第160話 線路は続くよⅠ
俺は今、ドゥメルグ公爵家を訪れている。
公爵と蒸気機関車の件について打ち合わせ中だ。
以前、アレン領の街中に蒸気機関車を停車させる『駅』を創る条件として、王都から東にあるこのアレン領と西にある王都隣のウォルド領の間に線路を引き、蒸気機関車を提供することを約束していた。※第138話参照
ウォルド領は俺の妻エリザちゃんの父、義父のノルベール公爵領だ。
ノルベール公爵とドゥメルグ公爵の間で話がつき、線路を引くことに手紙のやりとりで話がついた。
「しかし木製自転車と言う物は早いな。ここから馬車なら5~6日かかるところを、手紙を出して1日で着くなんて。しかも往復3日あれば、返事が返ってくるとは…」
そう言うとドゥメルグ公爵は、ノルベール公爵からの返事の獣皮紙を見ている。
木製自転車の販売に先駆けアイザックさんにお願いされ、先日アバンス商会に販売したばかりだった。
アバンス商会はリヤカーを使い力のある獣人や異種族と呼ばれる人達を雇い、運送や荷物配達、引っ越しも行う商売を始めている。
東端のウォルド領から、西のアレン領まで約120kmはあるだろう。
時速10~11kmで走り続けることができる彼らなら、日の出と共にウォルド領を出れば夕方には着くだろう。
今まで偏見の目で見られていた彼らにも、やっと陽の光が当たる時が来たのだ。
アバンス商会会長のアイザックさんは、彼らにとても感謝されているとか。
今は体力面での雇用でもいずれは人として、彼らも街に受け入れられるようになればいいと思う。
ゼクシーかあさんからは文明が低迷してもう千年近く進んでいないと聞く。
俺がその新しい風になって欲しいと、言われたのが転移の目的。※第1話転移参照
しかし蒸気機関車は、時期早々だったかもしれない。
高度な技術は、習得し製造するまでに時間が掛かかるだろう。
だけど今ある技術でやって行けそうなことから提供を始めればいいかな。
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これは何の音か?
『道路整備』の音だ。
俺達はウォルド領に線路を引きながら速足で進んでいる。
以前、王都に行くときに行ったストレージと創生魔法を使った『道路整備』だ。
メンバーは俺とアリッサさん、オルガさん、ノエルさん。
エリザちゃんとメイドのネリーさん。
線路を引くためには、現場に来ないといけない。
そのため、東のアレン領から西のウォルド領に向けて、蒸気機関車用の線路を引きながら歩いている。
公爵達の間で話が付いた以上、約束は守らないとね。
『道路整備』の音をストレージに収納し、静かにする事も可能だ。
だがこの音に驚いて盗賊や魔物が襲ってこないのも事実だ。
だから『道路整備』中は音をだすようにしている。
俺は妻の1人であるエリザちゃんの実家、王都の東隣ウォルド領にどうせ行くならとエリザちゃんも一緒に向っている。
俺の所に来てから1年は過ぎている。
この世界では幼少期に婚約し15歳の成人で嫁ぎ、死ぬまで実家に里帰りすることもないのが普通だ。
でもエリザちゃんも11歳になったとは言えまだ子供だ。
親が恋しいだろう。
だからこう言う機会でもないと帰れないと思い一緒に来ている。
移動はオルガさんの引く幌付きリヤカーだ。
席は2列の4人乗りで荷台も後ろに付いている。
前の席にはノエルさん、エリザちゃんとメイドのネリーさんが乗っている。
俺のやや左前には護衛を兼ねてた、アリッサさんが木製自転車に乗っている。
アリッサさん達は以前俺が整備した街道を移動し、俺は街道から並行した20mくらい離れたところから線路を引きながら移動中だ。
やはり今後のメンテナンスを考えたら、線路は街道から近い方が良いからね。
驚いたのは以前とは比べものにならないくらい、街道を通る人が多いことだ。
アバンス商会の黒猫マークのロゴが入った宅配便を何台も見かける…。
荷物は綿製品かな?
え?この匂いはカレーの調味料か?
どれだけ手広くやっているのだろう。
そう言えば以前来た時にテオドーラと言う村があったな。
寄って行こうか。
いくら街道が整備されたといっても、この人数ならどこかで一泊はしないと。
丁度、これから日が暮れ始めるから今日はここで休んで行こうか。
またムッカ(牛もどき)のお乳とチーズをまた分けてもらおうかな。
そのことをみんなに話した。
アリッサさんとオルガさんは以前に一緒に来ていたし、美味しい濃厚なクリームシチューが食べれると話したら賛成してくれた。




