第164話 線路は続くよⅣ
俺達は俺の妻?婚約者エリザちゃんの実家、ウォルド領を目指して進んでいる。
整備済みの道路をアリッサさんが木製自転車、オルガさんがノエルさん、エリザちゃんと侍女のネリーさんの3人を乗せた幌付きリヤカーを引いている。
そして俺は相変わらず整備済みの道路と並行して走り、『道路整備』をしながら進んで行く。
そして今は話しやすいように、『道路整備』の騒音を収納しながら進んでいる。
他の音も多少、収納し聞きづらいのが難点だが仕方がない。
東端のウォルド領から、西のアレン領まで約120kmくらい。
テオドーラ村は丁度中間くらいだから、後60kmくらいか。
そしてテオドーラ村は朝、暗い内に出てきており時速7~10km走っているはずだ。
この分なら昼くらいにはアレン領に入れるだろう。
5時間くらい進むと醤油タレの良い匂いがしてきた。
エターブの町が近いのか。
エターブはウォルド領管轄だ。
以前、王都に行く際に蒲焼を伝授したところだ。
エターブはウォルド領近くの何もなかった町だ。
そのため旅人は町を通り過ぎ用事でもない限り、旅人が足を運ばない町だった。
エリザちゃんの話によれば蒲焼のおかげで、今ではウォルド領からの人や旅人も立ち寄るようになり税収もうなぎ上りだと言う。
ぶふふ。
俺達はそのままウォルド領に向かった。
ジリヤ国は中心の王都を守るように、東西南北に6つの領で囲まれている。
更に王都の東西に2つの公爵家を配置し外敵に備えている。
その東側が今回訪問するウォルド領だ。
前に王都に来た時は、ウォルド領に用事が無かったので通り過ぎてしまったが。
そのまま道を整備しながら進んで行くと、ウォルド領の城門が見えて来た。
そこで一旦、『道路整備』は中断だ。
なぜなら許可なく城門を切り取る訳にはいかないからだ。
俺達は城門から城内に入り門番に頼み、ファイネン公爵家の迎えを待っている。
事前に通達されていたようで、門番も話がすぐに分かった。
俺達はファイネン公爵家の場所を知らない。
そして公爵家が実家のエリザちゃん自身もだ。
なぜなら公爵家のお嬢様は幼少の頃から、1人で外に出ることが無いからだ。
だから門から実家に行く道さえ知らない。
詰め所で待っていると、ファイネン公爵家の紋章が入った馬車が迎えに来た。
馬車が止まり中から、50代半ばの赤髪の男性が降りてくる。
「エリザお嬢様!!」
「レオナルド!!」
「お久しぶりです、エリザお嬢様」
「えぇ、本当に。元気そうで良かったわ」
「私は相変わらずでございますから」
「そうみたいね。エリアス様、紹介いたします。私が小さい頃から我が家を支えている執事のレオナルドです」
「これはご挨拶が遅れました。執事のレオナルドと申します」
「エリアスです、初めまして」
「それからこちらがエリアス様の奥様で、オルガお姉さま、アリッサお姉さま、ノエルお姉さまです」
「お姉さまでございますか、お嬢様?」
「えぇ、そうです。お三人はエリアス様の奥様であると同時に、私のお姉さまなのです!!」
「わかりました、お嬢様」
そしてレオナルドさんはアリッサさん達3人に挨拶をした。
オルガさんを見て、一瞬曇った顔をしたがさすが執事さん。
その後は普通に話していた。
オルガさんは獣人だ。
貴族や富裕層になればなるほど偏見は持たれる。
格差社会がないのは、開拓村の中だけか。
俺達は馬車に乗り公爵家に向かう。
しかし6人乗りの馬車に6人か…。
せ、狭い…。
馬車は走り出した。
馬車の中はエリザちゃんが気を利かしたのか、レオナルドさんと話している。
さすができる子。
そんな話をしている間にどうやらお屋敷に着いたようだ。
門に入りしばらくしてから馬車が止まった。
馬車から降りると使用人の人達が出迎えてくれた。
二階建ての大きな屋敷だ。
俺が眺めているとエリザちゃんが、分かったような口ぶりで言った。
「エリアス様のお屋敷に比べたら、実家の我が家など犬小屋並みです」
え?そんなこと思ってないけど。
「いいえ、そうなのです。わん、わん、わ、わんなのです」
犬のお巡りさんか?!
「私はエリアス様と出会い、新しい世界を知りました」
ま、まだ何もしていませんけど…
「おぉ、では遂に本当のご夫婦に…」
はい、そこ!!
レオナルドさん、どさくさに紛れて入っこない。
エリザちゃんはまだ11歳ですよ。




