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魔族の女王が転生したら聖女になっていた  作者: 白神 エル
第六章:王都への道 ― 新たなる星座の旅路 ―

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集結する仲間達 ― 邪龍と黒きゲート ―

いつも『魔族の女王が転生したら聖女になっていた』をお読みいただき、ありがとうございます。


今回は、強固な防御を持つ邪龍を前に、エリスが別行動をしていた仲間達を呼び集めます。

再び集結するエリス達。そして、スタンピードを終わらせるため、邪龍を相手にする者達とゲートの破壊へ向かう者達に分かれることになります。


それでは、第六章の続きをお楽しみください。

「……みんなを呼ぼう」


「みんな?」


マリンが尋ねる。

エリスは頷いた。


「お母さん達と、ルシアン達」


そして再び邪龍を見据える。


「全員で、この邪龍を倒そう」


そう決めると、エリスはすぐに通信機を取り出した。

まず連絡を取るのは、クラリス達だ。

クラリス達の中にはメルキオラがいる。

転移魔法を使えるメルキオラと連絡が取れれば、ここまで移動してくる時間を大幅に短縮できる。

その間にも、邪龍の背後に浮かぶ黒いゲートは不気味に揺らぎ続けている。

黒い空間が揺れた。

そこから一体の魔物が姿を現し、そのまま海へ落ちる。

さらに、もう一体。

こうしている間にも、ゲートからは次々と魔物が送り込まれている。

時間を掛けてはいられない。

エリスは通信機を操作した。

しばらくすると、通信機から聞き慣れた声が返ってきた。


『こちらメルキオラです』


「メルキオラ!」


『エルシア様。どうなさいましたか?』


「こっちに大きな龍が現れたの」


『龍ですか?』


「うん。セラによると邪龍みたい。すごく硬くて、私達だけでも倒せないとは思わないけど、このままだとかなり時間が掛かりそうなの」


『なるほど……』


「それと、もっと大事なことがあるの」


エリスは邪龍の後ろへ視線を向ける。

巨大な邪龍。

そのさらに向こう側。

海上に浮かぶ黒いゲート。


「あの邪龍の後ろに、セントポルで見たのと同じようなゲートがあるの」


『ゲート……』


メルキオラの声が僅かに低くなった。


「あそこから今も魔物が出続けてる。たぶん、あれが今回のスタンピードの原因だと思う」


『つまり、その邪龍はゲートを守っているということですか?』


「うん。私達が離れると追ってこないのに、ゲートへ近づこうとすると必ず邪魔してくるの」


『状況は理解いたしました』


メルキオラは少し考えるように間を置いた。


『邪龍を相手にしている間にも、ゲートから魔物が増え続けてしまうわけですね』


「うん。だから、みんなに来てもらいたいの」


『承知しました』


メルキオラは迷うことなく答えた。


『エルシア様、通信機をそのままお持ちください』


「え?」


『以前、通信機に位置を把握できる機能を付けております』


「そんな機能まで付けてたの?」


『このような状況になった際、互いの位置を把握できた方が便利かと思いまして』


いかにもメルキオラらしい。


通信機を作った時点で、こうした使い方まで考えていたのだろう。


「それなら、私達がいる場所も分かるの?」


『はい。少々お待ちください』


僅かな沈黙。


やがて。


『確認できました』


「本当?」


『はい。現在地を把握いたしましたので、転移可能です』


「さすがメルキオラ」


『ありがとうございます』


通信機の向こうから、僅かに嬉しそうな声が返ってくる。


『では、すぐにそちらへ向かいます』


「うん。お願い」


通信が切れる。


エリスは通信機を握ったまま邪龍を見た。


「来てくれるって?」


マリンが尋ねる。


「うん。通信機で私達の場所が分かるみたい」


「そんなことまでできるんだ……」


マリンが通信機を見る。


「メルキオラ、本当に色々付けてるね」


「私も知らなかった」


エリスが苦笑する。


ソフィアとスピカも驚いた様子で通信機を見ていた。


「通信だけじゃないのね」


ソフィアが言う。


「位置まで分かるなんて、かなり便利ね」


「そうですね」


エリスが答える。


「私も今初めて知りました」


その時だった。

エリス達から少し離れた砂浜の上。

空間が僅かに歪んだ。


「エリス」


ソフィアがそちらを見る。


「何か来るわ」


「大丈夫です。たぶんメルキオラです」


やがて、地面へ魔法陣が広がった。

光が一瞬強くなり、その中心から四つの人影が現れる。


クラリス

リディア

ガルド

そしてメルキオラ。


クラリス達と行動していた四人が、転移魔法によって一瞬で海岸へ現れた。


「エリス!」


クラリスが真っ先に娘の姿を見つける。


「お母さん!」


クラリスはすぐにエリスのところへ歩み寄った。


「怪我は?」


「大丈夫。みんなも無事だよ」


「そう」


クラリスは安心したように息を吐いた。

だが、その表情が緩んでいたのは一瞬だった。

海から低い唸り声が響く。


「グルルルルル……」


クラリスが顔を上げる。


その視線の先、海岸近くに立ちはだかる巨大な邪龍。


「……あれね」


「うん」


クラリスの横で、リディアも邪龍を見上げた。


「大きい……」


その声には驚きが混じっている。


「エリスさん、あれと戦っていたの?」


「はい」


エリスが頷く。


「私とソフィアさん、それからマリンとスピカさんで何度も攻撃したんですけど、ほとんど効きませんでした」


「そこまで硬いのね……」


リディアの表情が険しくなる。

ガルドも邪龍を見ながら腕を組んだ。


「こいつはまた、とんでもない奴が出てきたな」


「物理攻撃だけじゃないよ」


マリンが説明する。


「私とスピカさんの魔法もほとんど防がれちゃった」


「魔法もか」


ガルドが眉をひそめる。

その横では、メルキオラが黙って邪龍を観察していた。


「……なるほど」


「何か分かる?」


エリスが尋ねる。


「まだ詳しく調べなければ分かりませんが、確かにかなり強固な防御を持っているようでございます」


メルキオラの視線が邪龍の全身をなぞる。


「鱗そのものの強度も相当なものですが、それだけではないようですね」


『そうだよ』


セラが答えた。


『あいつ、身体の周りにすごく強い魔力を纏ってる』


「やはりそうですか」


メルキオラが頷く。


「物理的な防御に加え、魔力による防御も重ねているのでしょう」


クラリスが剣へ手を掛ける。


「それなら、簡単にはいかなそうね」


「うん」


エリスは邪龍を見る。

その時、邪龍の後ろ、黒いゲートが再び大きく揺らいだ。

そこから新たな魔物が姿を現す。

一体、続けてもう一体。

リディアがそれに気づいた。


「エリスさん、あれが言っていたゲート?」


「はい」


エリスが頷く。


「セントポルの時にも、あれと同じようなものがあったんです」


「そこから魔物が出てきているのね」


「はい。だから、できるだけ早く壊したいんです」


クラリスがゲートを見つめる。


「でも、あの邪龍が邪魔をする」


「うん」


「だったら、ルシアン達も呼んだ方がいいわね」


「私もそう思ってた」


エリスはメルキオラを見る。


「メルキオラ、ルシアン達も呼べる?」


「もちろんでございます」


メルキオラはすぐに通信機を取り出した。


「レオネリアの通信機から位置を取得できますので、まず連絡いたします」


通信機を操作する。

しばらくすると。


『こちらレオネリア』


通信機からレオネリアの声が聞こえた。


「レオネリア。メルキオラです」


『メルキオラ? どうしたの?』


「エルシア様達がスタンピードの原因と思われるゲートを発見されました」


『ゲートを?』


「はい。そのゲートから現在も魔物が出現し続けております」


『じゃあ、それを壊せば……』


「スタンピードを止められる可能性は高いかと」


『なるほどね』


「ですが、ゲートの前には大型の邪龍がおります」


『邪龍?』


「かなり強固な防御力を持っており、エルシア様達だけでは倒すまでに時間が掛かるとのことです。その間にも魔物が増え続けてしまいます」


『分かったわ』


レオネリアはすぐに答えた。


『こっちのキメラはもう倒したところよ。ルシアン達も全員無事』


「それは何よりです」


『エルシア様は?』


「ご無事です。現在、クラリス様達と合流しております」


『そう。それならよかった』


レオネリアの声が少しだけ柔らかくなる。


「これからそちらへ向かいます。その場でお待ちください」


『分かったわ』


通信が切れた。


メルキオラは通信機を確認する。


「位置も取得できました」


「すぐ行けそう?」


エリスが尋ねる。


「はい。問題ございません」


メルキオラは杖を手にした。


「では、ルシアン達を迎えに行ってまいります」


「お願い」


「承知いたしました」


メルキオラの足元へ転移魔法陣が現れる。

次の瞬間、その姿が消えた。

エリス達は邪龍を警戒しながら待つ。

幸い、邪龍はこちらへ向かってくる様子はない。

こちらの人数が増えても、ゲートの前から動こうとはしなかった。

やはり、あの邪龍の目的は、自分達を倒すことではない。

ゲートを守ること。

それだけなのだろう。


「……完全に門番ね」


クラリスが呟く。


「そうみたい」


エリスも答える。


「私達が距離を取ると追ってこないの」


「なら、逆に利用できるかもしれないわね」


「どういうこと?」


「全員揃ってから考えましょう」


クラリスは邪龍から目を離さない。


「これだけ硬い相手なら、無理に急いで攻撃するより、まずどう戦うか決めた方がいいわ」


「うん」


それから間もなく。

再び砂浜に転移魔法陣が現れた。


「戻ってきた!」


マリンが声を上げる。

魔法陣の光の中から人影が現れる。


メルキオラ

ルシアン

カイル

ミリア

そしてレオネリア。


「お待たせいたしました」


メルキオラが静かに一礼する。

ルシアンは到着すると、真っ先に海へ視線を向けた。

巨大な邪龍。

その後ろに浮かぶ黒いゲート。


「……あれか」


「ああ」


カイルも邪龍を見上げる。


「聞いてはいたが、でかいな」


ミリアも僅かに目を見開いた。


「本当に龍なのね……」


レオネリアは邪龍ではなく、まずエリスへ視線を向けた。


「エルシア様」


「レオネリア」


「ご無事で何よりです」


「うん。こっちはみんな大丈夫」


「それなら安心しました」


レオネリアはそこで初めて邪龍へ向き直った。


「それにしても……随分と厄介そうな相手ですね」


「すごく硬いよ」


エリスが答える。


「私達で何度も攻撃したけど、ほとんど効かなかったの」


「なるほど……」


ルシアンが邪龍を観察する。


「で、あの後ろにある黒い奴がゲートか」


「うん」


全員が揃った。

エリスは改めて、これまでの状況を説明した。

クラーケンをベースとしたキメラを倒した後、セラが海上に異常なものを見つけたこと。

それがセントポルでエリスとセラが目にしたものによく似たゲートだったこと。

そこから今も魔物が次々と送り出されていること。

そして、ゲートを破壊しようと近づいたところ、海中から邪龍が姿を現したこと。


「邪龍は、あのゲートを守ってるみたい」


エリスが続ける。


「私達が離れると追ってこない。でも、ゲートへ近づこうとすると必ず邪魔してくるの」


「つまり、あいつを無視してゲートだけ壊すのは難しいってことか」


ルシアンが言う。


「うん」


「それで、あの龍には攻撃が通らなかったの?」


ミリアが尋ねる。


「全然というわけじゃないけど、ほとんど効かなかった」


エリスは邪龍の胸元を指差した。


「あそこ。みんなで同じ場所を何度も狙って、やっとあれくらい」


邪龍の鱗には僅かな傷が残っている。

ルシアンが目を細めた。


「確かに硬そうだな」


「魔法も同じです」


スピカが説明する。


「私とマリンさんで攻撃しましたが、大きなダメージは与えられませんでした」


メルキオラが続ける。


「先ほど確認した限りでは、鱗そのものの強度に加えて、全身を覆う魔力によって防御力を高めているようでございます」


『うん』


セラも頷いた。


『すっごく硬いよ』


「物理にも魔法にも強い、か」


ルシアンが腕を組む。

その間にも、黒いゲートが揺れる。

また一体、魔物が姿を現した。


「……考えている時間もあまりなさそうね」


クラリスが言う。


「はい」


エリスは頷いた。


「だから、二手に分かれたいと思います」


全員の視線がエリスへ集まった。


「あの邪龍を相手にする人達と、ゲートを壊す人達に分かれて、同時に攻めます」


「同時に?」


リディアが尋ねる。


「はい。邪龍を倒してからゲートを壊そうとしたら、その間にも魔物が増え続けます」


リディアはすぐに意図を理解した。


「だから邪龍を引きつけている間に、別の人達がゲートを壊すのね」


「はい」


「いいと思うわ」


ルシアンも頷いた。


「俺も賛成だ。あの龍がゲートを守ることを優先してるなら、こっちで引きつければ隙を作れる」


「じゃあ、分かれよう」


エリスは全員を見渡した。


「邪龍の方は、私、お母さん、レオネリア、メルキオラ、セラ、マリン」


クラリスが剣へ手を掛ける。

レオネリアも頷いた。


「分かりました」


メルキオラも杖を握る。


「承知いたしました」


『任せて!』


セラが尻尾を大きく振る。


「私も全力でやるよ!」


マリンも杖を握り締めた。

エリスは続いて、もう一方を見る。


「ゲートの方は、リディアさん、ソフィアさん、スピカさん、ミリアさん、ルシアン、カイルでお願いします」


「分かったわ」


リディアが剣を抜く。

ソフィアも続いた。


「任せて」


スピカは杖を構える。


「私達はゲートの破壊に集中すればいいのね」


「はい。お願いします」


エリスが答える。

ミリアも杖を握り直した。


「出てくる魔物は私達で何とかするわ」


「俺とカイルが後ろから援護する」


ルシアンが言う。


「ああ」


カイルも弓を手にする。

その時、ガルドが自分を指差した。


「……で、俺は?」


一瞬、全員の視線がガルドへ向く。

クラリスが海岸の先を見る。

ゲートから出現した魔物の一部は、すでに岸へ向かって泳いでいる。


「あの魔物達が街へ向かわないように抑えてもらえる?」


「なるほど」


ガルドは大剣を肩へ担いだ。


「俺はこぼれてきた奴らの相手ってわけか」


「お願い」


「任せろ」


ガルドは海岸側へ移動する。

これで、全員の役割が決まった。

邪龍を倒す者達。

ゲートを破壊する者達。

そして、ゲートから溢れた魔物を街へ向かわせない者。

それぞれが自分の武器を構える。

邪龍も何かを察したのか。


「グルルルルル……」


低い唸り声を上げた。

巨大な翼がゆっくりと広がる。

その背後では。

黒いゲートが再び不気味に揺らぎ始めていた。

モニカを襲ったスタンピードを終わらせるため。

エリス達の最後の戦いが、始まろうとしていた。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


邪龍の強固な防御を突破するため、エリスの呼び掛けによってクラリス達、そしてルシアン達が再び集結しました。


邪龍を相手にするのは、エリス、クラリス、レオネリア、メルキオラ、セラ、マリン。

一方、ゲートの破壊には、リディア、ソフィア、スピカ、ミリア、ルシアン、カイルが向かいます。


次回はいよいよ、邪龍との決戦。そして、魔物を送り出し続けるゲートの破壊へ。

モニカを襲ったスタンピードを終わらせるため、エリス達の最後の戦いが始まります。


次回も『魔族の女王が転生したら聖女になっていた』をよろしくお願いいたします。

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次回の更新は、8月18日18時を予定してます

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