表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔族の女王が転生したら聖女になっていた  作者: 白神 エル
第六章:王都への道 ― 新たなる星座の旅路 ―

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
108/111

海魔の脅威 ― 魔導士の真価、支援が切り拓く勝機 ―

いつも『魔族の女王が転生したら聖女になっていた』をお読みいただき、ありがとうございます。


今回は、港町モニカでのスタンピードの中、クラリス達の前に海洋型の新たなキメラが姿を現します。これまでとは異なる能力を持つ敵に苦戦する一方、メルキオラも魔導士として真価を発揮することになります。


それでは、第六章の続きをお楽しみください。

メルキオラは、スピカが身に着けているブレスレットを目印に転移魔法を発動した。


眩い光が一行を包み込む。


次の瞬間――。


十人は一瞬でモニカの街中へ姿を現した。


その目の前には、魔物と戦っていたスピカがいた。


「えっ!?」


突然、目の前に十人もの人影が現れ、スピカは一瞬思考が止まる。


しかし、その中にリディア、レオネリア、メルキオラの姿を見つけると、すぐに状況を理解した。


(メルキオラさんの転移魔法……。)


だが、それ以上に驚いたことがあった。


つい先ほどまで重傷で倒れていたはずのリディアに、傷らしい傷がどこにも見当たらない。


それだけではない。


背中を深く切り裂かれていたはずの鎧も服も、まるで何事もなかったかのように元通りになっていた。


(そんな……。)


(さっきまで瀕死だったはずなのに……。)


スピカは信じられないものを見るような表情でリディアを見つめた。


だが、今はそんなことを考えている暇はない。


「皆さん!」


スピカはすぐに駆け寄る。


「魔物は港の方から次々と押し寄せています! ソフィアさんは向こうで迎撃中です!」


周囲の状況を手短に説明すると、リディアが前へ出た。


「スピカ、この人が私の話をしていたクラリスさんよ。」


「私が騎士団時代、一番尊敬していた上官なの。」


「初めまして。」


クラリスは穏やかに微笑んだ。


「自己紹介は後にしましょう。」


「まずは街の人達を助けることが先よ。」


全員が頷く。


ルシアンは周囲を素早く見渡しながら口を開いた。


「レオネリア、メルキオラ。」


「キメラが現れた場合、核の位置は把握できるんだったな?」


「はい。」


メルキオラが頷く。


「私達二人とエルシア様……いえ、エリス様の聖獣であるセラも核の位置を把握できます。」


「それなら問題ない。」


ルシアンは短く頷いた。


「戦力を三つに分ける。」


全員の視線がルシアンへ集まる。


「第一班は俺、カイル、レオネリア、ミリア。」


「港側を担当する。」


「第二班はクラリス、ガルド、メルキオラ、リディア。」


「街の中央を頼む。」


リディアはクラリスを見て小さく笑みを浮かべた。


クラリスも微笑み返し、


「久しぶりに一緒に戦いましょう。」


と声を掛ける。


「はい!」


リディアは力強く頷いた。


「第三班はエリス、マリン、ソフィア、スピカ。」


「海岸沿いを担当してくれ。」


「各班とも、通常の魔物はそれぞれで討伐。」


「キメラを発見した場合は、無理に深追いせず通信機で連絡しろ。」


「核の位置が分かれば、各班で十分対応できる。」


「了解!」


全員が力強く返事をする。


ルシアンは剣を抜いた。


「それじゃあ、街を守るぞ!」


その言葉を合図に、三つの班はそれぞれの持ち場へ向かって駆け出した。



クラリス達四人は街の中心部へ向かって駆けていた。

リディアは再会したばかりのクラリスに気を取られていたが、隣を走る大柄な男を見て思わず目を見開く。


「……ガルドさん?」


その一言にガルドが振り向いた。


「お前は……。」


「騎士団で何度かお見掛けしたことがあります。」


リディアがそう言うと、ガルドは小さく頷く。


「ああ。俺も顔は覚えている。」


ガルドもまた、かつては王国騎士団に所属していた。

これで、この場には元騎士が三人揃ったことになる。


「積もる話は後で」


クラリスが前を見据えながら言った。


「まずは街の人達を助けましょう。」


「はい!」


リディアも力強く返事をした。

四人は街の中心部へ到着する。

そこでは住民達が悲鳴を上げながら逃げ惑い、魔物が容赦なく襲い掛かっていた。


「メルキオラ!」


クラリスが叫ぶ。


「はい。」


メルキオラはすぐに魔法を発動する。


「アビスバインド。」


黒い鎖が地面から一斉に伸び、魔物達の身体を絡め取った。


「今です!」


「ええ!」


クラリスとリディアが同時に飛び出す。

クラリスの鋭い剣閃が魔物を一刀両断にする。

リディアも負けじと剣を振るい、拘束された魔物を次々と討ち倒していく。

ガルドは二人の後方を固め、逃げ遅れた住民達を守りながら、討ち漏らした魔物を確実に仕留めていった。

四人の連携は見事だった。

リディアは剣を振るいながら、胸の奥が熱くなるのを感じていた。


(また……。

 またクラリスさんと一緒に戦えている。)


騎士団を離れて長い年月が経った。

それでも、目の前で戦うクラリスの剣筋は、あの頃と何一つ変わっていなかった。

その姿は今でも、自分の憧れそのものだった。

四人の活躍により、街の中心部にいた魔物は次々と討伐されていく。

やがて辺りを見渡しても、大きな魔物の姿はほとんど見当たらなくなった。


「これで一息つけそうね。」


リディアがそう呟いた、その時だった。

メルキオラの表情が一変する。


「……います。」


その一言に三人も動きを止めた。

メルキオラは街の奥へ鋭い視線を向ける。


「普通の魔物ではありません。」


さらに目を閉じ、魔力を探る。

数秒後、静かに口を開いた。


「核の位置も確認しました。」


その言葉だけで、クラリス達は何が現れたのかを悟る。


「……キメラ。」


メルキオラの呟きと同時に、街の奥から巨大な咆哮が響き渡った。

クラリス達の前へ姿を現したのは、これまで見たどのキメラとも違っていた。

無数の赤い脚。

一本一本には吸盤のようなものが並び、その隙間を縫うように、透明な触手がゆらゆらと揺れている。

全体の姿は巨大なタコのようでありながら、透明な触手はまるでクラゲそのものだった。


「……気味が悪いわね。」


クラリスが剣を構えながら呟く。

メルキオラはすぐに魔力探知を展開した。

黄金色の瞳がキメラを見据える。


「核を確認しました。」


全員の視線がメルキオラへ向く。


「核は一つです。体の中心部にあります。」


「一つだけ?」


リディアが少し安堵したように言う。

メルキオラは静かに頷く。


「ええ。ただし――」


一度言葉を切る。


「体が非常に分厚いため、一撃では核まで届きません。」


それだけではない。


(妙です……。)


四重核でもない。

移動核でもない。

あまりにも単純すぎる。


(グリムヴァルが、この程度のキメラを送り込むとは思えません。)


胸騒ぎがした。

何かある。

そう確信していた。


「気を付けてください。何か隠された能力があるはずです。」


その忠告を聞くと、クラリスとリディアは互いに頷き合った。


「行くわよ!」


「はい!」


二人はほぼ同時に地面を蹴る。

一気に間合いを詰め、左右から剣を振り抜いた。


ザシュッ!


確かに斬れた。

そう思った。

しかし。


「……っ!?」


クラリスは目を見開く。

手応えがない。

まるで水を斬ったようだった。

リディアも同じだった。


「何、この感触……!」


切り裂かれた身体は形を崩したかと思うと、すぐに元へ戻っていく。


「物理攻撃が……効いてない!?」


その瞬間だった。

透明な触手が音もなく二人へ伸びる。


「来る!」


クラリスは反射的に剣を振る。

触手を真っ二つに切り裂いた――はずだった。


次の瞬間。

切れた触手が液体のように形を変え、そのままクラリスの左腕へ絡み付く。


「なっ……!」


バチッ!!

青白い電流が走った。


「くっ!」


腕が痺れる。

力が入らない。

指先が思うように動かず、剣を握る力まで奪われていく。


「クラリスさん!」


リディアが助けようと踏み込んだ。

しかし、今度は彼女の腕にも透明な触手が巻き付く。


「しまっ――」


同じように電流が走る。


「うぁっ!」


腕が完全に痺れ、思うように動かせない。


「一旦退いて!」


ガルドの声で二人は後方へ跳ぶ。

キメラは追撃こそしてこなかったものの、透明な触手を不気味に揺らしている。

クラリスは左腕を押さえながらメルキオラの元へ戻った。


「腕が……。」


「私もです……。」


リディアも同じだった。

メルキオラは二人の腕へ手をかざす。


「なるほど……。」


静かに呟く。


「これは状態異常です。」


「やっぱり。」


クラリスが苦笑する。


「しかも普通の麻痺ではありません。魔力を媒介に侵食する特殊な麻痺です。」


メルキオラはすぐに杖を掲げた。


「――アビスシェル。」


黒紫色の魔法陣が三人の足元へ広がる。

光が身体を包み込む。


「これで麻痺や毒などの状態異常への耐性が大幅に上がります。」


腕の痺れも少しずつ引いていく。

クラリスは拳を握った。


「動くわ。」


リディアも何度か手を開閉する。


「大丈夫です!」


しかしクラリスは首を横に振った。


「問題はそこじゃない。」


剣を構え直す。


「あいつには物理攻撃がほとんど効かない。

 まるで水を斬っているみたいだった。」


メルキオラは頷く。


「ならば――」


今度は三人の剣へ杖を向ける。


「――アビスソード。」


淡い紫黒色の魔法陣が剣を包み込む。

すると刃が静かに輝き始めた。


「その剣には魔力を付与しました。

 今の剣は物理だけではありません。

 魔法の刃としても機能します。」


クラリスは剣を見つめる。

淡い紫色の光が静かに刃を覆っていた。


「これなら……。」


メルキオラは真剣な表情で言う。


「今度は斬れます。

 ただし油断は禁物です。

 あれはまだ、本当の能力を見せていません。」


クラリスは静かに笑った。


「十分よ。

 ありがとう、メルキオラ。」


リディアも深く頭を下げる。


「ありがとうございます!」


ガルドは大剣を肩へ担ぐ。


「今度は俺も前へ出る。」


三人は再びキメラへ向かって駆け出した。

その背中を見送りながら、メルキオラは小さく呟く。


「……グリムヴァル。

 あなたがこれだけで終わる相手を作るとは思えません。」


その予感は、間もなく現実となろうとしていた。



最後までお読みいただき、ありがとうございました。


今回は、海洋型キメラとの戦いと、メルキオラの支援魔法による共闘を描きました。物理攻撃だけでは通用しない相手に対し、仲間同士が互いを支え合いながら戦う姿を描いています。


そして、この戦いはまだ終わりではありません。海洋型キメラに隠された能力とは何なのか。そして、クラリス達はこの強敵を討ち取ることができるのか。


次回も『魔族の女王が転生したら聖女になっていた』をよろしくお願いいたします。

感想や評価、ブックマークなども大変励みになります!


次回の更新は、8月11日18時を予定してます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
https://ncode.syosetu.com/n5658ly/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ