第165話 線路は続くよⅤ 公共事業
俺達は会議室の様な大きな部屋に通され待っていると、ファイネン夫妻と男の子がやって来た。
「やあ、待たせて悪かったね。元気そうで何よりだ」
「ファイネン公爵様こそ、お変りがないようで。いえ義父でしたね」
「堅苦しい挨拶は抜きだ。エリアス君は初めてだったね、息子のジェラードだ」
「初めましてエリアス様、ジェラードです」
「エリアスです、お、お兄様…」
やはり変だ。
ジェラードはエリザちゃんに2つ上と聞いたから13歳のはず。
16歳の俺が『お兄様』呼ばわりするのも違和感がある。
それを言えばエリザちゃんの実家に、他の嫁を3人引き連れてくる俺もどうかしているが…。
「ジェラードで構いません、エリアス様。あなたは開拓村の当主と伺いました。私より遥かに偉い方ですから」
「わかりました、ジェラード様。お言葉に甘えさせて頂きます」
そう俺は礼を述べた。
ファイネン公爵は愛妻家で普通ならお家存続のため、愛人や夫人を多く作るのに奥様一途だと言う。
「ところでエリザ。そろそろ孫の顔は見れそうかな?」
「嫌ですわ、お父様。まだまだ先ですわ」
だから何を言っているんだこの親子は?
エリザちゃんはまだ11歳だぞ。
それ以前にどうすれば子供が出来るのか、エリザちゃんに教えているのか?
まさかコウノトリ、とか畑に時期が来るとポッコリ生っているとか言わないよね?
「しかしもう1年だぞ?」
「毎日、畑を見ていますが、生っていなくて…」
そっちかい?!みかんか?!
そして俺と公爵は駅作りの場所について話し合った。
「君に街道を整備をしてもらった効果が、大きくて驚いているよ。ウォルド領に来る人が増え近郊の村も栄え税収が上がっている。道幅が広くなったことで、盗賊団や魔物にも襲われにくくなり、襲われていても人通があれば助けに入ることもできる」
「それは良かった。相乗効果ですね」
「その内、他の領や王都から道路整備や線路を引いてほしいと、依頼があるかもしれない」
「その時はお断りいたします」
「なぜ?どうして」
「以前は俺自身が王都に行く際に、気まぐれで行った事です。ですが依頼となれば違います」
「あぁ、そう言うことか。我が領と東のアレン領は、君の気まぐれで潤っていると言う事か」
「それは極端ですけどね」
「だが何とかして国は君に取入ろうとするだろう」
「それなら国で公共事業をやるのはどうでしょうか」
「「「 公共事業?? 」」」
「はい、国や領主が利益や福祉のために行う事業です」
「どんな内容なのだね」
俺は自分の考えを話した。
まず道を広げ今回のように物流を発展させる。
街には今日の食事にさえ、ままならない人達がたくさんいる。
その人達を雇うのだ。
1日朝昼晩、3食の食事を出す。
その代わり給与は平均より安くする。
一日食事付きなら好待遇ではないだろうか。
それでも食うに困っている人は、やってくるだろう。
これで安く人を使え国や領主の負担も少なくなる。
道は馬車2台分と、左右に人が通れるくらいの幅で造るのだ。
そして道が完成したら通行料を取る。
その領地が発行した証明書以外の人は、よその街から来たことになる。
その人達から食事代程度の金額の通行料を取ればいい。
開拓用の工具も貸し出す。
道が開通すれば十分に元は取れる。
そして物流が頻繁になり、それが売れれば税金となって帰ってくる。
それと同時に、街と街の間に休憩出来る場所を作る事だ。
休憩や食事が出来れば旅がしやすくなる。
同時に警備兵を置けば盗賊対策や、魔物にも対応でき治安維持に繋がる。
他には農地開墾と畜産だ。
農業が人口に対して少なく、野菜や穀物が足りない。
お金のある貴族たちは小麦粉で作った柔らかいパンを。
庶民はライ麦から作った硬いパンを食べているのが現実だ。
そしてパンは重要で野菜や穀物の供給が少ないため、パンを食べ飢えを満たしているのが現状だ。
村の開拓の場合、収穫するまでの苦労は並大抵の事ではないはず。
自分で開拓し、収穫物は税として何割かは領主に取られてしまう。
だからやりたがる人が居ない。
だが、開拓を日雇いとして雇われるならどうだ?
道の整備と同じように1日3食の食事を保証し、給与も年俸制にする。
そうすれば土地に根付いてくれる。
開拓ではなく、領主に雇われて仕事をするなら人は来るはずだ。
肉も冒険者や狩人が狩ってくる魔物や獣の肉を食べている。
しかし供給が少ない。
それなら飼育し繁殖させたほうが効率がいい。
いずれは領内だけではなく、作物を他の領地へ輸出できるくらいにする。
量が多くなれば、運送費をもらい運搬する運送専門の会社を作る事も提案した。
そうなれば物価も下がり人々が飢えることもなくなる。
「雇用先を増やすことにより国民は豊かになり、国民が豊かになることで国も豊かになるのです」
「雇用先を増やすか。それはいい案かもしれん」
ファイネン公爵が賛同してくれる。
「道が整地され広くなれば今回のように、盗賊や魔物も襲いづらくなり治安維持にもなります」
「だがその資金はどこから捻出するのだ」
「道が整備され広くなれば、いずれは元は取れます。鉄道の線路も引いてもらい、鉄道はこちらで管理し物流を担います。今、こちらでも能力の有る者を育ていますが、異種族に偏見が無ければ、国からの人も受け入れることも可能です」
「なに?!蒸気機関車の技術を教えてくれると言うのか?」
「はい、そうです」
「そ、それは願ってもないことだ。王都にこのことは話しておこう」
「それと、もう1つ」
「もう1つ?」
俺はアリッサさん達を見渡し、言葉を区切った。
「緑竜の素材は、国で買取できますか?」




