表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔族の女王が転生したら聖女になっていた  作者: 白神 エル
第六章:王都への道 ― 新たなる星座の旅路 ―

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
112/115

ゲートを守る邪龍 ― スタンピード終結への最後の壁 ―

いつも『魔族の女王が転生したら聖女になっていた』をお読みいただき、ありがとうございます。


今回は、クラーケンキメラを倒したエリス達が、海上に浮かぶ異様なゲートを発見します。


セントポルでも目にした、魔物を送り出すゲート。

しかし、そこへ向かおうとしたエリス達の前に、新たな脅威が姿を現します。


それでは、第六章の続きをお楽しみください。

クラーケンキメラを倒したエリス達は、しばらくその場から動かなかった。

先ほどまで激しく暴れ回っていた巨大な触手はすでに消え、海岸には再び波の音が戻っている。


「終わった……」


マリンが大きく息を吐いた。


「さすがに疲れたわね」


スピカも杖を下ろす。

対魔結界によって核の位置を隠していたキメラ。

セラですら核を見つけることができず、一時はどうなることかと思った。

それでも、マリンとスピカの合体魔法によってキメラの身体に大きなダメージを与え、対魔結界を乱すことができた。

そして、その一瞬だけ現れた核の位置をセラが見つけ、最後はエリスが破壊した。


「でも、これで少しは楽になるかしら」


ソフィアが剣を収めながら海の方を見る。


「このキメラが一番大きかったものね」


「そうですね」


エリスも頷いた。

だが、スタンピードそのものが終わったわけではない。

遠くからはまだ魔物達の鳴き声が聞こえている。

街では今も騎士や冒険者達が戦っているはずだ。

早く戻って加勢しなければならない。

そう思った時だった。


『……エリス』


セラの声が聞こえた。

先ほどまでとは違う。

何かを警戒するような声だった。


「どうしたの?」


『海に何かある』


「海?」


エリス達が一斉に海を見る。

穏やかとは言えないものの、海面にはいつもと変わらないように波が立っている。

少し離れた場所には、港に停泊している船の姿も見えた。

だが、それ以外に目立つものはない。


「何か見える?」


マリンが目を細める。


「私は何も……」


ソフィアも首を横に振った。

スピカも海を見つめているが、何があるのか分からないようだった。


『もっと沖』


セラが海の一点を見つめる。


『あそこ。変な魔力を感じる』


エリスもその方向へ目を凝らした。

すると――。


「あれ……?」


波の向こう。

海面から僅かに浮かぶように、黒い何かが見えた。

最初は岩かと思った。

しかし違う。

海の上に、不自然な黒い空間が浮かんでいる。

その周囲だけ、景色が僅かに歪んで見えた。

エリスの表情が変わる。


「まさか……」


『エリス、あれ!』


セラも気づいた。

エリスとセラには見覚えがあった。

忘れるはずがない。


「セントポルで見たのと同じ……?」


『うん。あの時のゲートに似てる』


「ゲート?」


マリンが聞き返した。

ソフィアとスピカもエリスを見る。


「うん」


エリスは海上に浮かぶ黒い空間から目を離さないまま答えた。


「セントポルでスタンピードが起きた時にも、ああいうものがあったの」


「そうなの?」


「うん。あそこから次々と魔物が出てきてた」


マリンは初めて見るゲートを見つめた。


「あれから魔物が……」


その時だった。


『動いた!』


セラが声を上げた。

黒い空間が大きく揺れる。

そして、その中から一体の魔物が姿を現した。

海へ落ちると、そのまま岸へ向かって泳ぎ始める。

さらに、もう一体。

続けてもう一体。

次々と魔物がゲートから現れていた。


「本当に出てきた……」


スピカが驚いたように呟く。


「やっぱり、あれです」


エリスは確信した。

セントポルの時と同じ。

あのゲートから魔物が送り込まれている。


「じゃあ、あれを壊せば……」


ソフィアが言う。


「はい」


エリスは大きく頷いた。


「あのゲートを壊せば、新しい魔物が出てこなくなるはずです」


『セントポルでも、ゲートを壊したら魔物が出てこなくなったからね』


セラの言葉にエリスも頷く。


「だったら、あれを壊せばスタンピードを終わらせられるかもしれません」


マリンが海を見る。


「でも、かなり沖にあるよ?」


「大丈夫」


エリスはセラを見る。


「セラ、お願いできる?」


『もちろん!』


セラが元気よく答えた。


「私がセラに乗って行く」


「エリス一人で?」


マリンが心配そうに尋ねる。


「ゲートを壊すだけなら大丈夫だよ。それにセラもいるから」


『任せて!』


セラが自信満々に答える。

エリスはセラの背中へ跨がった。


「エリス、気をつけてね」


「うん」


エリスが答える。


「あれを壊したら、すぐ戻ってくるから」


セラが海へ向かって身体を低くした。

エリスも振り落とされないように姿勢を整える。


『行くよ!』


「お願い!」


セラが砂浜を蹴った。

その瞬間だった。


――ゴゴゴゴゴゴ……。


低い音が響いた。


「え?」


エリスが振り返る。

地面が揺れている。

いや、違う。

海だ。

それまで波が立っているだけだった海面が、突然大きく盛り上がり始めた。


「何!?」


マリンが声を上げる。

エリスもセラの背中から海を見る。

ゲートの手前。

海面が大きく膨れ上がっている。


『エリス!』


セラが叫ぶ。


『何かいる!』


次の瞬間、海面が爆発した。

大量の海水が空高く舞い上がる。


「きゃっ!」


ソフィア達が腕で顔を庇う。

エリスも思わず目を細めた。

そして、舞い上がった海水の向こうから、巨大な何かが姿を現した。


長い首。

巨大な翼。

全身を覆う黒い鱗。

太い四肢。

長い尾。

そして、鋭い牙が並んだ巨大な口。


「……龍?」


エリスが呟いた。

だが、普通の龍とは明らかに違う。

全身から漂う魔力が異様だった。

黒く濁ったような魔力。

見ているだけで身体を押さえつけられるような威圧感がある。

セラの表情も険しくなる。


『……邪龍』


「邪龍?」


『うん。普通の龍じゃないよ』


邪龍は海面から巨体を持ち上げると、エリス達を睨みつけた。

低い唸り声を上げる。


そして――。

ゲートの前から動かない。

エリスはその様子を見て気づいた。


「もしかして……」


マリンも同じことを考えたようだった。


「あいつ、あのゲートを守ってるの?」


「そうみたいね」


スピカが杖を構える。

エリス達がゲートへ向かおうとした途端に現れた。

そして、今もゲートの前に立ちはだかっている。

偶然とは考えにくい。


「だったら……」


エリスはセラの背中から降りた。

剣を抜く。


「あの邪龍を倒さないと、ゲートを壊せそうにありませんね」


邪龍が低く唸った。


「エリス」


ソフィアも剣を抜く。


「私も行くわ」


「お願いします、ソフィアさん」


エリスは剣を構えた。


「まずは、どれくらい強いのか確かめてみます」


『気をつけて。あいつ、かなり強いよ』


「分かってる」


エリスが地面を蹴る。

同時にソフィアも走り出した。

邪龍が二人へ顔を向ける。

口が開いた。

その奥に黒い魔力が集まっていく。


『来るよ!』


セラが叫ぶ。

次の瞬間、邪龍の口から黒い炎が吐き出された。


「ソフィアさん、左右に!」


「ええ!」


二人が左右へ分かれる。

黒い炎が二人の間を通過し、砂浜へ直撃した。

ドォン!

爆発、大量の砂が舞い上がる。

エリスはその中を駆け抜けた。

邪龍の懐へ入る。


「はぁっ!」


剣を両手で握り、邪龍の前脚へ振り下ろした。

ガキィン!


「っ!?」


金属同士が激しくぶつかったような音が響いた。

エリスの剣が弾かれる。

邪龍の鱗には僅かな傷しかついていない。


「硬い!」


反対側からソフィアが斬りつける。


「これなら!」


剣が邪龍の脇腹を捉えた。

だが、

ガキン!


「なっ……!」


ソフィアの剣も弾かれた。


「硬すぎる!」


邪龍が身体を大きく捻る。

長い尾が二人へ迫った。


「ソフィアさん、危ない!」


二人は同時に地面を蹴る。

巨大な尾が砂浜を薙ぎ払った。


「マリン! スピカさん、お願いします!」


「分かった!」


「ええ!」


マリンとスピカが杖を向ける。

二人の前に魔法陣が展開される。


「行くよ!」


「ええ!」


二人の魔法が同時に放たれた。

魔力の奔流が邪龍の胸へ直撃する。

爆発、邪龍の巨体が煙に包まれる。


「どう?」


ソフィアが見つめる。

やがて煙が晴れていく。


「そんな……」


マリンの表情が変わった。

邪龍は立っていた。

ほとんど無傷。

鱗の一部が僅かに焦げている程度だった。


「魔法も効いてないの?」


スピカが驚く。


『違う』


セラが邪龍をじっと見つめていた。


『効いてないんじゃない。防がれてる』


「防がれてる?」


『あの鱗、すごく硬い。それに身体の周りに魔力を纏ってる』


「物理攻撃にも魔法にも強いってこと?」


マリンの表情が険しくなる。


『たぶん』


「だったら!」


エリスが再び走り出した。


「ソフィアさん、同じ場所を狙いましょう!」


「分かったわ!」


二人が左右へ分かれる。

邪龍がエリスへ爪を振るう。

エリスは身体を沈めてかわした。

そのまま先ほど攻撃した前脚へ再び剣を叩き込む。

ガキン!

また弾かれる。


「もう一度!」


二撃目。

三撃目。


同じ場所を狙う。

僅かに鱗へ傷が入った。


「入った!」


だが、それだけだった。

邪龍が前脚を振るう。


「っ!」


エリスが後ろへ跳ぶ。

そこへソフィアが反対側から斬り込む。

しかし、その剣も鱗に阻まれる。


「マリン! スピカさん、同じ場所をお願いします!」


「任せて!」


「分かったわ!」


二人が再び魔法を放つ。

今度はエリス達が攻撃していた前脚へ集中させる。

爆発、邪龍の身体が僅かに揺れた。


「今!」


エリスが飛び込む。

煙の中、同じ場所へ剣を振り下ろす。


ガキィン!


「くっ……!」


先ほどよりは深い傷が入った。

それでも決定的な攻撃には程遠い。

邪龍が大きく咆哮した。


「グオオオオオオオッ!」


空気そのものが震える。


「っ!」


エリス達の動きが止まった。


その瞬間、邪龍が翼を大きく羽ばたかせる。

猛烈な風が巻き起こった。


「きゃあっ!」


マリンとスピカが吹き飛ばされる。


「マリン! スピカさん!」


エリスが振り返る。


「大丈夫!」


マリンが起き上がる。

スピカも杖を支えに立ち上がった。


「私も大丈夫よ」


「よかった……」


邪龍は追ってこない。

その場からほとんど動いていない。


ゲートの前。


そこを守るように立ち続けている。

エリスは息を整えながら邪龍を見つめた。


「やっぱり……」


「どうしたの?」


ソフィアが尋ねる。


「あの邪龍、私達を倒すことが目的じゃないみたいです」


エリスは邪龍の後ろにあるゲートを見る。

今も黒い空間から魔物が現れている。


「ゲートを守ることを優先しているんだと思います」


『うん』


セラも頷く。


『エリス達が離れると追ってこない。でも、ゲートへ近づこうとすると必ず攻撃してくる』


マリンがゲートを見る。


「じゃあ、無視してゲートだけ壊すのは?」


「難しいと思う」


エリスが答える。


「あの邪龍を避けて近づいても、すぐ邪魔されると思う」


それでも、諦めるわけにはいかない。


「もう一度やろう」


エリスが剣を構える。

そしてソフィアとスピカを見る。


「今度は全員で同じ場所を狙ってみませんか?」


ソフィアも剣を握り直す。


「分かったわ」


スピカも杖を構えた。


「やってみましょう」


「マリンもいい?」


「もちろん!」


「行こう!」


エリスとソフィアが先に走る。

邪龍の口から黒い炎が放たれる。


「ソフィアさん!」


「分かってるわ!」


二人が左右へ分かれてかわす。


「マリン! スピカさん、今です!」


「行くよ!」


「ええ!」


マリンとスピカが魔法を放った。

狙いは胸。

二つの魔法が同じ場所へ直撃する。

爆発、そこへソフィアが飛び込む。


「はぁっ!」


胸の鱗へ剣を叩き込む。

ガキン!

続けてエリス。


「これなら!」


全力で剣を振り抜いた。

ガキィン!

鱗に傷が入る。


「もう一度!」


マリンが魔法を放つ。

スピカも続く。

さらにエリス。

ソフィア。


何度も、何度も、同じ場所へ攻撃を重ねる。

少しずつ傷は深くなっている。

だが――


「これだけ攻撃しても……」


ソフィアが息を切らしながら呟く。

邪龍はまだ立っている。

致命傷どころか、まともな傷すら与えられていない。

そして


「グオオオオッ!」


邪龍が身体を大きく振るった。


「危ない!」


エリスが叫ぶ。

巨大な尾が迫る。

エリスとソフィアが飛び退く。

直後、邪龍が翼を広げる。

猛烈な風が四人を襲った。


「きゃあっ!」


全員が大きく後方へ吹き飛ばされた。

エリスは砂浜を転がる。

すぐに剣を地面へ突き立て、身体を止めた。


「みんな、大丈夫!?」


「なんとか!」


マリンが答える。


ソフィアも立ち上がる。


「私は大丈夫よ」


スピカも無事だった。


「私もよ」


「よかったです」


エリスは邪龍を見る。

攻撃は当たっている。

狙いも間違っていない。

それでも


「……硬すぎる」


エリスが呟いた。


『うん』


セラも邪龍を睨んでいる。


『今のままだと、倒すまでかなり時間が掛かるよ』


その間にも、ゲートが揺れた。

また新しい魔物が現れる。


一体。

二体。


次々と海へ落ちていく。


「まずいね……」


マリンもそれを見ていた。


「私達がここで戦ってる間にも、魔物が増えてる」


「うん」


エリスは剣を握ったまま考える。

自分達だけで倒せないとは思わない。

攻撃を続ければ、いつかは防御を突破できるかもしれない。

だが、それでは遅い。

時間を掛ければ掛けるほど、ゲートから新しい魔物が現れ続ける。

その魔物達が街へ向かえば、騎士や冒険者達の負担も増えていく。

このままここで戦い続けていいのか、エリスは邪龍を見る。

そして、その後ろにあるゲートへ視線を移した。

また黒い空間が揺らぐ。

新たな魔物が姿を現す。


「……駄目だ」


エリスが小さく呟いた。


「エリス?」


マリンが振り返る。


「このまま私達だけで戦ってたら、時間が掛かりすぎる」


ソフィアも邪龍を見る。


「確かに、今の攻撃ではあの防御を崩すのは難しそうね」


「そうですね」


エリスは頷いた。

スピカもゲートへ視線を向ける。


「その間にも、あのゲートから魔物が出続けるわ」


「はい」


エリスは少しだけ考えた。


クラリス達。

ルシアン達。


それぞれ別の場所でキメラと戦っている。

こちらがクラーケンキメラを倒したように、向こうもすでに戦いを終えているかもしれない。

もし全員が集まれば。

今よりずっと多くの攻撃を仕掛けることができる。

それだけではない。

それぞれ違った戦い方をする仲間達が揃えば、この邪龍の硬い防御を突破する方法も見つけられるかもしれない。

エリスは決心した。


「……みんなを呼ぼう」


「みんな?」


マリンが尋ねる。

エリスは頷いた。


「お母さん達と、ルシアン達」


そして再び邪龍を見据える。


「全員で、この邪龍を倒そう」

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


クラーケンキメラを倒したエリス達は、海上に浮かぶゲートを発見しました。


セントポルの時と同じように、そこからは今も魔物が送り込まれ続けています。


ゲートを破壊すればスタンピードを終わらせることができる。

そう考えたエリス達でしたが、その前に立ちはだかったのは、圧倒的な防御力を誇る邪龍でした。


何度攻撃を重ねても有効打を与えることができず、エリスはクラリス達とルシアン達を呼ぶことを決断します。


次回、仲間達が再び集結。

邪龍との決戦、そしてモニカを襲ったスタンピードもいよいよ決着へ。


次回も『魔族の女王が転生したら聖女になっていた』をよろしくお願いいたします。

感想や評価、ブックマークなども大変励みになります!


次回の更新は、8月17日18時を予定してます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
https://ncode.syosetu.com/n5658ly/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ