第132話 商会は飛躍する
最近、俺達家族は開拓村で寝泊まりをしている。
ここを中心に生活したいからだ。
そして久しぶりにアレン領にやってきた。
以前、住んでいた屋敷は完全にアミューズメント化している。
俺達が住んでいた部屋の3階以外は、宿泊施設にし24時間の営業になったという。
勿論、従業員も増やしている。
アルバンさんに任せきりだが、やるものだ。
シャルエル教から派遣されてくる人に、作業を依頼することが多くなった。
作業場も狭くなりそれならと、シャルエル教内に土地を借りて店を出したが…。
俺はシャルエル教会に向かう。
入り口には、大きな門があり高い塀に囲まれている。
入り口に人が駐在する小屋までもある。
どこにエリアス商会はあるのだろう?
立っている駐在員さんに聞いてみた。
「エリアス商会に行きたいのですが、どこにあるのでしょうか?」
「社員証を見せてください」
社員証?
以前に来た時も、急に大きくなっていて驚いたがこれはなんだ?
「社員証ですか?持っていません」
「では中には入れません」
「ここはシャルエル教ではないのですか?大聖堂はどこにありますか」
「なんだ参拝に来たのですか。ここは複雑で分かりづらいですからね」
急に優しくなり駐在員は、構内の地図を描いた羊皮紙を見せてくれた。
敷地がいつの間にか広くなっており、大聖堂の他にエリアス商会。
エリアス商会の倉庫が多数あり、まるで工業地帯だ。
「分かりました。参拝に行ってきます」
「さあ、どうぞ!!」
参拝ならいいんかい?!
ここに立っている意味がわからん。
地図に書いてあったエリアス商会の場所に来ている。
しかし移動が大変だ。
どれだけ構内が広いんだ?
3階建てのお屋敷の様な建物だ?
扱ってるの『マヨネーズ』とか『味元』だよね?
なぜ、こんな大きな建物と工場が??
店の中に入った。
「いらっしゃいませ!」
18歳くらいの女の人が出てきた。
「参拝帰りの見学ですか?それとも小売り希望の方ですか?申し訳ありません、どちらもやってないんですよ」
何を言っているんだ?
自分の店に入るのに、これほど面倒だとは。
「見学?それはどう言う事でしょうか」
「あぁ、違うのですね。最近、有名になったエリアス商会を参拝の帰りに見に来る人が多くて。または『マヨネーズ』や『味元』を小売りしてほしいとかですかね?」
「アルバンさんはいますか?エリアスが来たと言えば分かります」
「社長ですか?お約束はしてますか。それにお店の名前と同じなんですね」
「約束はしてません!自分の店に来るのに約束が必要なのですか?」
少しイラッとして語尾がきつくなった。
話がかみ合わない。
店員として大丈夫なのか?
「自分の店?妄想癖でもあるの?あなたみたいな子供が…」
たしかに俺は黒髪、黒い瞳で幼く見られるが。
どうしたら取次いでもらえるんだ?
「だから俺はアルバンさんに会いに来たんだ。取次いでもらえば分かるから」
「あなたみたいな子供が、どうして社長を知ってるの?」
さっきから堂々巡りだ。
これはあれか?
あなたはどこまで我慢できますか?ゲームか。
「エリアス様?」
見るとアルバンさんの奥さんのアルシアさんだった。
娘のアディちゃんも一緒だった。
「アルシアさん、アディちゃん。お久しぶりです」
「奥様、この方をご存じなので」
「失礼ですよ、エレーナ。この方がエリアス社長よ」
「エ、エリアス社長ですか?!」
「それに主人のアルバンは社長ではありませんよ」
「えっ?!そうなのですか。こ、これは失礼致しました」
普段、俺が居ないからアルバンさんが社長だと思っていたのだろう。
エレーナと呼ばれた人は驚いた顔をしている。
「アルバンさんと話をしたいのですが」
「はい、アルバンは社長室にいます。ただいまご案内致しますわ」
そう言うと3階の立派な客間に案内された。
「お待ちください。ただいま主人を呼んでまいりますから」
アルシアさんは部屋を出ていき、暫くすると部屋にアルバンさんが入ってきた。
「これは、これはエリアス様。ようこそおいで下さいました」
「はい、本日帰ってまいりました」
「社員は増えたのですか?」
「はい、社員と教会からの派遣社員を合わせると50人になりました」
「50人ですか。知らない内に大きくなりましたね」
驚いた、そんなに人が雇えるのか?
どれだけ調味料を作って売っているのか?
「まだ増やすことはできますか?」
「はい、可能ですが。さすがにこれ以上、人を増やしても」
「いえ、そうではありません。ここで『味元』、『醤油』、『ソース』を作ろうと思います」
「ほ、本当ですか!そうなれば更に人が必要になりますね」
「ただ『醤油』、『ソース』は発酵させ熟成するまでに2~3年かかります」
「発酵?熟成?」
「時間が経つと腐るのが腐敗。有効成分に変わり食べられるのが発酵です」
「良く分かりませんが…」
「製品になるのに2~3年は掛かると言う事です」
「2~3年ですか!」
「はい、今から作り出しても販売できるのは2~3年後です」
「そんなに時間が掛かるんですか」
「はい、その分働く側も熟練度が必要になります。そのため、真面目で持久力がある人が向いています。その人達は普段は『味元』メインで仕事をして頂き、兼務で『醤油』、『ソース』を作ることになります」
「適任者がいるのか、ヨハネス大司教様に相談してみましょう。では早速、大聖堂に行きましょう。きっと喜びます」
なぜ喜ぶんだ?
なにか嫌な予感がする…。




