第152話 ドワーフ
「見ての通り俺達は…」
マルコス親方が口を開く。
「山小人だ」
あぁ、やっぱり。
今回も小人族という、オチはもう無理があるよね。
「えぇ、もちろん初めから分かってましたよ」
「おお、そうか。時々、小人族と間違える奴もいるからな」
「あは、あははは!」
「あはははははは!」
「…………………………。」
「さて、移住の返事をする時はどうすればいい?」
「それでは約束をした日に、また来ましょうか?」
「では2日後にまた会おう」
「どこで待ち合せましょうか?ここにしますか」
「ここの場所は、俺達の住居から少し遠いんだ」
「そうですか。ではどうしますか?」
「ここから北に行くと森が切り開かれ道が出来ている。その道に細長い鋼材が引かれ延びている。知っているか?」
「えぇ、線路ですね」
「線路だと?」
「蒸気機関車が走るための道ですよ」
「あの煙を吐くBloody black devilを知っているのか?」
「血塗られた黒い悪魔?」
「あぁ、そうだ。サーベルウルフの群れを、あっという間に肉片に変えた化け物だ」「あれは蒸気機関車という乗り物ですよ」
「乗り物だと、あれがか?!あんな戦闘力の高い乗り物があってたまるか!」
「本当です。あれは物や人を運ぶための乗り物です。ですがアスケルの森の中を走るので、武器を装備しているだけですから」
「あれだけの機動力があれば、大型の魔物でも対応できるぞ。あれもお前が造ったのか?」
「ええ、そうです」
「「「ではお前の村に行けば、あの蒸気機関車とやらに乗せてくれるのか?触らせてくれるのか?作り方を教えてくれるのか?」」」
マルコス親方達は興奮が収まらない。
「勿論ですよ。元々ドワーフの方は鍛冶が得意と聞いています。出会えたら整備を、お願いしようと思っていましたから。それだけではなく武器や、お鍋や生活用品も造ってもらおうと思っています。どうでしょうか?」
「「「 や、やらせてくれ!やらせてくれ!ぜひ、やらせてくれ!! 」」」
筋肉隆々の豊かな髭を伸ばした、身長130cmくらいの3人の男が、やらせてくれ!やらせてくれ!と言いながら俺に迫る!
俺は無意識に後ろに下がり、右手でお尻を守った。
「な、なにをやっているのだ。お前は?」
「い、いえ。なんでもありません」
「では待合場所だが、そこに大きな木がある。そこにしないか?」
「いいですよ。ではそこまで目印を見に行きましょうか」
「おう、そうだな」
俺達は森の中を歩いて、見印になる木がある場所まで進んでいる。
マルコス親方達は身長が130cmくらいしかない。
その分、俺と比べると歩幅が小さく、森の中を歩くのが大変そうだ。
しばらく歩き続け、やっと目的の場所に着いた。
「はあ、はあ。やっと着いたな。ここだ」
マルコス親方達は、息が上がって大変そうだ。
だが困った事が起きた。
その大きな木というが、俺には分からないのだ。
マルコス親方達は大きな木でも、俺には他の木と同じ普通の木に見えるからだ。
仕方がないのでストレージの中で藁で紐を編んだ。
そして目印の木に巻き付けた。
これならわかるだろう。
「何をしているのだ?」
「こうすれば、もっと分かりやすいと思いまして」
「まあ、そうだな。それから俺達は鍛冶をする種族だ。移住に関して納得させるだけのものを見せたいのだが。何かないか?」
「見本になる物が欲しいということですね。良いですよ、分かりました」
俺は『創生魔法』で、マルコス親方達に合う大きさのバスターソードを3本創った。
「はい、どうぞ」
「「「 おぉ、これは!! 」」」
俺からバスターソードを渡された3人は驚いている。
「これは?」
「見本です。持ち帰ってお仲間に見せてください。差し上げますから」
「も、もらえるのか」
「こんなに凄い剣を…」
「俺達に…」
「さすがに鞘までは創れませんけど。抜身ですみません」
「い、いや。そんなことは些細な事だ」
「皆さん方が何人いるのかは分かりませんが、 荷物は俺のマジック・バッグで持っていけますし、領までは蒸気機関車に乗って行けば良いですから」
「おぉ、Bloody black devilに乗せてもらえるのか」
「それは楽しみだ!」
「では2日後にまた会いましょう」
「あぁ、また会おう」
そう言って俺達は別れた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
岩の隙間の入り口から中に入って行く。
俺達、山小人は山岳地帯の内部に住居を構えて生活する種族だ。
「ただいま帰ったぞ」
「お帰りなさい、マルコス親方」
戻った3人はみんなに歓迎された。
「レッドクラブは、どうでしたか?」
待っていた住民の1人が言う。
「あぁ、レッドクラブはもう通り過ぎた。というよりほとんどが討伐されたよ」
「討伐された?」
「あぁ、エリアスという奴が居て…」
外に出てあったことをマルコスは話始める。
レッドクラブの行動を観察しにでかけたこと。
そしてレッドクラブを倒し、鍋で茹でて食べていた男が居たこと。
そのレッドクラブがとても旨く、その時に出してもらったスティルワインというブドウから造った酒の口当たりがとてもよく、レッドクラブに合っていたこと。
男が持っていた刀がとても美しく、目を見張るものがあったこと。
証拠としてバスターソードを3人分、もらってきたこと。
そのバスタードソードを手に取り、住民達は驚いている。
鍛冶を自負する自分達の技術でも、とても真似できない代物だったからだ。
とても美しく芸術的な輝きをしていた。
石炭という鉱物があれば、これができるという。
そして鉱山を持っており鉄、鋼、銀、銅、鉛が使い放題だそうだ。
だが解せないことがある。
なぜ、自分達の身長に合うバスターソードを3本持っていたのかだ。
ドワーフは人族に比べ身長が低い。
人族用のバスターソードなら長すぎる。
だが各自の身長に合うように3本共、微妙に長さが違うのだ。
まるで3人の身長に合わせたかのように。
いったいどうやって、事前に分かったのか?
そしてサーベルウルフの群れを一瞬で肉片に変えた、血塗られた黒い悪魔を造った男だと。
その血塗られた黒い悪魔の整備を、俺達に任せてもらえると。
住民達は興奮した。
綺麗な武器が造れるだけではなく、超破壊兵器の整備も任せてもらえるとは。
そしてそれを研究し、更に高みを目指すのだ!
村は高い塀で囲み、小麦や大麦、野菜も作って生活している。
住民は人族の他にダークエルフ、小人族もいる。
異種族に対しての偏見もない様だ。
この出会いは必然。
鍛冶の神様が、そのエリアスという男にめぐり合わせてくれたのだ。
機会を逃してはいけない。
誰もがそう思い全員一致で移住することに決めた。
そして返事をする2日後を、指折り数えて待つのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「と、いう事があったんだよアリッサさん」
「でも良かったね、エリアス君。ドワーフが見つかって」
「えぇ、これで鍛冶仕事もできるようになるから」
「今までエリアス君1人でやっていたからね」
「だから、来てくれると良いんだけど」
「必ず来てくれるわよ。この村に来たくない人なんて居ないから」
そう言いながらエリアス達は、茹でたレッドクラブを食べているのであった。
初めて食べるレッドクラブに住民達は当初、戸惑っていた。
だがエリアスがバクバク食べ始めると、他にも食べる人が出てきた。
そしてあっという間に、レッドクラブの旨さにみんな気づいた。
そしてレッドクラブを茹でたダシ汁に、野菜と蟹の身を入れ煮込んで蟹汁にした。
今度は身を焼いて食べ、その晩はみんなで蟹パーティーを堪能した。
みんな知らなかった。
この領で王都以上の贅沢な食事をしているのだという事を。
そして益々、この領以外で生活できなくなっている自分達に気づかなかった。




