【第417話】躱せない!
魔法弩弓の矢と魔導榴砲の魔力弾が、ヴリトラの体表に次々と着弾し爆発する。
「先ずは右を叩きましょう!」
「ああ、分かった!」
爆音の響く中、シリュー、直人、ミリアム、有希、クリスティーナの五人は空中に舞い上がり、右の頭へ攻撃目標を定める。
従魔竜を吐き出す左も厄介だが、右の口から発射されるエネルギー波は連合軍を壊滅に追い込み兼ねない。
一発も撃たせたくないが、さすがにそれは無理だろう。
何としても、連発される前に右の頭を破壊する。
「換装」
シリューは白の装備を纏い、双剣を抜き放つ。
「メビウス・ディストラクション!」
黄金に輝くメビウスリングが、行く手を遮る従魔竜を切り裂き、空中に道を開いた。
「今だ、突っ込むぞ!」
「オッケー!」
「はい!」
「承知!」
直人の後に有希とミリアム、クリスティーナが続く。
「驟雨!」
「氷結せし霊槍の穂先よ、不動なる敵を貫け。氷槍!」
「光翠を放ち行く敏速の風、静かなる世界を翔けよ。静寂の疾風!」
恵梨香の放った矢の雨が従魔竜たちを穿ち、ほのかとハーティアの魔法がとどめを刺す。
一人の技では倒し切れない災害級並みの相手でも、三人で連携すればより少ない魔力で確実に倒せる。
「閃光の流渦!」
アリエルの神弓『エネイヴル』が放射する渦を巻く光の矢が、従魔竜の群れを貫き墜としてゆく。
経験を積んだ転生者である彼女の技は、シリューや直人にも引けを取らない。
シリューたちの周りから、従魔竜が一掃された。
「アブソリュートゼロ!」
ヴリトラの頭頂部を、絶対零度の凍気で広範囲に凍結させる。
「「陽炎斬!」」
「桜華炎舞!」
大気を歪ませる高熱の斬撃二つと爆炎が、凍り付いたヴリトラの鱗を砕く。
「閃光の流星!」
大気に晒された表皮に、白熱の光が降り注ぐ。
ギュオオオオオオオ!!
ヴリトラが初めて雄叫びをあげた。
首を振り、シリューたちを払おうとする。
「効いてるぞ!」
だが、与えた傷は直ぐに再生された。
「頭は再生するの!?」
被弾している胴体部分は、傷も鱗も再生していない。
何本か、刺さったままになっている魔法弩級の矢も見える。
ただ何十発と被弾しているにもかかわらず、ヴリトラが気にする様子もない。
動物のような痛覚も無いのだろう。
「それでも、頭は大事ってか」
直人が吐き捨てるように呟く。
「みたいですね。つまり……」
シリューの口元が緩む。
ヴリトラは明らかに嫌がっている。
「「「頭が弱点!!」」」
有希とミリアム、クリスティーナが同時に声をあげた。
「よぉし、ぶっ潰すぞ!!」
如何に大災厄級とはいえ、無限に再生できるわけではないだろう。
これだけ長大な体を維持するだけでも、莫大な魔力を消費しているはず。
攻撃を続ければ、いずれはきっと再生も追い付かなくなる。
だが、ヴリトラも黙って攻撃を受けるつもりはないらしい。
左の口からは続々と従魔竜が飛び出し、損耗した分を補って再びシリューたちに襲い掛かろうとしていた。
「あまねく聖浄なる福音、清らかな天の鐘を鳴らし、この穢れし大地に安らかな光をもたらし賜え、聖域発現!」
すかさずミリアムが聖域を展開、僅かながらの時間、従魔竜の進行を遮る。
ただ、止められるのは一部の集団だけ。
縦横無尽に空を飛ぶ従魔竜を捕え切る事はできなかった。
聖域を逃れた従魔竜たちが、頭に取り付く直人たちに向け一斉に青白い光弾を放つ。
「皆、避けろ!」
シリューが叫ぶ。
光弾の爆発による破壊力は、武器や技では相殺できない。
全員が指示に従い、散開して回避行動をとるのだが。
「え、何っ!?」
複数の従魔竜から執拗に追い詰められたミリアムは、知らず知らずのうちに仲間たちから遠ざけられ取り囲まれてしまう。
「しっつこいです! エトワール・フィ……」
囲みを突破しようと戦鎚を振り上げるものの、間に合わない。
三体従魔竜が同時に光弾を撃つ。
「くうっ」
辛うじて二発を躱して上へ。
だが、逃げた先にもう一発。
「やっ……」
躱しきれない。
咄嗟に顔だけを背けた瞬間。
ドオォォォォン!
光弾はミリアムを捉え大爆発を起こした。




