第236話 騎士団の心構え
「「 ハァッ!! 」」
体が軽い。
これがmerging魔法の効果なの?!
私達双子は普段から相手の考えていることが、分かるような気がしていた。
でも1つになると、こんな風になるなんて。
まるで失っていた半身を取り戻したみたい。
1つになった私達は、円陣の外側に向かう。
キィー!!キィー!!キィー!! キィー!!キィー!!キィー!!
キィー!!キィー!!キィー!!キィー!! キィー!!キィー!!
キィー!!キィー!!キィー!!キィー!! キィー!!キィー!!
キィー!!キィー!!キィー!! キィー!!キィー!!キィー!!
キィー!!キィー!!キィー!! キィー!!キィー!!キィー!!
キィー!!キィー!!キィー!! キィー!!キィー!!
石猿達が騒ぎ立てる。
うるさい猿め!!
私達は石猿の群れを飛びこえ後ろ側に回り、剣を上に構えただ振り下ろす。
そして下した剣を切り上げる。
この2つの動きだけだ。
剣もmergingの効果なのか、一回り大きくなり白く光っている。
これは魔法剣。
魔法の使えない私達でも分かる。
ビッチェ王女様の使徒だけが持てる、聖魔法を宿した剣。
こんなことがおこるなんて。
石猿は力が強く硬い毛に覆われておる。
だがそれより早く動け、硬い体毛が切れる今なら負けることは無い。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
★ミリアの思惑
ほう~!!
リリーズは凄いわね。
空中に飛び上りながら、捕まらない様に闘っている。
魔物は所詮、魔物よ。
剣の駆け引きなんてないから、それを圧倒できる力があれば良いのよ。
「ミリアちゃん、リンリン、ランランになにが起こったの?」
『2人にmerging魔法を使ったの』
「merging魔法?」
『2人の力を1つにして更に魔力で高める。双子だから出来た魔法よ』
「凄い動きね、信じられないわ」
『だから早く体制を立て直して、援護してやらないとね』
「えっ?!どう言うこと?」
『だってあんな動きが、いつまで出来ると思うのよ』
見ると一体化したリンリン、ランランは飛び上り空中を舞い、踊るように剣を振るっている。
確かに人間業ではない。
『まずは騎士団員を回復させてあげないとね』
「わかったわ、ミリアちゃんお願い」
『がってん承知の助!!』
ミリアちゃんが、わからないことを言いながら呪文を詠唱する。
〈〈〈〈〈|Medical examination〉〉〉〉〉
左肩にいるミリアちゃんの体が眩しく輝き、私を中心に光の輪が辺りに広がる。
円陣の中心から外側に向かって回復魔法が掛かる。
「おぉ、治った!」
「あれだけの傷が…」
「生きてる、俺は生きているぞ!!」
「ビッチェ王女様の回復魔法だ!!」
私は声を限りにして叫ぶ。
「みなさん!!聞いてください。魔物はまだ討伐されておりません」
落胆の声が上がる…。
「みなさんの前を見てください!!あなた達を守るため、聖闘士がまだ戦っているではありませんか?!」
そこには風のように舞い石猿達に切りかかる、金色の髪を持つ少女がいた。
しかし疲れが出ているのか、動きが段々と散漫になってきている。
このままでは…。
「あなた達は名誉ある騎士団員です。誇りを持ちなさい。前を向きなさい。そして戦いなさい!!」
〈〈〈〈〈 Over All 〉〉〉〉〉
範囲効果内にいる騎士団員の全ての能力が上昇する。
「おぉ~!!これは」
「力がみなぎる!!」
〈〈〈〈〈 Crusad 〉〉〉〉〉
支援系補助魔法を唱える!!
士気を高め、戦闘能力を向上させた!!
「石猿はもう半分も残っておりません。騎士団なら必ず勝てますから!!」
「魔物は所詮、魔物です。動きは単調です。数人で1頭に当たり倒していきなさい」
「そしてあなた達が死なない限り、首が飛ばない限り、私が何度でも治してさしあげましょう!!」
「私は大容量のマジック・バッグを持っています。倒した魔物は持ち帰り、働きに応じて売った報酬を分け与えましょう!!」
〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈 おぉ~~!! 〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉
分け与える話をした途端、雄たけびが上がった!!
そして補助魔法を受け気持ちが高揚したのか、騎士団員達は石猿に数人で固まり向かって行く。
「あなたはどうするの?」
私は座り込んでいる、騎士団長アーガスを見て行った。
「このまま腐ったまま終わるの?それともここからやり直す?」
「そ、それは…」
騎士団長アーガスが下を向く。
「昨日は駄目でも、今日から違う自分に生まれ変われるのよ。体は汚れても、心が汚れなければ気高く生きているわ!!」
「でも俺は…」
騎士団長アーガスが卑屈な声を出す。
「大丈夫よ、いつでもやり直せるから。さあ、立ち上がり剣を取りなさい」
私はアーガスを促す。
「こんなでもやり直せるでしょうか?」
「もちろんですよ、アーガス騎士団長」
「わ、わかりました。行きます。ここで逃げたらまた同じです」
「俺達が傷ついたら、回復魔法で治して頂けるのですよね?」
「勿論です、アーガス騎士団長」
「それなら行きます。あぁ、やってやる。俺達は腐ったミカンじゃねえ~!!」
「いくぞ!!」
アーガス騎士団長は、雄たけびをあげて石猿に向かって行った。
それに続く騎士団員も強かった。
「王女様、お願いします」
「はい、分かりました」
騎士団員が怪我をする度に、騎士団長アーガスが傷つく度に、私は回復魔法で治していく。
何度も、何度も私は治していく…。
「お、王女様。も、もう許してください…」
「駄目よアーガス騎士団長。あなた達が傷ついたら、回復魔法で治してあげると約束したでしょう?」
「王女様、お願いです。もう許してください!!」
騎士団長アーガスや騎士団員が泣きながら私に乞う。
「いいえ、あなた達との約束は絶対です。必ず治して差し上げますから」
そう、腕や足が折れても…。
内臓が破裂しても、心肺停止でも、たとえ肉片になっても必ず治して戦わせてあげるわ。
俺は名も無い騎士団員の1人だ。
アーガス騎士団長は凄い!!
何度も石猿に立ち向かい、時には生死の境目を彷徨うほどの怪我を負う。
しかしその度にビッチェ王女様の、回復魔法で治して頂き石猿に向かって行く。
治ったのが嬉しいのか、目に大粒の涙を溜めながら何かを叫んでいる!!
そしてその意味が、団員である俺達にもやっとわかった。
石猿と戦い傷つき瀕死の怪我をする。
その度にビッチェ王女様に治して頂き、また戦いに向かう。
だが瀕死になる寸前の記憶は消えない。
怪我を治してもらい、立ち上がれば上がるほど瀕死の記憶は増していく。
だから怪我を、傷を負わないような戦い方を連携して工夫するしかなかった。
「いいか、やられるなよ!やられたらまた、あの恐ろしい回復が待っているんだ!」
アーガス騎士団長を筆頭にして、石猿をどんどん倒していく。
★ビッチェ王女の思惑
凄いわ!ミリアちゃん見て!
騎士団が石猿を、どんどん討伐していく。
驚くべき進歩だわ!!
死ななければ回復魔法で治療し、何度でも立ち上がり経験を積める。
そして負傷も少なくなって行くわ。
やはり実践に勝る経験はない、と言うことかしら。
喜ぶビッチェ王女を見てミリアは思った。
きっとそれは、違う原因だと思うよビッチェ…。
後に鉄壁の騎士団、と呼ばれるチームの誕生であった。
そして彼らは連携して魔物を倒すのがとてもうまかった。
怪我を極端に恐れ、用心に用心を重ねる、そんな騎士団だったとか。




