表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

419/429

【第410話】乙女たちの誓い

「夕食後、皆さんで少しお話しませんか?」


 シリューの部屋を出ると、パティーユがミリアムたちにそう声をかけ、シリューも勇者一行も抜きで集まる事になった。


 宿舎の個室は、五人で話しをするには狭すぎるため、宿舎のブリーフィングルームを借る。


 幸い、直人たちの宿舎は別棟に用意されていたので、余計な気を回す必要も、彼らに訝しまれる事もない。


 宿舎の管理人には単なる女子会だからと給仕を断わり、それぞれがお茶や軽食を持ち寄った。


「それで、お話しって何でしょう?」


 皆のお茶を淹れ終えたミリアムが、緊張ぎみに切り出す。


 パティーユの雰囲気から、気楽な女子会というわけではなさそうだ。


「実は、少々気になっている事がありまして……アリエル様に伺いたいと」


「いいよ、でもその前に……」


 アリエルは頬に指を添えて、四人に視線を巡らせる。


「様、はやめてほしい。アリエルでいいよ。敬語も要らない」


 同じ魂を持つ者同士、身分も立場も関係なく皆平等であるべき。


 それがアリエルの理念。砕けて言えば、


「トモダチになりたい」


 という事だ。


「そうですね。では、公式の場以外では、みんな呼び捨てで呼ぶことにしましょうっ。話し方もそれぞれでっ」


 パティーユの声が弾む。


「ええと、皆がそれで良ければ、私は構わないかな」


「私も、その方が気楽でいいわ」


 クリスティーナとハーティアの目が、ミリアムに向けられる。


「わ、私っ、私は……はい、あの、善処しますっ」


 元々、一人だけ平民のミリアムには、少々ハードルが高いようだ。


「決まりだね。それで、聞きたい事って?」


 アリエルは、改めて話題を進める。


「はい。ここに来る前、アリエルは『大災厄が出現すれば、彼もきっと現れるはず』と言いました。私たちにとって最も重要な真の戦い、とも」


「うん」


 その『彼』、がアスラの事を指しているという事は、皆もう分かっている。


「何故、アスラが此処に現れると思ったのかを知りたくて。ただの勘、ではありませんよね?」


 パティーユの問いに、アリエルはしっかりと頷く。


「1500年前、彼は勇者がとどめを刺す直前に、大災厄と一体化した。ううん、採り込んだって言った方がいいかな。とにかく、それが魔神の起源になった。魔神としての完全な復活を目指している彼は、今回もきっと大災厄を採り込もうとするはず」


「でも、アスラにはもう、1500年前みたいに肉体は残ってないですよね?」


 ミリアムが疑問を投げかける。


 アスラの肉体は灰となって消えた。


 それはアリエル自身が話してくれた事実だ。


「身体が無いのに、どうやって復活するつもりなのかな。えっと、オルタンシアだっけ? 彼女の身体を使う、とか?」


 クリスティーナが口にした疑問に、アリエルが首を振る。


「それはどうかな。彼は、『復活を遂げるまでの間、この身体を使ってやっている』って言ってた。仮住まいだ、とも」


「という事は……他に何か確実な、代わりになるものがある……」


 ハーティアはもう、その答えに手を掛けたようだ。


「そう確信してるんでしょうね……」


 皺を寄せ、深く沈んだ声でミリアムが呟く。


「ま、まさかっ」


 二人の様子に、パティーユは思わず声をあげた。


「僚を……僚の身体を奪い取るつもりなのですか!?」


 ミリアムとハーティアが、苦い顔でパティーユの言葉を認める。


「心臓の封印が解けた時、アスラはそう言ってました」


「〝我と一つになれ……お前は我と一つに戻る。世界への復讐の始まりだ〟だったかしら? そうそう、〝殺して身体を奪う〟とも、はっきり言っていたわね」


「そうか……だから、私たちにとって最も重要な真の戦い、なんだ」


 果敢な笑みを浮かべるクリスティーナには、少しの迷いもない。


 大災厄『ヴリトラ』との戦いを越えて、シリューを守るための戦いが彼女たちを待っている。


 五人の誰も、恐れも怯みもしない。


「そう。そして……最後の戦いになる」


 アリエルは表情を変える事もなく、まるで物語の終わりを告げるかのように囁く。


「最後の……」


 それが意味するもの。


「戦いが終わって、アスラと決着がついたら……シリューさんは、どうなるんでしょう。どう……するの、かな」


 不安げな表情を浮かべたミリアムの視線が、拠り所を求めるように漂う。


「それはわたくしにも分からない。どちらかが消滅するのか、元の一人に戻るのか。それとも、どちらも……いいえ、それは考えたくない」


 アリエルは続ける。


「彼はきっと無事に生き残る。そして、幸せになる。彼が選ぶ世界が、たとえわたくしたちと繋がっていなくても、わたくしたちの決意は変わらない」


「そう、ですね」「ええ」「そうだね」「もちろんよ」


 ミリアムが、パティーユが、クリスティーナが、ハーティアが。


 愛する者のため、ひたすらに命を懸ける。


 運命の乙女たちは今、ただ一つを誓った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
下記のサイト様のランキングに参加しています。
よろしければクリックをお願いします。

小説家になろう 勝手にランキング
こちらもよろしくお願いします。
【異世界に転生した俺が、姫勇者様の料理番から最強の英雄になるまで】
― 新着の感想 ―
どうやら直人勇者の仲間でシリューを好きなその有希とほのか2人の女の子が、シリューを救う鍵になるみたいだね。果たして彼女たちはシリューのハーレムに加わるのだろうか?
更新有り難うございます。 ヒロインズ「恋に恋す〜る女の子に〜は♪(なぜか一部緑川ボイス)」 シリュー「ソレは[乙女の祈り](ス〇イヤーズ)だ!?」
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ