【第404話】オルレーンの状況
アルフォロメイ王国の王都アルファスを出発して三日後。
シリューたちはオルレーン王国の都市サラフに到着した。
オルレーンを含む各国は連合軍を組織し、現在このサラフに続々と集結中である。
途中で追い抜いたドクの率いるアルフォロメイ軍も、明日には到着の予定だ。
都市のすぐ手前には防御のための要塞が築城されていて、今回はそこが連合軍の前線指揮所として使用される。
シリューたちはサラフに着いてすぐ、要塞の幹部用会議室に案内された。
「おお、明日見、お疲れ。来るとは聞いてたけど、意外と早かったんだな」
「日向さん、お疲れです」
会議室には数人の軍幹部の他、先にサラフ入りした直人たちが待機していて、シリューを見るなり近況を尋ねる。
「アストワールはどうだった?」
「無事に片付きましたよ。それで、この人がアストワールの王女で……」
「アリエル・ミュラトールです。初めまして、勇者様、従士様方」
「初めまして、ナオト・ヒュウガです」
王族との挨拶にも慣れたもので、直人も後に続いた有希たちも堂々とした振る舞いを見せた。
「日向さんの方はどうでした?」
「こっちも、順調ってカンジかな。災厄級も、楽勝倒せたしな」
「楽勝とか、あり得ないんだけど?」
少し調子に乗った直人を、有希がジトっとした半開きの目で睨む。
「それより……大変な事になってるみてぇだけど、もう何か聞いてるか?」
「いえ、俺たちもたいした事は……」
大災厄が出現して四日。
既に三つの都市と街が侵攻によって破壊され、対応に当たった部隊は僅か数分で壊滅した。
また、住民が避難する時間を稼ぐため、魔石数百個を用いて都市以外へ誘導しようと試みたものの、大災厄には効果がなく成功しなかったらしい。
イロウシュットやブラエタリベルトゥルバーとは、異なる器官を持っているのだろう。
「1000mを超えてるバケモノだって……ホントかな……」
「ちょっと、想像できないですよね……」
ほのかと恵梨香が、頬に手を添えてこっそりと囁く。
「私たちも、そう聞いてます……」
ミリアムも同じように小声で返す。
とてつもない巨体を持ち、圧倒的な質量と火力で蹂躙する。
遠距離から観測された情報しかないため、正確な形状や能力は掴めておらず、今のところ分かっているのはせいぜいその程度のものだ。
オルレーン軍の指揮官が、硬い表情で口を開く。
「我が軍も、何度か偵察隊を差し向けてはおりますが……」
未だ戻ってきた者はいないのだろう。
はっきりと口にはしなったが、指揮官の口振りと表情から、偵察が失敗に終わっている事は明らかだった。
「とにかく、情報が少なすぎますね……」
パティーユが眉根に皺を寄せて呟く。
現状のままでは、作戦をたてる事もできない。
集結する連合軍を効果的に展開させるためにも、もっと詳しい情報が必要だ。
「早急に偵察隊を増員いたします」
「いや、ちょっと待って」
指揮官の申し出をシリューが制止した。
「これ以上、貴重な人員を失わせる訳にはいかない。俺が行く」
「そうですね、私たち『銀の羽』が行きます」
ミリアムが銀の羽を強調したのは、シリューが自身を顧みない無謀な行動に走る事を止めるためだ。
「いや、俺が一緒に行った方がいいだろ」
直人も同行を申し出る。
「それなら、私たち皆で行こうよ」
有希の提案は、もはや偵察を前提にしていない。
「ここは俺に任せて。俺なら上空からでも観察できるし、危なくなれば音速以上で逃げられる」
言葉通り、シリューの『翔駆』は音速を超える。
「ホントに、一人で戦っちゃダメだよ?」
クリスティーナがしっかりと釘を刺す。
「分かってるよ。ってか、元々俺は戦闘とか好きじゃないから」
「確かに……猫探しとか、薬草採取とかをやりたがるわね」
ハーティアの言葉は間違っていない。シリューが率先して戦闘系のクエストを受けた事はほとんどない。
それは、『銀の羽』メンバー全員が知るところだ。
「アリエル。大災厄が今何処にいるか、分かる?」
シリューに問われたアリエルは、一緒に砦の建物から出ると星の意識を探る。
だが。
「ごめんなさい、わたくしに残った力では、もう大まかな方向しか分からない……」
そう言って、南西の方向を指差す。
「十分だよ、ありがとう」
シリューは空へ駆け上がり、南西を目指した。




