第248話 魔王アモン
「どうしたの?!何があったのプセウドテイ?」
テントの幕を開け人が入って来た。
「おぉ、メンダキオルム、何でもないのだ。アスケル山脈の向こう側から見えた客人と行き違いがあっただけだ」
メンダキオルムと呼ばれた女性は、土の翼と牛の角を持ち瞳の色は金色の魔人だった。
「おぉ、戻って来たのね?早かったわね。どうだった、山脈の向こうは穀物があったのかしら?」
「それはこれから話そう。さあ、お掛けください。エリアス陛下」
打って変わった態度になった、指揮官プセウドテイさんとメンダキオルムと呼ばれた女性と俺達は向き合っている。
「先程は申し訳なかった。取引に値する者なのか、あなたの実力を試そうと思ってやったことだ。悪く思わないでください…」
いや、そういう風には見えなかったけど…。
「どういうことだ、プセウドテイ?」
プセウドテイさんは簡単にメンダキオルムさんに経緯を話した。
そして先ほどの威圧も俺が出したものだと聞き驚いていた。
「我々と貿易をしたいと?しかし、取引できるようなものは無いが?」
「それがあります。プセウドテイ殿」
俺はそう言うと牛、馬、羊、豚、ヤギを分けてほしいこと。
代わりに農業、酪農や林業を教えることを説明した。
家畜や人の移動はこちらで移動ができ、火竜の素材を売り、代わりに穀物やお金を得ることが出来ることを話した。
「では、我々は自給自足の手段を学ぶことができ、当面は火竜の素材を売買して生活が出来るということか?」
「そう言うことになります」
「それは助かる。しかしそんなことが出来るのか?数か月掛かる道のりを、僅かな時間で移動できるとは信じられん」
「ではお見せいたしましょう。外に出ませんか?」
「それなら、お願いしよう」
そう言うと俺達はテントの外に出た。
周りには大勢の戦士がおり、何が始まるのかと囁く者もいる。
「では見ていてください」
俺はそう言うと100mくらい先を『空間結合』で繋げた。
目の前にドアくらいの空間が開き、1歩足を踏み出すと100m先に俺の片足が出ているのが見える。
「おぉ、なんという能力だ。この能力があれば移動にはもう困らない。我が魔王軍に欲しいところだ」
「ありがとうございます。これを使いみなさんを新しい魔族領に、お連れすることが出来ます」
「それは有難い。しかし私の一存では決めることはできん。まずは我が主君アモン王に会って頂いてからになる」
「それはそうですね、わかりました。お会い致しましょう」
いくら遊牧民と言っても5万人規模になれば、テント生活でも街のように見える。
中央奥にひときわ大きなテントが立っている。
俺とオルガさん、プセウドテイさんとメンダキオルムさんで一般の人の中を通りテントに向かって行く。
「アモン王、プセウドテイです。魔王軍第一遠征隊のバジムが戻って参りました」
「おぉ、プセウドテイか?!中に入れ!!」
テントの奥から野太い声が聞こえ俺達はテントの中に案内された。
中にはフクロウ頭でオオカミの肉体と、ヘビの尾を持つ大柄な男が椅子に据わっていた。
「プセウドテイ、その男か?先ほどの威圧の主は」
「さようでございます、アモン王。こちらはアスケル山脈を越えたセトラー国の国王エリアス陛下です」
「ほう、山脈の向こうに人が住める土地があったのか」
「それについては指揮官のバジムが説明致します」
そしてまた同じ説明が始まる。
山脈の向こうには豊かな土地があり、ドラゴンを倒し土地を手に入れたこと。
すでに他の土地には国があり、ドラゴンの素材の売買で穀物を手に入れることができること。
今後は農業、酪農、林業で、国を興すことが出来ることなどだ。
エリアス陛下のスキルを使えば、住民や家畜の移動は可能だと。
「それは助かる。ここまでおいで頂いておつかれでしょう。あちらのテントでお休みください」
そうアモン王に促され、俺達は案内係りに誘導されテントを移動した。
「プセウドテイ、随分と平和的なやり方を選んだのだな」
そうアモン王は言った。




