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第230話 フェアリー

「ねえ、どうして泣いているの?」

 私の顔の左側に15cmくらいの、可愛い女の子が浮かんでいた。


 よく見ると赤色の長袖にショートパンツと、短めのベストを着ている。

 金色の長い髪と背中から上下左右2枚ずつ、4枚の透明な羽根が生えている。


「あなたは?」

「私はミリア。妖精(フェアリー)よ」

「フェアリー?」


「そうよ、あなたは誰?」

「私はこの国の王子の娘、ビッチェ・ディ・サバイア。どうしてあなたはここにいるの?」

「だって、あなたが私を呼んだのでしょう」

「私が、あなたを?」


「とても切羽詰まっていて、深刻そうな声が私を呼んだでしょう。それに魔力も美味しそうで、つい来ちゃった」

「つい、って」


「それより、ここはどこなの?」

「ジリヤ国の王都よ。そしてここは王都にある女神ゼクシー様の神殿よ」


「女神ゼクシー様ね…」

「知っているの?」

「もちろんよ。あの背中と胸が同じ…、」

 妖精は何が可笑しいのか、笑いを堪えている。


「いいえ、ゼクシー様はとてもプロポーションの良い方よ。知っているの?」

「知っているわよ、こう見えても私は半神。女神ゼクシーが本社勤務なら、私は二次請けみたいな者で待遇も悪いし大変なのよ」


「二次請け??」

「良いわ、別に分からなくても。それに頼まれたら断れないもの」

「断れない?どういうことかしら?」

「いいえ、別にこちらのことよ。それに分かったことは、ここは私が居た世界ではないということね」

「そうよ、召喚したの。ごめんね、こちらの都合で呼んで」

「いいのよ別に。私はフェアリーで永遠の命があるし、それを選んだのも私」

「ありがとう。ここにいつまでも居たら変だわ。私の書斎に行かない?美味しいお菓子をご馳走するわ」

「お菓子!食べたい。早く行こう~」

「えぇ、そうね。早く行きましょうね」

 嬉しそうな顔の妖精ミリアを肩に乗せ、私は神殿を後にした。





「やっと出て来たよ。王女様」

「そうだな、長かったよな」

 神殿警備をしている神官見習い2人が話している。


「司祭様達が出てきたから、誰も居ないと思って中を見たら、王女様だけ残っていて何か1人でブツブツ言ってるしさ」

「中に入るな、て言われているから、出てくるのを待ってたけど。やっぱり噂通りビッチェ王女様は変人なのかな」


「ロターリ司祭様は、ビッチェ王女様と手を切るらしいぞ」

「あれじゃあ、利用価値が無いからな」

「司祭様は今度は誰に着くのだろう」

「決まっているさ」

「誰なんだい?」


「もちろん、お金をたくさんくれる人だろ」

「そうだろうな、はははは」





 妖精ミリアを肩に乗せ、私は神殿から王宮の私の書斎まで戻って来た。

 

 僅かな距離の移動だけど、お付きの者すら付かない王女なんて。

 惨めなものだわ。


「お好きなところに座ってね」

 彼女はしばらく辺りを飛び回り、木製のペンケースに座った。

 ペンケースは高さ4~5cmで、身長が15cmくらいの彼女には座りやすかったのかもしれない。


「お菓子を持ってくるわ。待っててね」

「うん、待ってる」


 私は厨房に行き来客用のお菓子をもらってきた。

「お待たせ、ミリアちゃん」

「ミリアちゃん?こう見えても私の方が、年上なんですけど」

「でも、そう呼ばせてもらえないかな。私には友達が居ないから」

「なんだ、ポッチか。それなら特別に呼ばせてあげるわ」


「ありがとう。それからもしかしたらあなたは、他の人には見えないのかしら?」

「見えないよ。私が許可した人以外は、声も聞こえないわ」


「あぁ、やっぱり。だから他の人には分からなかったのね」

「みんなが居なくなったから、あなたにだけ見えるように出てきたのよ」


「そうだったのね。ミリアちゃんの居た世界は、どんなところだったの?」

「私の居た世界はね、妖精の国(フェアリーランド)よ」

「フェアリーランド?」


「そう、私みたいな半神がたくさんいて、偉い神様になるように勉強するのよ」

「神様も勉強が必要なんだ」

「そうよ。徳を積むだけでは神様にはなれないのよ」

「へ~、そうなんだ」



 ミリアちゃんはお菓子を食べながら、自分が居た世界のことを話してくれた。


「この世界は背中合わせに、たくさんの世界があるのよ。その世界が間違った方向に向かわない様に、手助けするのが私達、妖精なの。神様は強大な力があるから、特定の人に力を貸せないけど。私達、半神は世界を滅ぼすほどの力はないから、手伝いが許されているの。まあ、頑張っても世界を救う力もないんだけどね!」

そうミリアちゃんは笑う。


「そして経験を積んで認められると、昇級試験と神様との面談があるの。これが大変で受かると次の上位の神様に上がれるのよ。それを何十万年も繰り返して、新しい世界を増やしていくの。なぜなら終わる世界もあるから、新しい世界を創っていかないとね。信仰する人が居なくなると、神様も存在理由が無くなるから、たくさんの世界を創造しそれを管理する人を育てる。それがフェアリーランドよ。まあ別名、神様養成学校て呼ばれているけど。世界を守る、どんな時にも欠かせない仕事。それがフェアリー。やりがいと安定の神様業、体力の心配は不要です。賞与、昇給、退職金手当あり。まあ、こんな感じね」


 最後は何か違う職種の、求人文句みたいだけど。

 


 ゴホ、ゴホ、ゴホ、

 ミリアちゃんは一気に話し込んだのでむせている。

 喉を潤す為に私はスプーンで紅茶をすくい飲ませてあげた。


 ゴク、ゴク、ゴク、

「ぱぁ~、このお菓子は美味しいね!!」

「そう、喜んでくれて嬉しいわ」

「でも、どうして召喚なんてしたの?」

「今、この世界は大変な事になっているの。お願い助けて…」

「今回は私だったから良かったけど、他の人だったらどうするのよ」

「ミリアちゃんに会えなかったのは残念だけど、その召喚された方に頼んだわ」

「わかってないわね」

「どう言うこと?」


「召喚はね、とても危険なことなの。今回は頼まれたから召喚に応じたけど…」

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