第219話 聖女の肉
少年の怪我を回復魔法で治して見せたビッチェ王女は、金髪の髪を風になびかせ神々しいばかりの笑顔を見せていた。
「聖女様だ」
誰かがぽつんと呟いた。
それをきっかけにビッチェ王女の周りには、たくさんの人が集まり始める。
「「聖女様!!」」「「聖女様だ」」「「聖女様だ!!」」「「聖女様だ」」
「「聖女様だ」」「「聖女様」」「「聖女様だ」」「「聖女様だ」」
「「聖女様だ」」「「聖女様だ」」「「聖女様だ!!」」「「聖女様だ」」
「「聖女様だ」」「「聖女様だ」」「「聖女様だ」」「「聖女様」」
「「聖女様だ」」「「聖女様だ!!」」「「聖女様」」「「聖女様だ」」
そして口々に彼らは叫び始める!!
教会の聖職者でも助からないと思う程の少年の怪我を、僅かな金額で治したビッチェ王女は彼等からすれば聖女に思えたのだろう。
俺は思わず身の危険を感じ身構えた。
どこから取り出したのかリンリン、ランランが、刃渡り20cmくらいのナイフを構え俺とビッチェ王女の前後を守る。
すると俺達を囲んだ人々は、2mくらいの距離で立ち止まり跪いた。
「聖女様、お願いです。どうか早く魔物を倒してください」
「一刻も早い対応をお願いします」
「このままで、飢え死にしてしまいます」
「食べ物が、もうこの町にはありません!!」
「聖女様。どうか食べ物をください!食べ物を!!」
人々が騒ぎ出す。
俺は呆然としていた。
ふと見ると怪我を治した親子は、とても痩せている。
そして周りの町の人達も、同じように痩せこけている。
いくら聖魔法で治療が出来ても、体力までは回復しない。
まして食べ物までは用意できない…。
凄いものだ。
縋るものがあれば縋りつきたい。
たとえ相手が誰であろうと。
そんな切羽詰まったところまで追いつめられているのか。
「可哀そうだけど…」
リンリンがそう呟く。
「同情なんていらないから食べ物をください!!」
「小麦粉が高騰してパンも食べれません!!」
痩せた女性の1人が声を荒げる!!
やがて人々が俺達に訴え始める。
パンが食べれない?
そうか?!
パンが無ければお肉を食べればいい。
「ビッチェお嬢様、ご相談があります」
「なんでしょうか?」
「どこか、肉を出せる場所はないでしょうか?」
「お肉が出せる場所ですか?それはどう言う…」
「あぁ、あそこにしましょう」
そう俺は言うと野菜を売っている出店に向かう。
慌ててビッチェ王女達も俺の後をついてくる。
「ここを少し貸してもらいますよ」
「な、何を言っているんだい、あんたは?」
出店のおばさんが分からない顔で俺に聞いてくる。
そう聞いてくる主人を無視し、俺はストレージに出店の野菜を収納した。
「わっ!なんだい?どうしたんだい??」
突然、野菜が消え出店のおばさんは更に驚き声を上げる。
「行きますよ!!」
そう言いながら俺はストレージからたくさんの肉の塊を出した。
「ドン!!」「ドン!!」「ドン!!」「ドン!!」「ドン!!」
「ドン!!」「ドン!!」「ドン!!」「ドン!!」「ドン!!」
「ドン!!」「ドン!!」「ドン!!」「ドン!!」「ドン!!」
「ドン!!」「ドン!!」「ドン!!」「ドン!!」「ドン!!」
「ドン!!」「ドン!!」「ドン!!」「ドン!!」「ドン!!」
俺のストレージの中には今まで倒してきた、数々の魔物の肉が収納されている。
それを台の上に出していく。
「な、なんなんだ、これは?!」
出店のおばさんにしてみれば何もない空間から突然、肉の塊が現れた様に見えただろう。
「このお肉の一部を差し上げますから、この場所を貸して頂けないでしょうか?」
「なんだって?ほ、本当に、肉をくれるのかい?」
「えぇ勿論です」
私はそう言いながらストレージから、解体用ナイフ取り出す。
「いいですか!!今からこの肉を今からみなさんに、無料で切り分け配ります!!」
「「本当か?!」」
「「本当にもらえるのか?!」」
周りに集まった人々が騒ぎ始める。
「えぇ、勿論です」
俺はそう言うと出店のおばさんに、15cmくらいの肉の塊をおばさんに渡した。
「こ、こんなにくれるのかい?」
「えぇ、さあどうぞ!!」
「それならさっき、あんたがどこかにやった野菜もあげるからね」
「ありがとうございます」
俺がお礼を言うと、おばさんは肉を持ってどこかに消えていった。
「君達には悪いけど、これを切り分けてもらえるかな」
そう言うと俺はリンリンに解体用ナイフを預けた。
「「 わかりました!! 」」
さすがは双子だ。声がハモる!!
「さあ、みなさん。お肉の配給です!!1人に対しては僅かしかありませんが、2列に並んでください!!」
俺は声を張り上げる。
「肉だと!!」
「肉がもらえるのか?」
「肉だ!」「肉だ!」「肉だ!」「肉だ!」「肉だ!」「肉だ!」「肉だ!」
「肉だ!」「肉だ!」「肉だ!」「肉だ!」「肉だ!」「肉だ!」「肉だ!」
「肉だ!」「肉だ!」「肉だ!」「肉だ!」「肉だ!」「肉だ!」「肉だ!」
「肉だ!」「肉だ!」「肉だ!」「肉だ!」「肉だ!」「肉だ!」「肉だ!」
その場を歩いていた人達も足を止め、俺達の前に2列に並ぶ。
突然のことなのでみんな皿なんて持ち合わせてない。
だからみんな手のひらに載せ、嬉しそうな顔で帰って行く。
助けた親子も肉をもらい帰って行った。
「聖女様だ」「聖女様のお恵みだ」「聖女様だ」「聖女様だ」「聖女様だ」
「聖女様だ」「聖女様だ」「聖女様のお恵みだ」「聖女様だ」「聖女様だ」
「聖女様だ」「聖女様のお恵みだ」「聖女様だ」「聖女様だ」「聖女様だ」
「聖女様だ」「聖女様だ」「聖女様のお恵みだ」「聖女様だ」「聖女様だ」
「聖女様だ」「聖女様のお恵みだ」「聖女様だ」「聖女様だ」「聖女様だ」
「聖女様だ」「聖女様だ」「聖女様のお恵みだ」「聖女様だ」「聖女様だ」
口々に『聖女の肉』と呟きながら、血抜きをしていない血が滴る肉を彼らは掲げて帰って行く。
そして肉が無くなったらまた、ストレージから出していく。
人々はビッチェ王女が肩から下げている、小さいポーチをマジック・バッグだと思ってくれたようだった。
「聖女様」「聖女様だ」「聖女様の肉だ」「聖女の肉」「聖女の肉」
「聖女の肉」「聖女の肉」「聖女の肉」「聖女の肉」「聖女の肉」
「聖女の肉」「聖女の肉」「聖女の肉」「聖女の肉」「聖女の肉」
「聖女の肉」「聖女の肉」「聖女の肉」「聖女の肉」「聖女の肉」
「聖女の肉」「聖女の肉」「聖女の肉」「聖女の肉」「聖女の肉」
こ、これは、なにかのミサか?
その日、城下町はどの家も、肉を焼く匂いが漂い笑い声が絶えなかったという。




