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第203話 兎族ドロテーア

 私は兎族のドロテーア。

 このセトラー国にきて1年近くになる。


 我々一族は代々、アスケルの森で暮らしていた。

 しかし兎族は足の速さには自信はあるけど腕力はない。

 そのため、この森で生きていくのは大変なことだった。


 ある日、小人族からこの森に国ができたと聞いた。

 そんな馬鹿な、そう思いながらも聞いていた場所に来てみると大きな城壁が…。

 私は連れて来た仲間数人と相談をして城門を叩いた。

 それがエリアス様との出会いだった。


 エリアス様は人族だけど奥様の1人は虎猫(とらねこ)族で、私達を異種族と蔑むことはなかった。

 それまでは自給自足で暮らしていた私達には、ここは夢の様な場所だった。


 魔物に怯えることもなく、寝る場所にも食べることにも不自由はしない。

 田畑を耕し作物を植え、ラプタ(鳥)を養鶏し自分達で生計を立てている。

 考えられなかった。


 気が付くといつのまにか森の中で隠れ住んでいた犬族、狐族、狼族、虎族も移住していた。

 そして私達がやっていることは田畑や養鶏所の管理。

 山脈を切り崩し鉱石採取などをしていた。


 最近では街からたくさんの人が、鉱石採掘のために働きに来るようになった。

 だから採掘は彼らに任せ、私達は畑仕事と警備の仕事を受け持っている。


 エリアス様が凄いのはこの森の主と呼んでもいい、各地域の魔物を2体も従えていること。

 この森は奥に行けば行くほど、強く巨大な魔物がいる。

 そして彼らは自然の摂理に従っているわ。

 お腹が減れば食べ、縄張りを冒すものは排除する。

 そして弱いものが食べられる。

 魔物は縄張りを持ち、よほどのことがない限りそこから出ることはない。

 だからそこを縄張りとしている魔物を倒せば開拓は可能になるのよ。

 まして従えるなんて…。

 魔物は自分より強い者には逆らう事は無いと聞くから。


 各地域の魔物の主はセトラー国近郊は大地の長虫(アースワーム)、そこから南はマンティコア。

 北に居る火竜(ファイヤードラゴン)は今のところ土地も余り、無理に開拓する必要が無いのでそのままにしておくそうよ。

 ドラゴンの肉は美味しいけど残念だ、と言っていたのは驚いたわ。



 何かあれば各地域の主達が居るからいいけど私達も役に立たないと。

 でも私達は非力だから…。

 

 そんなことを思っているとエリアス様から良い武器を頂いた。

 それがクロスボウよ。

 威力は凄まじく魔物の体を、刺さるではなく貫通するほどなの。

 接近戦が苦手な種族や、私達の様な非力な者には丁度良い武器なの。

 兎族、犬族、狐族、それから街から移住してきた人族がクロスボウを習い始めた。


 弓はエリアス様の奥様の1人アリッサ様と、闇妖精(ダークエルフ)の人の方に教えて頂いている。

 弓の腕も上がり魔物を簡単に倒せるようになってきた。

 今まで狩られる側の私達が狩る側なった。

 力を手に入れると言うのはこういうことなのか。


 そして私達は集団でいつも狩りをするようになった。

 最低でも50人単位で移動しているから、向かうところ敵なしね。

 

 それからもう1つ気になることがある。

 エリアス様のことよ。

 3人いる奥様が同時に懐妊されたわ。

 出産されてもしばらくは育児で大変なはず。


 今セトラー国の女性の間で話題なのは、このチャンスを誰がものにするかね。

 11歳のエリザ様もいるけど、さすがにご無体だと思うから。


 気を付けないといけないのは、元冒険者パーティ『餓狼猫のミーニャ』の3人ね。

 猫族が3人も増えたら毎晩、にゃ~、にゃ~、にゃ~、にゃ~、うるさいわよ。

 それから闇妖精(ダークエルフ)のおば様達ね。

 見た目は若いけど『隣のアレン領が出来る前はね…』、なんて話を前にしてたから一体いくつよ!!

 出産と同時に高年齢出産で、『ご愁傷様』よ!!

 しかもお母さんだけど、お婆ちゃんよ。


 でもそれ以前にエリアス様は、女性に興味があるのかしら?


◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇


「エリアス様、もう終わりでしょうか?」

「ごめんね。もう駄目なんだ…」


 果たして、これはいったい?


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