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第200話 薪ストーブ

 1月末になり再びラードルフ国、マジスカ領を俺達は訪れた。

 昨年末に販売した宝くじが思った以上に収益があったようで、マジスカ公爵はとても喜んでいた。

 これからは定期的にラードルフ国全域で販売するそうだ。

 線路を引く許可もラードルフ国国王の許可が降りていた。


 マジスカ公爵には事前に見せていた、ジオラマの通りに線路を引き駅を創った。

 駅には荷下ろしを管理するためのエリアス商会の支店を作った。

 それを任せるのは創立当時から手伝いに来ていて、今は社員となったグイードさんと、アマイアさんという夫婦に任せることにした。

 そこでセトラー国から運ばれて来た鉱石や自転車、台所用品、調味料を各ギルドに卸す手配をする。


 マジスカ領で知り合ったデリク商会のデリクさんには、蜜蠟、シャンプーやボディソープ、キックボード、農機具も卸すことにした。

 当初、俺のことをジリヤ国の人間だと思っていたデリクさんは、俺がセトラー国の国王だと知るととても驚いていた。

 まあ、普通は国王自ら他国に出向いて行かないからね。



 今後、マジスカ領は製鉄所が増えて雇用も上がって行くだろう。

 後は見守って行けば良いだけだ。



 妻のアリッサさん、オルガさん、ノエルさんは、相変わらずつわりが辛そうだ。

 頑張れ!あと少し。





 俺は今、1人でアレン領のエリアス商会に来ている。

 ラードルフ国との貿易も順調で商会の様子を見にきたのだ。


 部屋にはエリアス商会のアルバンさん、シャルエル教大司教ヨハネス様。

 アバンス商会のアイザックさんがいる。


 普段はセトラー国に籠っているので、こういう機会でもないと3人に会う事も無いからね。


 しかしこの部屋の寒さは、どうにかならないのか?

 この世界の建物は木造が多い。

 そして隙間が多く、家の中で暖炉があっても断熱材もなく寒い。

 

  

 何かないかな?【スキル】世界の予備知識で調べてみる。

 建物の寒さ、寒さ対策…検索中…。

 あっ、あった。

 これなんかどうだろう?


「どうかされましたか、エリアス様?」

 アルバンさんが聞いてくる。

「実は部屋を暖かくする方法を考えまして」

「部屋を暖かく…、今よりもですか?」

「はい、そうです。でもそれには鍛冶職人さんが必要になります」

「それなら私にお任せ下さい」

「ありがとうございます、ヨハネス様。うまく行けば特許を取りたいと思います」




 俺が見つけたのは『フランクリン・ストーブ』だ。

 フランクリン・ストーブの「フランクリン」とは、凧を用いて雷が電気であることを証明したベンジャミン・フランクリンのことだ。

 このストーブはベンジャミン・フランクリンの数ある発明の内のひとつだ。


 薪を燃やすと炎自体から熱が出るほかに、燃焼性の揮発成分が出る。

 しかし従来のストーブでは空気より軽い、揮発成分は煙突から排気されてしまう。

 そのため部屋を暖めることが出来なかった。

 この揮発成分を活用したのが、フランクリン・ストーブだ。


 フランクリン・ストーブの構造は、アルファベットの逆『∩』字の配管をしている排気口が特徴的だ。

 一度上昇した揮発成分を炎の上部に集め、燃焼させることで熱を発生させる。

 この熱によって部屋が暖まるという仕組みだ。

 排気口は下を向いているため、燃焼効率が飛躍的に上がる。

 従来のストーブと比べると、燃料に対する熱の効率はなんと4倍にも達する。

 言い方を代えれば薪(まき)が1/4で済むことだ。

 しかも従来のストーブでも、排気側に少し手を加えるだけで改良できる。

 不燃性の『衝立(ついたて)』と『簀の子(すのこ)』で仕切ればもう完成だ。



 俺は獣紙皮に構造を絵に描いて見せた。

「ほう、そんなことで温かくなるのですか?」

「まずは、やってみてもらえませんか?」

「わかりました、さっそく手配致しましょう」

 そう言うとヨハネス様は、部屋を出て行った。



 1週間後エリアス商会を訪れると、ヨハネス様が鍛冶職人を連れてやって来た。

 準備が出来たと言うので、試しにエリアス商会のストーブを改良してもらった。


「おぉ、温かい」

「これはいい!!これなら需要がありそうです」

 ヨハネス様やアルバンさん、アイザックさんがストーブの前で驚いている。


「しかし、こんなことで本当に暖かくなるなんて」

「こんな簡単に改良できるなら、需要もあるでしょう」

「私はギルドに行き特許を取って参ります」

 そう言うとアイザックさんは、店を出て行った。




 それからは早かった。

 シャルエル教で鍛冶職人を確保をする。

 職人さん達には冬場の仕事が安定するので喜ばれたそうだ。


 エリアス商会とアバンス商会の店先に『のぼり旗』を出す。

『わずかな薪で暖かさ4倍。寒い冬はこれでさよなら』

 そう書いたのぼり旗を店先に出し、店員が店頭で口上(こうじょう)を始める。

 字が読めない人もいるからだ。

 何が始まったのかと、人が集まり出す。

 娯楽の無い街では、これもある意味イベントになる。

 エリアス商会がまたなにか始めたと。


 そしてストーブ改造の予約と同時に、買い替えの予約も増えた。

 部屋が暖かくなり薪代も節約になる。


 アレン領にとって、エリアス商会は無くてはならない存在になって行く。

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