第238話 後処理
私達はアウルの森の瘴気を浄化し帰路についた。
王都に報告するため騎馬団員を数人、先に戻らせておいた。
王都に差し掛かると、たくさんの人々が出迎えに出ていた。
先に知らせに戻った騎士団員が、結果を国王に知らせてくれていたのだ。
門をくぐりたくさんの歓声の中を進む。
先頭と後方を騎士団に守られ群衆の中を、神官6人と私達を乗せた馬車3台は進んで行く。
「聖女様~!!」「聖女様~!!」「聖女様~万歳!!」「聖女様~!!」
「聖女様~!!」「聖女様~万歳!!」「聖女様~!!」「聖女様~!!」
「聖女様~!!」「聖女様~!!」「聖女様~!!」「聖女様~万歳!!」
「聖女様~万歳!!」「聖女様~!!」「聖女様~!!」「聖女様~!!」
「聖女様~!!」「聖女様~万歳!!」「聖女様~!!」
騎士団員は誇らしげに胸を張り、城に向かう道を進んでいる。
3台の馬車に載る私やリンリン、ランラン、神官達は馬車の窓を開けて手を振りながら群衆に応えている。
いままでどれほど、この日を待ちわびていたのだろう。
群衆は歓喜に包まれている。
今まで食べるものもなく、このままでは死を待つだけだったのに。
森の瘴気を浄化できるものが現れたのだ。
ここにきて希望が見えてきた。
喜ばない訳はない。
城に入り私達はそのまま、謁見の間に向かう。
私がそれを望んだのだ。
王都に着いたら、国王と謁見がしたいと。
私達は国王が来るのを待つ。
「サバイア国王様、おな~り~!!」
ドンッ、ドンッ、ドンッ、
どこからか太鼓のような音がする…。
国王が現れ王座に座る。
「面を上げい、ビッチェ王女。この度はよくやったの」
その隣にはガストン宰相もいる。
今回は最少人数で謁見したいと言ってあり、両脇に居る家臣も少ない。
「はい、これも騎士団の皆様と神官様の働きによるものです」
「うむ、しかしそこに控えている神官とメイドはなんだ?」
謁見の間には私の他にリンリン、ランラン。
騎士団長アーガス・リベラ。
神官6人が私の後ろに控えていた。
「はい神官は証言をして頂く為です。あなた達は見習神官ですか?」
6人居る神官の内、年長者の1人がそれに答える。
「はい、間違いございません」
「どの程度の魔力ですか?」
「Holy Arrowが2発撃てれば良い方でしょう」
「では、他の方はそれよりも…」
「はい、1発が限界の者もおります」
「では討伐参加については、なんと言われましたか?」
「はい、ロターリ司祭様からは難易度の低い魔物討伐だから、ただ着いて行けば良いと。騎士団が対応してくれるから、神官は名目上の参加だと聞いておりました」
「よかったわね、生きて帰れて」
「これも聖女…、いいえビッチェ王女様のおかげです。あの時、助けて頂かなければ、ここにはおりませんでした」
「どういうことだ?」
「今後の討伐隊の編成費用は、教会側が負担すると約束をしております。きっと今までのように甘い汁を吸えないので、参加すれば良いと思ったのでしょう」
そう、彼らは何度も死にかけた人達だ。
聖魔法1~2回しか打てない神官が無事なわけがない。
その都度、ビッチェは曲がった手足や破裂した内臓を治して復活させていた。
石猿が打撃系で良かった。
これが切り刻むタイプの敵なら回復は無理だったと思う。
そうビッチェは思っていた。
実際はどちらも普通は無理なのだが…。
「ではその2人のメイドについて話してくれ」
「はい、今回の石猿のボスを倒したのは彼女達です」
「な、なんだと?!本当か」
「本当です。ねえあなた達?」
私は後ろを振り向き神官達や騎士団長を見た。
「えぇ、本当です…」
「彼女達が光ったかと思うと…」
「2人が1人になって…」
「空中を鳥みたいに飛び回って…」
「あちゃ、ちゃ、て言いながら、ボス猿を素手で倒したんです」
「な、なにを言っているんだ、彼らは?!」
「本当のことです国王様」
「どういうことだ?」
「では素材の買取をお願いしたいので、その時に確認いただけませんか?」
「わ、わかった」
「国王様、なりません!!」
隣に立っていたガストン宰相が、口を挟む。
「なぜだ、ガストン?」
「素材の買取は解体場になります。国王様がそのようなところに行かれては…」
「ガストン、この城内で私が行けないところがあるのか」
「いえ、そんなことはございませんが」
「それならいいではないか」
「分かりました、国王様がそうおっしゃるなら」
「だがビッチェ王女よ、その素材はどこにあるのだ?」
「ここです!」
私は首からかけているポーチを叩いて見せた。
「ほう、マジック・バッグか、いったいどこで手に入れたのだ?」
「秘密です」
そう私は言い、ごまかした。
話はまとまり私達は、神官達や騎士団長と別れ謁見の間を出た。
そして廊下を移動していく。
ガストン宰相、国王、私とリンリン、ランラン。
その前後を警備の騎士4人が守りながら歩く。
王様て、面倒だな。
城内を歩くにも警備が必要だなんて。
だからお父様は、こんな面倒な立場になりたくないのかしら?
でもならないと、死んじゃうんだよ。
私達…。
しばらく歩くと大きな扉がある部屋の前に着いた。
騎士がドアを開け、私達は中に入る。
ここが解体場か?
なんだか生臭い匂いがする。
「こ、これはガストン宰相、それにサバイア国王まで、どうしてこんなところに…」
中に入るとそこには50代のちょっと頭の薄くなった男性が居た。
「オリゴ、解体を頼む」
「解体でしょうか?ガストン宰相」
「あぁ、そうだ」
「では素材はどこに?」
「ここです!」
私は1歩前に出てポーチから出す振りをして、ストレージからボス猿を出した。
ストレージはミリアちゃんの能力だ。
でもミリアちゃんの物に手を出さなければ、私も使えるようにしてもらっていた。
グチャ!!
「うっ!」
「これは酷い!!」
確かに酷かった。
これを人がやったのかと、思えるくらいに。
ボス猿の胸から上は吹き飛び、頭すらなくなっていた。
そして胸からは拳大の大きな魔石が見えている。
「これはいったいどうやって?切ったと言うより、中から爆発したような…」
解体場のオリゴさんが何やら言っている。
ストレージにも驚いたようだが、ボス猿には更に驚いているようだった。
「これは本当にそこにいる、双子の娘がやったことなのかね?」
「ええ、そうです」
ガストン宰相が聞いてくる。
それはそうでしょうね。
私だってこの目で見なければ、信じられないもの。
「全部出してもいいでしょうか?」
「全部?」
「えぇ、騎士団の人達が倒した分も、持っていますから」
「そうなのか、では出しておくれ。いいだろうオリゴ」
「勿論です、空いているところに出してください」
私は言われた通りに、空いているところに石猿を出していった。
10匹、20匹、30匹、40匹、52匹。
私が石猿を出していくと国王様やガストン宰相、オリゴさんの顔が驚きに変って行く。
「これはどうしたことだ、ビッチェ王女」
「国王様、石猿52匹です」
「見ればわかる、どうしたのだと言っておるのだ?」
?何を言いたいのだろう?
「みんなで倒したものを持ってきたのです」
「なぜそんなに入るのだ?!」
「は?」
「普通、マジック・バッグは1m四方入るのが一般的だ。それでも馬車1台入れば国宝級だぞ?それをどうやって手に入れたのだね?!」
「それは、我が家の家宝です」
「そんなことがあるか!おまえは私の孫だ。そんなマジック・バッグを与えた覚えはない!!」
だ、駄目だったか?
やっぱり身内には、このネタは駄目ね。
あれ?
なんだか考え方が、ミリアちゃんみたいになってきている?
ビッチェは知らなかった。
使徒になると言う事は、主の性格に感化されるということを。
「これは聖女の力です」
「聖女の?!」
「はい国王様、そしてメイドの2人は私の使徒になりました」
「使徒だと?」
「はい、聖女に使える者です」
「ではビッチェ王女は聖女となり、メイドの2人は使徒になったと言う事か」
「そうです!」
「その力を手に入れ、これから王女はどうしたいのだ」
「できれば別のお部屋でお話がしたいのですが国王様」
「わ、わかった。私の書斎に来なさい」
「はい、ありがとうございます。それから石猿の素材を売ったお金は、今回討伐の参加者全員に均等に分け与えてください」
「な、なんと全額か?!」
「はいそうです、ガストン宰相」
「どれほどの金額になるのか、分かっているのかね?」
「はい、(わかりません。王女ですから相場なんて)」
「魔石だけでも大きく、高額になる。それに石猿の毛は軽くて丈夫だ。だから編み込めば軽くて丈夫な防具になる。そして皮膚も同じで防具や盾の素材になるんだぞ」
「そうですか、でもお金より団員や神官の方に頑張った分、お金で返してあげてください」
そして国王の書斎に私達は向かった。




