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第204話 怪我の功名と甜菜

「エリアス様、もう終わりでしょうか?」

「ごめんね。もう駄目なんだ…」


 そう俺は言うしかなかった。

 ごめんよ…。




 俺はセトラー学校に来ていた。

 先日、子供達に話して聞かせた紙芝居『桃太郎』は不評だった。


 困ったのが桃を食べ若返ったおじいさんと、おばあさんに子供が出来たことだ。

 若返るとなぜ、子供が作れるのか?

 子供達に聞かれイキナリその話をするのか?と考えたが、アリッサさんの目が怖くて止めた。

 その後は、物凄い顔でアリッサさんに怒られた。



 しかし『ねり飴』は好評で、子供達からまた見たいとせがまれたのだ。

 仕方なく俺は思いつくまま、子供達に話して聞かせた。


 童話の王道と言えばやはり『裏、仕舞(しま)ったろう』だろう。

 仕舞った場所をすぐに忘れる痴呆症の、おじいさんに手を焼くおばあさんの話だ。


 万引きをして捕まった少年を描く『離(はな)さんか!じじい』。

 倒産寸前の家具屋に嫁ぎ、店を立て直す女性を描いた細腕繁盛記『家具屋姫』。

 しまった!あれがない?と、騒ぐ慌て者の『もう、持ったろう』別バージョン。


 だがどれも子供達には理解されず、受け入れてもらえなかった(泣)

 ネタも尽きてしまった頃、アリッサさんにまた怒られ俺は退場となった。




 俺はそのまま不貞腐(ふてくさ)れセトラー国を出て、アスケルの森の中を進んだ。

 もう自棄(やけ)です、ぶったれです。


 それなら入ったことが無い場所に行こうと思い、奥へ奥へと進んで行った。

 するとどうだろう、どこかで見たことのある野菜が生えていた。

 大根?

 特に珍しい野菜ではない。

 しかし何かが違うと思い、【鑑定】で見てみると驚くものだった。


【鑑定】甜菜(テンサイ):植物

 砂糖大根ともいわれ形が大根と似ているが、大根とは別種でビートの一種。

 寒さに強く寒冷地作物として栽培される。

 サトウキビと並び砂糖の主要原料で、根を搾(しぼ)って汁を煮詰めると砂糖がとれる。

 甜菜糖は荒い抽出でも色は白く高級に見えると言う。

 塩害にも強く葉や搾りかすは家畜の餌に出来る。



 この世界で砂糖を作るのに、サトウキビのようなイネ科の多年生植物がある。

 だが亜熱帯気候の地域でのみ栽培できる。

 そのため亜熱帯地域以外の国では輸入品となり、塩と並び砂糖は高級品となる。


 しかし甜菜(テンサイ)は寒冷地でも栽培でき、これが成功すれば砂糖の価格を大幅に下げることができる。

 


 俺はその辺に生えている甜菜(テンサイ)を、ストレージに収納して行く。

 春になったら苗床で苗を作ろう。

 ある程度育ったら畑に植えれば、発芽時期を早めることが出来るから。


∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽


 セトラー国西暦2年

 セトラー国の初代国主、エリアス・ドラード・セルベルトの業績は多大だ。


 不可能と思われていたアスケルの森に国を興した。

 鉱山から鉱石を採掘し製鉄が始まり、シャルエル製作所にてフライパン・鍋・やかんなどの台所用品を作成販売する。

 冷蔵庫、照明、魔道コンロの魔道具。

 綿を栽培しアバンス紡績店で作った、タオル、手ぬぐい、バスローブ等。


 調味料の開発と販売。

 調味料は高価で庶民は購入することが出来ず、裕福な貴族でさえ薄味だった時代。

 そんな時に彼は『マヨネーズ』、『味元(あじげん)』、『醤油』、『醤油タレ』、『ソース』を開発し販売した。


 そんな中、沿岸部のラードルフ国との貿易が始まった。

 蒸気機関車で輸入が可能になり、塩が庶民でも手が届く値段になった。



 そして砂糖が採れる甜菜(テンサイ)の栽培。

 セトラー国の広い領地を開墾し、広範囲で甜菜(テンサイ)畑を作った。

 人手が足りず各国から人を雇い、人々は蒸気機関車の引く客車に乗った、たくさんの人が通勤する姿を見かけたと言う。


 砂糖も価格が下がり、お菓子や甘いものを出す店が街にあふれたと言う。

 生活が安定した人々は、出産ラッシュが続いた。

 シャルエル製作所で製作されたベビーカーが飛ぶように売れた。

 人々の仕事も忙しく収入も多くなっていく。




 エリアス・ドラード・セルベルトと言えばもう1つ。

 セトラー建国記に彼についての不可解なことが書かれている。

 それは『彼は静けさを呼ぶ男である。彼の寒いギャ〇で身も凍る』とある。


 だが書記が古く文字がかすれ読み取れない為、未だに解読されていない。

 彼は『サイレント』と『フリーズ』の魔法が使えたと言うことなのだろうか?


 今では確かめる術(すべ)はない。

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