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第237話 浄化

「「はあ、はあ、はあ、」」

 もう、どのくらい魔物を倒したのだろう。

 疲労が限界に来ている。


 私は聖闘士メイド、リリーズ。

 こんなことで音(ね)を上げるなんて。


 後《うしろ》で歓声が上がる。

 振り返ると騎士団が盛り返し、石猿と戦い善戦している。

 もうこれで大丈夫だわ。

 私の役目は終わった。


 立っているのも辛くなり、座り込んでしまった。


 これでビッチェ王女様を、お守りすることが出来たわ。




 するとその時だった!!


〈〈〈〈〈 ブオ~~~ン!! 〉〉〉〉〉


 物凄い雄たけびが聞こえた。

 見ると他の茶色の石猿とは違う、一際大きな黒い毛の石猿がいる。

 ボス猿ね!

 手下をやられて怒っているみたい。


 それに騎士団員が向かって行く!!

 あっと言う間に吹き飛ばされ、手足が変な方向に曲がっている。

 

 そこにビッチェ王女様が現れ、1人1人を回復魔法で治していく。


 回復した団員は涙を流し、大声を上げながらボス猿に向かって行く。

 感謝に絶えないのね。

 そしてまた吹き飛ばされ…。

 そしてビッチェ王女様が現れ、1人1人を回復魔法で…。

 首があんな方向に曲がって…。


 団員達は再び、涙を流しながらボス猿に向かって行く!!

 あぁ、なんと崇高な…。




 こうしてはいられない。

 騎士団の心意気は、この目で確かに見たわ。

 負けてはいられない。

 私達はビッチェ王女様の使徒、聖闘士メイド双子のリリーズだから!!



 剣を支えに立ちあがり、私達は前に進む。

 ボス猿が私に気づき、威嚇をする!!


 負けない!!


 私達は剣を横に振る!!

 ボス猿は丸太の様な腕を振るってくる。


 私はそれを避け、すれ違いざまに脇を切る!!

〈〈〈〈〈 ズァッ!! 〉〉〉〉〉

 皮膚が厚いなら、薄いところを切れば良い。


 そして思った。

 皮膚が厚くても人間と構造が同じなら…。


 その時、手の力が抜け剣を取り落としてしまった。


 カラ~ン。


 でもまだ戦える。

 この拳があるじゃない。

 私は最後の力を振り絞り殴りかかった。

 

 「「こめかみ!!

 「「目!!

 「「鼻!!

 「「耳!!

 「「喉!!

 「「鳩尾!!


 私達は夢中で急所に殴り掛かった!!


 バスッ!!ドスッ!!バスッ!!ドスッ!!バスッ!!ドスッ!!

   バスッ!!ドスッ!!バスッ!!ドスッ!!バスッ!!ドスッ!!

    バスッ!!ドスッ!!バスッ!!ドスッ!!バスッ!!ドスッ!!

  バスッ!!ドスッ!!バスッ!!ドスッ!!バスッ!!ドスッ!!


 私達はひたすら叩く、殴る、蹴る。

 これが今、出来る精いっぱいの攻撃だった。


 すると攻撃が早くなり威力が増し、目に見えないくらいの高速になっていく。


「「あちゃ、ちゃ、ちゃ、ちゃっ!!」」

「「あた、た、た、た、た、た、た、た、たっ、あちゃーっ!!」」



 そして私達は攻撃の手を止めた。


「「おまえはもう、……」」


 つい、無意識になにかの言葉が出てきそうになった。

 すると突然、ボス猿の体が変形して爆発したのだった。



 



「はあ、はあ、はあ、」

 いつの間にか私達2人はmerging(合併)が解け、2人に戻り横になっていた。

 もう起き上がることもできない。


「大丈夫?2人供」

 横たわり顔を上げるとそこには、ビッチェ王女様が居た。

 私達は慌てて起き上がろうとした。


「そのままで良いから。2人共よくやったわ。あなた達のおかげで助かったわ」

 そして私達2人の髪の毛を撫でてくださった。

 とても幸せな時間だった。


 しばらく休み私達は立ち上がる。

 そして森の奥に進んで行く。





「ねえ、ミリアちゃん。どうしてこんな街よりの森に強い魔物が居るの」

 私は倒した石猿をミリアちゃんの、ストレージに収納しながら聞いた。


『う~ん、ビッチェそれは前に恐竜の世界の話をしたわよね』

「えぇ、背中合わせにたくさんの世界があって、恐竜の世界は弱い者が強い者の犠牲になる、実力の違いがそのまま結果にでる弱肉強食の世界だったわよね」



『その通りよ。だから森も同じなのでは』

「どういうこと?」

『森から次元の綻びができて、瘴気(しょうき)が集まり魔物になる。その魔物も戦い弱いものは淘汰され、強いものが生き残る。だから強い魔物が残っているのよ』

「じゃあ、次元の綻びができて時間が経過した森は、強い上位の魔物が多いことになるわ」


『そうなるわね』

「それなら、これから討伐が大変になるのでは?」

『ならないわよ、だって今度は森ごと吹っ飛ばせばいいんだから』

「そんな、大雑把な!!」

『私の魔法ならある程度のところまで近づけば、綻びの場所がわかるから。塞いで行けば良いのよ』

「そうするしかないわね。今回のことで騎士団は足手まといにしか、ならないことがわかったわ」


『それにリンリン、ランランが居れば十分よ』

「あの2人も使徒になったの?」

『えぇ、正確にはあなたのだけどね』

「どういうこと?」

『あの2人は、あなたを信仰しているのよ。だから私ではなく、あなたの使徒なの』

「どう違うのかしら?」

『ビッチェは私から、能力の恩恵がある。でもあの2人は、あなたからもらうから、あなた以下の能力しか身に付かない』

「そ、そんな」


『でもそれでも十分よ。だってボス猿を倒せるくらいだもの。人間を辞めているわ』

「そ、そうね、それだけでも十分かも…」


『あぁ、待って、見つかったわよ』

「見つかったて何が?」

『次元の綻びよ。魔力を周りに飛ばしながら、移動していたの。そして反応が返ってこない場所が綻びがあるところだから。この奥ね!!』

 そう言いながら私達は、更に森の奥に進む。


 その間、魔物に襲われたが弱い魔物ばかりで騎士団員で十分だった。




 そして遂にそれは森の奥に合った。

 空間が裂け、そこから瘴気《しょうき》が出てきている。


「ビッチェ王女様、これは?」

 リンリンが聞いてくる。



「これが次元の綻びよ。ここから瘴気《しょうき》が出てきて、魔物になるの」

「ここから瘴気《しょうき》が…」

「そしてここを塞いでしまえば、もう魔物は現れないわ。見ていて!!」


 私しか見えないミリアちゃんに、目で合図をしてた。

 騎士団員も固唾《たたず》を呑んでいる。



「我を存かすは万物の理。研磨されし孤高の光、真の覇者となりて大地を照らす!」


〈〈〈〈〈 Vanish(バニッシュ) 〉〉〉〉〉


 まばゆいばかりの光が辺りを照らす。

 あまりの眩しさに騎士団員達が目を伏せる。

 しばらくして光が収まると、空間の裂け目は無くなっていた。


「遂にビッチェ王女様、成し遂げましたね」

 ランランが嬉しそうに言う。




『後は森の浄化をして終わりね』

 ミリアちゃんがそう言うと、詠唱を始めた。


「二十二の橋梁、六十六の冠帯、今ここに交わる。孤高の光となりて大地を照らせ」


〈〈〈〈〈 Holy purification(ホーリー ピュアリフィケイション)〉〉〉〉〉


 詠唱と共にミリアちゃんを中心に、周りに浄化魔法が広がって行く。

 どんよりと垂れこんでいた空気が晴れて行く。

 傍から見たら私を中心に浄化しているように見えただろう。


 晴れ渡る綺麗な空が見えるようになった。

「おぉ、やった~!!」

「凄いぞ!!」

 騎士団員達が口々に叫ぶ。


「聖女様」

 誰かがポツリと言う。

 そして木霊のように波紋が広がぅていく。

  「聖女様」「聖女様」「聖女様」「聖女様」「聖女様」「聖女様」

 「聖女様」「聖女様」「聖女様」「聖女様」「聖女様」「聖女様」「聖女様」

  「聖女様」「聖女様」「聖女様」「聖女様」「聖女様」「聖女様」「聖女様」

    「聖女様」「聖女様」「聖女様」「聖女様」「聖女様」「聖女様」


 誰もが両手を胸の前で組み跪く。 

 生き残った騎士団員と神官達。

 その中には勿論、騎士団長アーガス・リベラもいた。




 この世界で初めて瘴気《しょうき》の森を浄化した、尊い瞬間に彼らは立ち会ったのだった。


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