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第218話 回復魔法の進化

 翌日、俺とビッチェ王女、リンリン、ランランの4人で城下に出た。

 出る時に身分が分からないから、門番に身分証の代わりになるメダルを見せる。

 メダルには紋章や名前が彫ってあり、出入りの際に提示するようになっている。

 そして門番はその出入りの記録を付けている。

 社員証みたいなものかな。



 リンリン、ランランの案内で城下を歩いているが、驚いたことに道行く人々は痩せており活気がない。

 市場で売っている野菜は、鮮度も悪く数も少ない。


 これほど事態が悪化していたとは…。

 城の中と外ではこんなにも隔たりがあり、それを見たビッチェ王女は愕然としていた。


「まさかここまで酷いとは…。私は思いませんでした」


 ビッチェ王女が深刻な顔で呟く。

「貴族である私は多少、食卓が寂しくなった程度にしか現状を考えていませんでした。魔物が多くなり、城外の畑にも現れるようになり、狩りもできず肉が手に入らない。なにを浮かれていたのでしょう、私は…。早急に瘴気(しょうき)を消さないとこの国は手遅れになってしまう」



 俺達は城下で楽しく買い物をして、街を見て一日楽しめれば良いと思っていた。

 そんな軽い気持ちで、出て来たけどこれでは本当に視察だ。


 こんなメインの通りがスラム街の様になっているとは…。





 ガラ、ガラ、ガラ、ガラ、ガラ、

「どけ、どけ、どけ~!!」

 どこの貴族の馬車なのか。

 御者が大声を出し、路地を物凄い勢いで走ってくる。


「お嬢様、危ないです!!」

 リンリンが声をかける。

 俺達は道の端に馬車を避け、通り過ぎるのを待った。


 道幅は馬車の1.5倍くらいしかない。

 何を急いでいるのだろう?


「ママ!」

 馬車が通り過ぎようとしたその時、5歳くらいの男の子が飛び出した。

 道の向こうに居る、母親のところに行こうとしたらしい。

「危ない!!」


 ドンッ!!


 御者が思わず手綱(たづな)を引いたが間に合わず、叩きつけられるように子供は跳ね飛んだ。

「きゃ~!サミール!!」

 母親が子供の名前だろうか、叫んでいる。


 馬車が止まり中に乗っている主人の声がした。

「おい、どうした?急ぐんだ!!」

「はい、ご主人様。子供が飛び出して参りまして」

「なに?子供だと?!これでも拾っておけ!」

 そう馬車の中の主人は言うと、窓から500円硬貨を2枚投げ捨てた。


「ほれ、さっさと急げ!!」

「分かりました」

 御者は先度よりはややゆっくりと、再び馬車を走らせ通り過ぎた。



「サミール、サミール!!しっかりして。お母さんよ、わかる?」

 母親が子供を抱き抱えながら、必死に呼びかけてる。


「誰か、誰か助けて!!お願い、お願いします!!」

 見ていた周りの人達は、気の毒そうな顔をしている。

 教会の神官が使う治癒魔法でも、助かるとは思えなかった。



 その時、道に落ちた500円硬貨2枚をビッチェ王女が拾った。

「リンリン」

「はい、お嬢様」

「1,000円で、何が買えるのかしら?」

「えっ?」

「私はお金を自分で持って、買い物をしたことが無いから。お金の価値が分からないのよ」

「そうですか。今なら物価も高騰しておりますので食事一食分かと」

「1,000円が安いのか、それとも食事が高いのか分からないけど。これは駄目ね」



 そう言いながらビッチェ王女は泣きじゃくる母親の側に向かう。 

「お母さん、ちょっとお子さんを見せてもらえないかしら?」

「えっ?!」

 母親は、きょとんとした顔をして私を見た。


「大丈夫よ、私に任せて」

 ビッチェ王女はそう言うと、母親に抱きかかえられている子供に手を翳す。


〈〈〈〈〈 Healing(ヒーリング) 〉〉〉〉〉

 ビッチェ王女の左手が光り輝く!!


「うっ!」

 少年の顔色が少し良くなってきた。


 ビッチェ王女は額に汗をかきながら更に手を翳す。

 でもまだ回復魔法の力が足りないようだ。

 そこで俺は考えた。

 力が足りないなら、それを上回る力を足せばいいと…。


 俺はビッチェ王女の背中に手を当て、魔力を同調させゆっくりと流し込む。


 「エリアス様、な、なにを?!あっ?」


 そう声を出すビッチェ王女が突然、思いついたかのように詠唱する!!


<<< Regenerate(リジェネレイト)!! >>>


 するとビッチェ王女の体が眩く輝き始め、少年の体を包み始める!!



「「 おぉ~~!!! 」」


 それを見ていた周りの人達が声をあげる!!


 そして光がゆっくりと収まり、少年は穏やかな顔をして寝息を立てていた。




「お母さん、お子さんはもう大丈夫ですよ」

 ビッチェ王女は額の汗を拭きながら母親に声をかける。

「えっ?!本当ですか!!」

「本当です」

「あ、ありがとうございます。本当にありがとうございます」

 母親は何度もお礼を繰り返す。


「ですが我が家には治療費をお支払いできるお金がありません」

「いえ、あるわ。これを頂くから」

 ビッチェ王女はそう言って、貴族が投げ捨てた500円硬貨2枚を見せた。



 そこには金髪の髪を風になびかせ、神々しいばかりの笑顔を見せた少女がいた。

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