第221話 魔物討伐隊
翌朝、陽がやっと昇り始めたころ魔物討伐隊が訓練場に集まった。
騎士団員200名の内、騎馬隊40名、弓兵100名、歩兵70名。
オバダリア侯爵から派遣された歩兵が50名の合計250名。
シャルエル教よりロターリ司祭を含めた神官が5人。
ロターリ司祭は俺を見つけ見下すような目で俺を見た。
召喚された時に司祭と一悶着あったからだ。
司祭が些細な事で俺に掴みかかってきたから手を振り払った。
すると当たり所が悪かったのか、司祭の手の骨が折れた。
ビッチェ王女がヒールを使いその手を治した。
俺が回復魔法を見たのは、その時が初めてだった。
まだ根にもっているのかな。
そしてビッチェ王女と護衛を兼ねた戦闘メイドのリンリン、ランランだ。
部隊の主力武器は弓隊のようだ。
一斉射撃で遠くから攻撃し、数が少なくなったところを歩兵で倒す。
騎馬隊は物見やスピードと高所を生かした攻撃や、一撃離脱があるが魔物相手には通用しない。
討伐時には馬を降りて歩兵として戦う。
シャルエル教の神官5人と俺達4人は、2台の馬車に分かれ目的地まで進む。
これから向かう森は徒歩で3時間くらいの場所だそうだ。
魔素も弱く出てくる魔物も大したことはない。
騎士団や見習い神官の練習場所になるくらいの魔物しかいないらしい。
この討伐隊を纏めているのが騎士団長アーガス・リベラと団長補佐のコニー。
王より討伐隊を託されたことで意気揚々としている。
それほど名誉なことらしい。
俺達とシャルエル教の神官を載せた2台の馬車の前後を、騎士団員が守り左右を固めている。
俺が乗る馬車の中は隣にビッチェ王女、向かいにリンリン、ランランが座っている。
そしてメイドの2人は動きやすそうなレーザーアーマーを着ている。
要所要所を金属で覆い動きやすそうな作りの防具だ。
腰には高そうなバスターソードを提げ、その姿が様になっている。
俺の方は支給されたライトアーマーを、そのまま着ている。
俺が勇者相当の力があると分かってからは人々の態度が変わり、丈夫そうなプレートアーマーを着せられそうになったが丁重にお断りした。
なぜならストレージを体に纏えば防具代わりになり、動きにくくなる防具などいらないからだ。
しかし3時間も馬車に載っているのは辛い。
乗り心地がとにかく悪いのだ。
そして乗り心地が限界近くなった頃、馬車は目的地の森の入口に着いた。
「みなさん、目的の場所に着きました。馬車から降りてください」
リベラ団長補佐コニーの声が聞こえた。
俺達4人は馬車を降りた。
シャルエル教の神官5人も馬車を降りたところだ。
騎馬隊も馬を降り残る人達に馬を預けている。
騎馬は移動時に馬車を守るためだけの護衛用のものらしい。
従者が馬車や騎馬を面倒を見るために森の入口に残る。
そして俺達は森の中に入って行く。
俺達の陣形は先頭に騎士団長アーガスの騎馬隊、その後ろに弓兵、歩兵が続く。
その間に神官4人と次に俺達4人が続き、後にはロターリ司祭が歩いている。
時々、後ろを振り向くと、ロターリ司祭がジ~とこちらを見てくる。
これは後ろから魔物が来たら、『私に任せておけ』と言う事なのだろうか。
それとも女性の躍動する後ろ姿を眺めて居たい、というフェチなのか。
その気持ちは分からないでもないが、視線がねちっこくて嫌だな。
しばらく歩くと森の感じが変わった。
明るかった森が暗くなり、ドンヨリとした空気になり重みを増す。
「ビッチェ王女様、お分かりになりますか。森の空気が変わったのが」
「はい、分かります。エリアス様。何かとても嫌な感じがします」
「これが瘴気です。瘴気が集まり魔物になると言われています」
だから元から絶たないと駄目なのさ。
そんなことを考えていると物音がした。
ガサ、ガサ、ガサ、ガサ
ガサ、ガサ、ガサ、ガサ
「敵襲!!」
先頭を歩く騎士団の誰かが叫ぶ。
すると森の中から小柄な人型が出て来た。
ゴブリンだ。
人間と猿を掛け合わせてたような、邪悪な顔をしたモンスター。
身長は150cm台で肌の色は緑色をしており、つぶれた顔に平べったい鼻、大きく裂けた口に小さな牙が上を向いて生えている。
手には倒した相手から奪った物だろう、錆びた剣や盾を持っている。
「かかれ~!!」
現れたゴブリン8体は騎士団員によって、あっという間に倒された。
「ゴブリンは魔物の中でも、弱いモンスターです。徒党を組み獲物に襲い掛かる習性がありまして、数次第では十分脅威になります」
何も知らないと思ったのだろう。
騎士団長アーガスが俺やビッチェ王女に、興奮気味の顔で説明してくれる。
「さすが騎士団です。手際が良い」
「きゃっ!!」
突然、後から声を掛けられ、ビッチェ王女が驚きながら後ろを振り向く。
「ロターリ司祭様。驚かさないでください」
「これは申し訳ございません、ビッチェ王女様。万が一の時にはこのロターリにお任せください」
騎士団員は戦闘の後、ナイフでゴブリンの胸を切り魔石を取り出している。
「まあゴブリン程度での魔石ではたいしたことはありませんが、団員の小遣い稼ぎくらいにはなりますからな」
またロターリ司祭が口を挟んでくる。
「弱い魔物は剣でも倒せますが、強い魔物になると剣や弓の攻撃を受け付けないものが多くなります。そんな相手でも神官の使う聖魔法があれば勝てます。今度、魔物が出た時は我々がお相手いたしましょう」
「お、お願いいたします」
ビッチェ王女は仕方がない、と言う顔で答える。
しばらく森の奥に進み小休止した時だった。
ガサ、ガサ、ガサ、ガサ
ガサ、ガサ、ガサ、ガサ
またゴブリンだった。
「では、今度は我々の出番ですな」
ロターリ司祭が口を開く。
「えぇ、お願いします」
騎士団員達は笑った。
ガサ、ガサ、ガサ、ガサ
ガサ、ガサ、ガサ、ガサ
ガサ、ガサ、ガサ、ガサ
ガサ、ガサ、ガサ、ガサ
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『ゴブリンは徒党を組み獲物に襲い掛かる習性があって…。』
『数次第では十分脅威になります』




