第153話 生活の基礎と偏見
あれから2日経った。
俺はダークエルフのディオさん達と蒸気機関車に乗り、ドワーフのマルコス親方達と約束をした場所の近くまで来ていた。
そこから俺は歩いて約束の場所に向かった。
すると20人くらいのドワーフ達が居るのが分かった。
「おいエリアス。みんな連れて来たぞ」
マルコス親方が人波の中から出てきた。
「こんにちはマルコス親方。これはどうしたことでしょうか?」
「な~に。みんなに話したら移住したいという事になってな」
見るとそれぞれ手荷物を各自持っていた。
「本当ですか。それは良かった。それでは、行きましょうか」
そして漆黒の蒸気機関車の姿が見えてくると、みんな興奮しだした。
「す、凄~い!」
「大きい~」
「こんな大きな物が走るのか」
ドワーフの人達はまるで子供のように、目を輝かせて蒸気機関車を見ている。
「どうやったら動くんだ?」
「動かし方を教えてくれ」
みんな口々に言いはじめる。
「蒸気機関車を動かす側は、そんなにたくさんの人は乗れません。だから順番でよければ見ることは出来ますから」
「おぉ、それでいいぞ」
「順番か…」
「ではみなさん、客車に乗ってください」
ドワーフ達がぞろぞろと客車に乗り込む。
「では、みなさん。席に座ってください。出発しますから」
俺はマイクを使い、機関主側に居るイーヴァインさん達に出発するように伝えた。
〈〈〈〈〈〈〈〈 ポワォ~~ン!! 〉〉〉〉〉〉〉〉〉
汽笛の物凄い大きな音が辺りに響く!
シュポポポ、シュポポ、シュポポポ、シュポポ、シュポポポ、シュポポ
シュポポポ、シュポポポ、シュポポ、シュポポ、シュポポポ、シュポポ
そしてC61は走り出す。
「こ、これは凄い!」
「速い~」
ドワーフ達はみんな驚いている。
そして彼らは交代で蒸気機関車側に行き、操作をしているところを見学した。
マルコス親方達はとても興味を示し、どうやって動くのか聞いてくる。
石炭を燃やしてお湯を沸かし、発生した蒸気で動輪を回していることを説明した。
「なんと湯気を利用しているとは?!」
「そんなことは思い付かなかった」
「エリアスがこんな凄いことを考えたのか?」
「いいえ、マルコス親方。俺が考えたわけではありません」
「では誰が?」
「それは言えません」
「それはそうだな、そんな簡単に技術を教えることはせんだろう」
彼らを纏めているのはマルコス親方で、長老的な存在はいないそうだ。
彼らは全員で21人。
大人の男性10人、女性7人、子供が4人で大人の女性7人は既婚者だ。
だが女性と男性の区別がつかない。
俺はマルコス親方と同じ席側に座り、向き合っている。
隣に座っているマルコス親方の奥さんを紹介されたが、言われないと女性と分からないくらいだ。
みんな男女共に髭を生やしている。
よく見ると女性は男性よりやや体が小さく、鼻の下の髭を剃っているようだが。
開拓村まではまだ時間がかある。
俺はストレージの中でスティルワインを『創生魔法』で造り振舞った。
「開拓村に着くまでの間、ささやかですが楽しんでください」
「おう、これはこの前飲んだワインとかいう酒か」
「えぇ、そうです」
「弱い酒だが美味しかったな」
みんなスティルワインを気に入ったようで楽しそうだ。
俺はマルコス親方に他の種族の事を聞いてみた。
すると遠くに見かけることはあっても、交流は無かったという。
「エリアス、お前はこの森で何をやりたいのだ?」
「まあ、あなた。エリアス様と言わないと駄目でしょう。私達の領主様なんだから」
マルコス親方の横に座っている奥さんのエリーズさんが言う。
「俺は別に構いませんよ。堅苦しいのは苦手ですから」
「なら、これからも気軽に話すぜ」
「えぇ、それでお願いします。さっきの質問の答えですが、そうですね。俺は面白楽しく、みんなと生活できていければいいと思ってます」
「面白楽しくか、それが出来ればいいが難しいな」
「その通りです。その為には生活の基礎を固めなければなりません」
「生活の基礎か」
「えぇ、基礎が出来れば生活も安定し安心して暮らしていけます。でも1人では出来ません。だからみんなで力を合わせ、10年、20年後の未来のために頑張るのです」
「未来のためにか。森に暮らしていると食っていくのに精いっぱいだ。そんなことは考えられなかった。だがそれを目指しているなんて。だがなぜ異種族なんだ?」
「どういう意味でしょうか?」
「人族のお前がなぜ異種族と関わる」
「そうですね。ここを開拓した理由は、人の手が入っていない資源がたくさんある土地が眠っている事。そして働きたい人がいるなら差別はしない、という事です」
「差別はしないと言うのか」
「はい、人族は繁殖力が強く大陸に広がり数で勢力を広げました。そして異種族と言われる人達は、人族より寿命が長い代わりに繁殖力が弱い。だからどうしても数に負けてしまう」
「まあ、我々ドワーフも確かに人族よりは寿命が長いはずだ」
「言葉を話し意思の疎通ができるなら同じ人類だと思います」
「人類だと?」
「えぇ、元は同じ種類で進化の過程が、違っているだけなのかもしれません」
「だから偏見はないというのか」
「そうです。もしドワーフの繁殖力が人族より強ければ、この世界を纏めているのは人族ではなくドワーフかもしれませんから」
「うぅ~ん。そうかもしれん」
「それにそんな小さいことは、気になりません」
「小さいことだと?!俺達は確かに小さいが…」
「身長のことではありません!!世の中には色んな種族が居て、その人達と世界を分かち合っていると思っていますから」
「世界を分かち合う、そんな考えの奴がいるとは。気に入った。我らドワーフ、エリアス、いいやエリアス様に忠誠を誓おう!」
「そ、そんな大げさな」
それから話は進んだ。
ドワーフは妻帯者は7組、独身は3名。
では家は10軒必要だ。
マルコス親方と話をし炉を造る関係で、広い作業場が欲しいという。
それなら各自の住居とは別に、広い作業場を作る事を約束した。
そしてドワーフは男女に関係なく、鍛冶仕事ができると言う。
根気仕事に向いているようだから、ワイン造りもやってもらおうか。
そのことをマルコス親方に話したら、眼を輝かせ喜んだ。
全部、自分達で飲む気じゃないだろうな。
セトラー領に着き、住民に集まってもらいみんなにマルコス親方達を紹介した。
ドワーフ達の家は鍛冶をすると音や黒煙がでる関係で、俺達の住居からすこし離れた場所にログハウスを作った。
そしてそこにちょっとした体育館くらいの作業場を建てた。
炉はドワーフ達で各自、造るそうだ。
蒸気機関車を勉強させてほしいと言われ、格納庫に蒸気機関車を出しておいた。
どちらにしろ整備に関しては、マルコス親方達に任せるつもりだったからね。
できれば行く行くは整備だけではなく、蒸気機関車の製造もお願い出来れば嬉しい。
加工技術の問題があるから先は長いだろうけどね。
その夜は歓迎会となり、飲めや歌えの楽しい夜だった。
お酒が入るにしたがって場は盛り上がって行く。
ドワーフ、小人族、ダークエルフの人達が集まり話している。
蒸気機関車を自由に走らす為には、どうしたらいいのか、更に戦闘能力を上げるにはとか、それよりこの領の防衛力を上げるのが先だとか、城壁の周りに深くて広い堀を二重に作るとか、小さい声でヒソヒソ話しているのが聞こえてくる。
みなさん、誰と戦うのですか?




