【第418話】潰滅を呼ぶ閃光
爆発の閃光が収まり、爆炎が薄れてゆく。
「あ……」
そこには無傷のミリアムと、彼女を守るように展開された、日の光を反射して輝く透明の盾。
「アンチマテリエルキャノン!」
ミリアムを狙った三体の従魔竜を一瞬のうちに屠り、シリューはミリアムを抱いて包囲を突破した。
「無事か、ミリアム」
「は、はいっ。あの、ありがとうございます、ごめんなさいっ。助けられてばっかりで、私……」
シリューの腕の中で、ミリアムは肩をすぼめる。
「謝らなくていいよ、お前のせいじゃないし、助けられるのはお互い様だろ?」
「でも、あの……」
どう考えても、従魔竜たちはミリアムを集中して襲ってきた。
取り囲まれたのも、彼女に落ち度があったわけではない。
「たぶんだけど、聖魔法を警戒してるんだろうな」
従魔竜の群れから一定の距離を保ち、シリューはミリアムを放す。
「それって、聖魔法が苦手って事でしょうか?」
「まあ、そう言えなくもないかな」
瘴気から生まれる魔物は、例外なく聖魔法や光魔法に対して拒否反応を示す。
「体は馬鹿みたいにでかいけど、ヤツも魔物に変わりはない」
「え……?」
首を傾げるミリアムに、シリューは不敵な笑みを浮かべて見せる。
「つまり、魔物なら絶対に倒せるって事。今までだって、そうだろ? 今回だってそうなるさ」
「は、はい、そうですね!」
具体的な方法は、戦いの中で見出せばいい。
「戻るぞ!」
「はいっ」
シリューとミリアムは、再び戦列に加わる。
地上では勇者たちを援護するための戦車隊が駆け付け、従魔竜の群れに砲撃を浴びせていた。
騎士団に守られた魔導士団は、胴体部分への攻撃を重ねている。
個々の魔法で与えられるダメージは掠り傷程度でも、積み重ねれば多少は動きを阻害できるかもしれない。
それを信じて、魔力の続く限りひたすらに魔法を撃つ。
丘の上に展開する魔導榴砲と魔法弩弓は、更に苛烈な攻撃をヴリトラに加えていた。
両方を合わせて既に百発以上撃ち込んでいるだろう。
災害級のサウラープロクスなら五十体、災厄級のイロウシュットでも数体は倒せるほどの数だ。
「次弾装填、急げ!」
「装填完了!」
「撃て!!」
魔法弩弓の矢が、魔導榴砲の魔力弾が、ヴリトラの背に突き刺さり爆発する。
その度に鱗が砕け、皮膚を抉り焼き焦がす。
個人の魔法よりも遥かに強力だが、それでも1000mを超える巨体には微小な傷でしかない。
大した効果も見られず、足止めする事さえできないかと思われ始めた時。
ヴリトラの動きに変化が起こった。
シリューたちが張り付いて攻撃しているのにも構わず、右の首を大きくもたげたのだ。
砲撃を続ける魔導砲機部隊に向けて開いた口に、エネルギーが収束を始め赤黒い輝きを放ち空気が歪む。
「来るぞ! 結界展開!!」
簡易結界と聖域を張り、エネルギー波に備える。
「不味い! ほのか!」
直人は地上を振り返って叫んだ。
「ダメっ、遠すぎるよ!」
地上から右の頭までは300m。
「あたしがっ!」
急降下した有希が、ほのかを抱えてヴリトラの頭まで上昇。バリアの有効距離ギリギリまで近づく。
「この辺でいいよっ」
「なに!? 肌がびりびりする」
50m程離れているにもかかわらず、収束されたエネルギーによる熱波と放電が肌を刺す。
「ほのか、いける?」
「大丈夫、任せて。バリアーッ!!」
エネルギー波の射線を遮るように、ほのかはヴリトラの口の前に完全防御の障壁を張った。
「ユニヴェール・リフレクション!」
シリューがバリアに理力の盾を重ねる。
「これでどうだ!」
直後。
収束されたエネルギーが、プラズマを伴って撃ち出され、ほぼゼロ距離に展開したバリアに衝突、強烈な光と熱が辺りを包む。
「いける!?」
だが、一瞬防ぎ切ったかに見えた二重の盾も、圧倒的な破壊力のエネルギーに耐えられず僅か数秒で崩壊する。
バリアを打ち破った閃光は、丘の上に並んだ魔導砲機部隊を次々と飲み込み、凄まじい爆発を起こした。




