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第133話 キックボード

 俺とアルバンさんの2人は、エリアス商会を出て大聖堂に向かった。

 今度来た時に分かるように、社員証を俺の分も作って置いてくれるそうだ。

 参拝者も多く関係者だと分かるように作ったようだ。

 毎回あれでは疲れるからね。


 アルバンさんのことを、社長だと思っている人が多く困っているみたいだ。

 俺が普段いないからからね。

 それならアルバンさんが『社長』で俺は『会長』と言う事にした。

 その方が面倒がないからね。




 大聖堂はすっかりリフォームされ綺麗になっていた。

 歴史を感じる建物だ。

 そして窓のステンドグラスがとても綺麗だ。


「まぁ、アルバン様。どんな御用でしょうか」

 顔見知りなのかシスターが話しかけてきた。

「はい、大司教ヨハネス様にエリアス様がお会いしたい、とお伝えください」

「エリアス様ですね、お待ちください」

 シスターは一旦下がる。

 しばらくすると早歩きで、誰から急いで歩いてくる足音が聞こえた。



 ドタ、ドタ、ドタ、ドタ、ドタ、

  ドタ、ドタ、ドタ、ドタ、ドタ、ドタ、


「エ、エリアス様~」

 はあ、はあ、はあ、息を切らしている。

 これが可愛い子なら嬉しいが男では…。

 大司教ヨハネス、55歳、独身、やや小太り。

 痩せろ!そう俺は思った。


「ヨハネス大司教様。突然お伺いして申し訳ありません」

「いえ、いえこのヨハネスに会いに来て頂けるとは光栄です」

 違います。なにを言っているんだ、このおっさんは?


「さあ、こちらにどうぞ」

 俺達は客室に通された。


「早速ですが今日伺ったのは、働く人を増やしたいのです」

「ほう、さらに人を増やしたいと…」

「そうです。ヨハネス大司教様」

「ヨハネスで構いませんよ。他人行儀な…。」

 他人です。おっさん…。


「ではヨハネス様。『味元』、『醤油』、『ソース』をここで作ろうと思っています。ただ『醤油』、『ソース』に関しては製品になるのに2~3年は掛かり、働く側も熟練度が必要になります。そのため、真面目で持久力がある人を派遣してほしいのです」

「真面目で持久力ですか」

「はい、それと提案があります。教会からの派遣雇用が3年経過した場合、勤務評価により直接、社員として雇いましょう。そうする事により働く側も目標ができ、真面目に働くでしょうから」

「社員雇用ですか」

「その場合は教会にも、給与の3ヵ月分くらいの寄付は致しますから」

「あ、ありがとうございます。至急探します」

「ただ守って頂く事があります」

「どんな事でしょうか?」

「『味元』、『醤油』、『ソース』の作り方は『マヨネーズ』と同じように社外秘になります」

「も、もちろんです。エリアス様を裏切るようなことがあれば、両手両足の爪を剥ぎ足の腱を切りその都度、回復魔法で直しまた爪を剥ぎ…イヒヒヒヒヒ~!!」

 こ、怖いよ~!


「定期的に商会に来ますので、その時に製造方法を教えますから」

「な、なんと。エリアス様、手ずから教えて頂けるのですか。それなら私が…」

 ジィ~~~!!

 何を馬鹿なことを。


 

 〈〈〈〈〈 パンッ!! 〉〉〉〉〉

 もう誰も突っ込まなくなった、ハリセンで思わず叩いてしまった。

 は?ここは?みたいな顔をしない!!


「俺が教えるまでの間は『マヨネーズ』製造を手伝ってもらえば良いですから」

「分かりました。エリアス様」


「それから構内が広すぎて歩くのも大変ですから、こんなのはどうでしょう?」


 俺はそう言いながら『創生魔法』で、余った鉱物を使いあるものを創った。

 それをストレージから出して見せた。

 T字のハンドルの下に板状の足を載せる場所があり、前後に小さい車輪がある。


「エリアス会長、これはなんでしょうか?」

「これはキックボードと言う物ですよ。アルバンさん」

「キックボード?」

「はい、では使ってみますね」


 俺はハンドルを握りキックボードに片足を載せ、もう片方の足で漕ぎ出す。

 そしてブレーキが無いので、止まる時には降りれば止まれることを話した。

 急に止まらなければいけない様な、使い方はしていけないことも説明しておいた。


「ほう、これは良いですね、木製で作れそうです。後ろに荷台を付ければ配達もできそうです」

 デリバリーか?


「これをシャルエル工房で製造をお願いします。今までは俺が作っていましたが、頻繁に来れませんから。今後は鍛冶や木工もそこでお願いしたいと思います」

「私にお任せください。すぐに適任者を探しますから」

「助かります、ヨハネス様」

「そしてリヤカー、農機具として鉱物の鍬(くわ)や鋤(すき)、※千歯扱(せんばこ)きも、ここで作りましょう」

「農機具でしょうか?」

「えぇ、そうです」


 この世界の農機具の大半は木製で、刃先だけでも鉄製ならましなほうだ。

 木の刃先を固くするために、適当に焼きを入れたものが使用されている。

 これでははじめから、土を深く掘り起こすことは無理だ。


 どの家も牛や豚が飼われ、森林に自由に出入りさせ放牧している。

 穀物生産よりもむしろ、家畜飼育に重点が置かれるやり方だ。

 畜産するにも人口に対して家畜の数が少ない。

 これでは混合農業を始めても、効果はそれほどでない。

 穀物生産をメインにしていかないと駄目だ。


 それに必要なのは鉄製農具の普及だ。

 鍬(くわ)や鋤(すき)、いいや鋤(すき)ではなくてシャベル、そして土地を耕すことができる重い鉄製の犁(すき)だ。

 鉄製の犁(すき)を2~4頭の牛や馬に引っぱらせる。


 これがあれば森林を切り開くことが容易になり、耕地面積が飛躍的に増大する。


 俺は鉄製の農機具のことをヨハネス様に話した。

 そしてストレージから羊皮紙とペンを出し鍬(くわ)やシャベル、そして土地を耕すことができる重い鉄製の犁(すき)を書いて説明した。

 鍬(くわ)は土を掘り動かす。

 シャベルは地面を掘り土砂をかき寄せたり、土の中の雑草の根を切るのに使う。

 鉄製の犁(すき)は開墾するのに使うことを話した。


「確かに農機具が鉄製になれば、効率もよくなるでしょう。ですが鉄製の農機具は高価で農家の負担が多くなります」

「それでは貸すことにしましょう。収穫時に金銭や大麦や小麦を使用料として頂ければ結構です」

「それは良い!そう致しましょう」

「助かります、ヨハネス様」

「そしてその他にリヤカー、人力車、鍬(くわ)や鋤(すき)、千歯扱(せんばこ)きも、ここでお願いします」

「ありがとうございますエリアス様。当教会にお任せください、これで信徒さんの仕事が出来ます。信徒さんにはたくさんの業種の方がいますから」


 仕事請負業に人材派遣をしている教会か?

 ある意味、凄いな。


 ここまで来たんだ。

 参拝していこうかな。


※犁(すき):フレームに固定された垂直の木の棒の先端を尖らせ、地面に刺し、引きずり重さで土地を引っ掻くように開墾するのに使われる。


※千歯扱(せんばこ)き

 木製の台に櫛状の歯を取付けて、その歯の間に稲や麦の束を通し、稲穂からモミの部分をしごき落とす農具。

 未亡人の仕事である稲こきを取り上げる意から後家倒(ごけだお)しとも呼ばれた。


 読んで頂いてありがとうございます。

 物語はまったり、のんびりと進みます。

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