第235話 聖闘士メイド誕生
「私の言う通りに言ってね。風の魔法でみんなに声が届くようにするから」
「わかったわ」
私はミリアちゃんに、そう言うと頷いて見せた。
妖精のミリアちゃんが、なにか魔法を使ったのが分かった。
『行くわよ、良いわね』
「行くわよ、良いわね」
「そこは、真似しなくて良いのよ。いい、ここからよ」
焦っていたことに気づいた私は頷いた。
『私は第一王女ビッチェ・ディ・サバイアです!』
「私は第一王女ビッチェ・ディ・サバイアです!」
私はミリアちゃんの、言う通りに真似をした。
「指揮官は役に立ちません。代わりに私が指揮権を執行致します」
「まず、歩兵は盾と盾を重ね合わせ円陣を組んでください。さあ早く!」
兵が動こうとしない。
みんな気が動転しており、戦闘経験の無い王女の言うことなど聞いてくれない。
『駄目ね。ビッチェ、魔力放出でみんなの目を覚ましてあげるといいわ』
「でも、そんなことをしたら…」
『いいから、見てなさい!!』
〈〈〈〈〈 ズウゥン~~!!! 〉〉〉〉〉
肩に乗っているミリアちゃんから、ものすごい魔力が放出される。
「わっ?!」
「な、なんだ?!これは!!」
周りの騎士団員が、よろけている。
だが石猿達も同じで、よろけたり座り込んでいる。
「もう一度言うわ、今がチャンスよ!!盾と盾を重ね合わせ円陣を組んで!!」
歩兵が盾をかざし円陣を組み始める。
今度は言うことを聞いてくれたわ。
「弓兵は内側から、神官は更にその内側から攻撃の用意を!!」
ザッ!!ザッ!!ザッ!!ザッ!!ザッ!!
ザッ!!ザッ!!ザッ!!ザッ!!ザッ!!ザッ!!
ザッ!!ザッ!!ザッ!!ザッ!!ザッ!!ザッ!!
騎士団員や神官が言われた通りの円陣を組んだ。
「これから、どうするのミリアちゃん」
『う~ん。どうしよう?実は困っているのよ』
「どうしたの?」
『実は私は最大魔法をぶっ放して、相手を倒すのが得意なの』
「えぇ、知っているわ」
『だから今みたいに誰かを守りながら、使える魔法があまりないのよ』
「なんですって?!」
『石猿をぶっ放す魔法を使うと、他の人達も被害が及ぶのよ。テヘ?』
「テヘ?じゃないわよ!!」
『なら、私が使えそうな魔法を、表示させるから勝手に唱えてよ』
「なんなのよそれ?!わかったわよ」
『では、それ~!』
すると空中に『ミリアお勧め魔法』と、書かれた文字が見えるようになった。
『そこに書いてある呪文を唱えれば、私が魔法を発動するからね!!』
「丸投げ、てことね。もういいわ」
私は空中書かれた文字を読み、その中から使えそうな魔法を選んだ。
そして指で名前が書いてある空間をタップする。
するとタップされた文字が光る!!
〈〈〈〈〈 Crusad!! 〉〉〉〉〉
私の左肩に載っているミリアちゃんが魔法を唱える。
すると私の左肩近辺が輝き、光が円を描き広がって行く。
円陣を組んだ騎士団員や神官達を包む。
この魔法は物理攻撃や防御力が増強する魔法だ。
「おぉ、力が…」
「力が溢れてくる…」
口々に騎士団員が呟く。
「さあ、みなさん。今の魔法で物理攻撃や防御力が上がりました!」
「おぉ、やっぱりそうだったのか?!」
「これがビッチェ王女様のお力か。これで怖いものはない!!」
その瞬間だった。
ドンッ!!ドンッ!!ドンッ!!ドンッ!!ドンッ!!
ドンッ!!ドンッ!!ドンッ!!ドンッ!!ドンッ!!ドンッ!!
ドンッ!!ドンッ!!ドンッ!!ドンッ!!ドンッ!!ドンッ!!
石猿達の攻撃が始まった。
円陣を組んだ盾で騎士団員は防ぐ。
その後ろから弓隊が、神官が聖魔法を放つ!!
でもそれはいつまでも持たなかった。
盾の円陣を石猿達が登り始めたからだ。
私はすかさず魔法を唱える!!
〈〈〈〈〈 |Storm Shield 〉〉〉〉〉
この魔法は風の盾を作り出すことが出来る。
受けた攻撃を無効化する効果がある魔法で、しばらくは凌げるだろう。
「もう駄目だ…、ここで死ぬんだ…」
見ると騎士団長アーガスは座り込み呆然としている。
「何をしているの?あなたも戦いなさい!」
「無理だ、もう勇者も居ない。ここで俺達は死ぬんだ…」
騎士団長アーガスが卑屈な顔で答える。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
★ミリアの思惑
不味いわ。
妖精である私にはわからないけど、人族は勇者のような『武』の者が居ないと言うことが不安になるのね。
ビッチェは私の力を借りれば魔法なら使えるけど、騎士達は『武』と『魔法』の対を成してはじめて安心できるのでしょうね。
しかし私達は『武』を誇張できるような戦士は居ない…。
ふと私はリンリン、ランランを見た。
さすが双子ね。
同じ人間が2人いるみたいだわ。
顔の形も息もぴったりね。
顔の形も息もぴったり…。
こ、これだわ!
私は閃いた。
今まであまりにも馬鹿げたことで、誰一人実行したことが無い禁断の魔法…。
『ビッチェ、いいことを思い付いたわ』
「どんなこと?」
『いいから、私に任せておいて』
そう言うと私は思い切ってリンリン、ランランの前に姿を現すことにした。
『リンリン、ランラン。こちらを見て!!』
私は2人に見えるように姿を現した。
「な、なに?」
「声がしたけど?」
『ここよ!ここ!!』
私は座り込んだビッチェの左側に浮かんでいた。
「見て妖精!!妖精よ。姉さん!!」
「そ、そうね、ランラン。初めて見たわ?!」
『2人も良く聞いて!!』
「あなたは、だれ?どうして、ここにいるの?」
その周りでは石猿と騎士団員の戦いが続いている。
ガン!!ドン!!ガァ~~!!カキン~ン!!
カキン~ン!!ガァ~~!!ガン!!ドン!!
ガン!!ドン!!ガァ~~!!カキン~ン!!
カキン~ン!!ガァ~~!!ガン!!ドン!!
ガン!!ドン!!ガァ~~!!カキン~ン!!
カキン~ン!!ガァ~~!!ガン!!ドン!!
ガン!!ドン!!ガァ~~!!カキン~ン!!
カキン~ン!!ガァ~~!!ガン!!ドン!!
戦いの音が響き渡る!!
『私は妖精のミリア。ビッチェ王女「ガン!」の使徒よ』
「まあ、あなたはビッチェ王女様の使徒なのね?!」
『ビッチェ王女が「ドン!!」私の「ガン!」主人よ!!』
「さ、さすがは王女様だわ。妖精を従えていたなんて!!」
『いや、だから…。もういいわよ!!』
『そこであなた達2人に提案があるのよ』
「「 提案?? 」」
『私の力を借りて大きな魔力を持った王女は、魔物だけを倒すような細かい調整ができないのよ』
「それはいったい?」
『あなた達ごと吹き飛ばすことはできても、石猿を1匹ずつ倒す様な細かいことが出来ないってことよ』
「そ、そんな。それでは私達は全滅してしまうわ」
『そうよ、あなた達は双子。そして顔だけではなく、お互いの考えが分かる』
「そう言う時もあるわ」
『それなら、なれるかもしれない。「ガッ!」使徒に』
「ビッチェ王女様の使徒に?!」
「な、なるわ」
「「 私達は喜んで、ビッチェ王女様の使徒になります!! 」」
も、もう、いいわ。
良かったね…、慕われているわねビッチェ。
『よく聞いて2人とも。これは2人の戦士が融合して、強力な1人の戦士となる融合技よ。融合する2人はほとんど同じ背丈で、魔力の大きさも同じである必要があるの。
成功すると元をはるかに超える、パワーを持つ別人格の人物が誕生するわ』
「具体的には、どうすれば良いのでしょうか??」
『いい、私の言う事をよく聞いてね』
「なにをやっているんだ?騎士団長アーガスや王女様は…」
「もう矢が無い。もたない…」
「だめだ、もう俺達は…」
円陣の外側に居る兵士が、石猿の攻撃に耐えきれず後ろを振り返った。
すると内側の兵士は倒れ、騎士団長アーガスまでが…。
ビッチェ王女様のその横で双子の戦闘メイドが変な踊りをしている…。
終わったと、誰もがそう思った。
リンリン、ランランは私の言われた通りのことをしている。
一定の距離を取りつま先立ちをしながら、左右対称に同じタイミングで手を下から上に上げる。
近付いてきてお互いの人差し指を合わせこう叫ぶ。
〈〈〈〈〈 merging!! 〉〉〉〉〉
その瞬間、2人は眩いくらいの黄金色に包まれ輝いていた。
光が収まるとそこには、金色の髪を持つ少女が1人立っていた。
おさげの黒髪は金色に変わり、髪留めもどこかに飛び…。
体の周りからは溢れる魔力で髪の毛が逆立っている。
『や、やったわ。初めて見たわ、2人の人物が融合する魔法mergingを!』
双子のリンリン、ランランは背格好も顔も似ている。
元を正せば一人の人間だったはず。
2人に分かれた力をこの魔法で元の1人に戻す。
私の使徒になったことで、ステータスも大幅に上がっているはずだわ。
そして私は最初の使命を2人に伝える。
『さあ行きなさい!その力を使い、目の前に立ちふさがる者を倒してきなさい!!』
「「 はい、行ってまいります!! 」」
聖闘士メイド、双子のリリーズが誕生した瞬間であった!!




