていた。


「同じ場所だ!」


ルシアンが叫ぶ。


「そこへ集中させるぞ!」


ミリア。

スピカ。

ルシアン。


三人の杖へ魔力が集まる。

カイルも弓を限界まで引き絞った。


「行くぞ!」


魔法と矢が同時に放たれる。

ゲートへ直撃した。

黒い空間が激しく揺れる。


ピシッ。


亀裂が広がった。


さらに、ピシッ、ピシッ。

ゲート全体へ亀裂が走っていく。


「あと少し!」


スピカが叫ぶ。


「もう一発だ!」


ルシアンが杖を構え直す。


「これで終わらせるぞ!」


全員が最後の攻撃を放った。

次の瞬間、黒いゲートが大きく歪んだ。


そして――。

ガラスが砕けるような音とともに。

ゲートが崩壊した。

黒い光が無数の粒となって飛び散る。


一つ、また一つ。


光が空中へ溶けるように消えていった。

やがて、そこに残ったのは。

ただ波打つ海だけだった。


「……壊れた?」


ソフィアが呟く。

ルシアンはしばらくゲートがあった場所を見つめた。

新しい魔物は出てこない。


「……ああ」


杖を下ろす。


「壊れた」


カイルも弓を下ろした。


「これでもう、増援は来ないな」


ミリアが大きく息を吐く。


「やっと終わったわね」


「まだ残っている魔物はいるわ」


リディアが周囲を見る。


「でも、これ以上増えないなら……」


「後は倒すだけね」


ソフィアも剣を下ろした。


     ◇ ◇ ◇


邪龍を倒したエリス達も、ゲートが崩壊する瞬間を見ていた。


「消えた……」


マリンが呟く。


『エリス!』


セラが海をじっと見つめる。


『ゲートの魔力、完全に消えたよ!』


「本当?」


『うん! もう何も感じない!』


エリスの表情が明るくなる。

邪龍は倒した。


そして、スタンピードの原因となっていたゲートも破壊した。

これ以上、新しい魔物が送り込まれることはない。

あとは街や海岸に残っている魔物を倒せばいい。


「終わったんだね……」


エリスが小さく呟く。


「うん!」


マリンが笑顔で答える。


「やっと終わったね!」


クラリスも剣を鞘へ収めた。


「ええ。これで一安心ね」


レオネリアも海を見つめる。


「ゲートも完全に消えたようですね」


「はい」


メルキオラが頷く。


「先ほどまで感じていた異質な魔力も完全に消失しております」


少し離れた場所では、ルシアン達がこちらへ戻ってくる。


リディア。

ソフィア。

スピカ。

ミリア。

ルシアン。

カイル。


全員無事だった。


そして海岸では。


ガルドが残っていた魔物へ大剣を振り下ろした。


「これで最後だ!」


魔物が砂浜へ倒れる。

ガルドは周囲を確認すると、大剣を肩へ担いだ。


「こっちも片付いたぞ!」


その声を聞き、エリスはようやく笑顔を見せた。


「みんな、無事でよかった」


「本当ね」


クラリスが娘の隣へ並ぶ。

エリスはもう一度海を見る。

先ほどまで、そこには巨大な邪龍が立ちはだかり。

その後ろでは、黒いゲートから次々と魔物が送り込まれていた。

だが、もう邪龍は動かない。

ゲートもない。

聞こえていた魔物達の咆哮も、少しずつ消えていく。

クラーケンキメラをはじめとする数々のキメラ。

そして、最後に待ち構えていた邪龍。

魔物を送り込み続けていたゲート。

そのすべてを、エリス達は乗り越えた。

エリスは静かになりつつある海を見つめる。

そして、小さく、けれど確かな声で呟いた。


「これで、モニカのスタンピードは終わったんだね」


『うん』


セラが嬉しそうに答える。


『エリス達の勝ちだよ!』


その言葉に、エリスは静かに頷いた。


こうして、モニカを襲った大規模なスタンピードは――。

エリス達の手によって、ついに終息した。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


メルキオラのアビスバインドすら力で破る邪龍。

エリス達は攻撃を一点に集中させ、マリンとメルキオラのメテオホール、さらにメルキオラによる武器への魔力付与を組み合わせることで、ようやくその強固な防御を打ち破ることができました。

一方、ルシアン達も次々と現れる魔物を退けながらゲートへと迫り、その破壊に成功。

こうして、モニカを襲った大規模なスタンピードはついに終息しました。


しかし、これですべて解決というわけにはいきません。

次回、モニカの騎士団に発見され、スタンピードを救ったことを感謝されるエリス達。

ところが、エリス達は正式な手続きを経て帝国へ入ったわけではありません。

街を救った恩人でありながら、その立場は密入国と取られてもおかしくないもの。

果たしてエリス達は、この状況をどう切り抜けるのでしょうか。


次回も『魔族の女王が転生したら聖女になっていた』をよろしくお願いいたします。

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次回の更新は、8月19日18時を予定してます

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