【384話】合流
その頃、エリアスたちを乗せた馬車はアストワールの森を進み、魔物に取り囲まれた城まであと少しの所へと近づいていた。
「そろそろ魔物の群れの中じゃ。皆、気を抜くでないぞ」
エリアスが、馬車の前方を睨み声を掛ける。
「ここからは、全速で行きます!」
手綱をとるミリアムが、馬に鞭を入れ速度を上げた。
ミリアムの隣にエリアス、屋根にはクリスティーナが、そして馬車後部の護衛席にハーティアがつき、魔物との戦闘に備える。
「来るぞ! ミリアム嬢!」
「はい! あまねく聖浄なる福音、清らかな天の鐘を鳴らし、この穢れし大地に安らかな光をもたらし賜え、聖域発現!」
聖なる銀の光が、四頭の馬車馬を包む。
その直後、空と四方から魔物が群れを成し襲ってきた。
「荒ぶる風よ来たれ、重空撃波!」
エリアスの撃った衝撃波が、行く手に群がる一団を粉砕する。
「烈咲斬!」
クリスティーナが振るう剣から放たれた無数の風刃が、空から迫るハーピーたちを撃ち落とす。
「光翠を放ち行く敏速の風、静かなる世界を翔けよ。静寂の疾風!」
左右から飛び掛かるブルートベアの群れを、ハーティアの魔法が引き裂く。
第一陣を苦も無く一掃し、馬車は森の奥へと突き進む。
当然、更に数を増した魔物たちが、その道に立ちはだかる。
「旋風斬!」「アイスランサー!」
斬捨て、撃ち抜く。
「ストーンスパイク!」「キャスケードウォール!」
貫き、退ける。
道塞ぐ魔物の亡骸を、銀の聖域が弾き飛ばす。
無尽蔵に湧いてくるかとも思える敵に押し負ける事なく、馬車は走り続けた。
「ふふ、これは、なかなかどうして……シリュー抜きでも、Aランク並みではないか」
エリアスは、ミリアムたちの戦いぶりを目にして、その評価を改める。
ただそれでも、永久に戦い続ける事は出来ない。
そのうち魔力も覇力も体力も枯渇してしまうだろう。
「やはり、強硬突破はちと無謀じゃと思えるがのう」
三対一の多数決によって、強硬突破を選択した。
反対した一人は、もちろんエリアスだ。
「きっと、もうそろそろです」
ミリアムが前方の空に目を向ける。
「あ、いや、城まではまだ……」
2、30分は走り続けなければならない。
そうエリアスが言おうとした時。
視界に映る魔物の全てが、一瞬のうちに崩れ落ちた。
「何じゃ!?」
エリアスは突然の事態に目を見開く。
だが、隣のミリアムは落ち着いたものだ。
「ほら、言った通りです」
と、笑ってウィンクをする。
「そうか……なるほど……」
頼り頼られる。甘すぎるようにも思えるが、そんな信頼関係も悪くはないものだ。
「道案内、お願いしますね。シリューさん」
「ああ、任せろ」
いつの間に降り立ったのか、エリアスが声に振り向くと、屋根にはシリューの姿があった。
「シリュー、妹は……」
「大丈夫、無事ですよ」
エリアスはほっと胸を撫でおろし、
「ありがとう、シリュー」
心からの感謝をシリューに捧げた。
「どういたしまして。でも、そんなに畏まる事ないですよ」
シリューは涼し気な笑みを浮かべる。
「そうか……ふふっ。そうじゃったの」
そう言ってぺこりと頭を下げ、嬉しそうにエリアスは笑った。
「それじゃあ、このまま城に向かいましょう」
「ああ、急がなくていい。魔物は任せろ」
「はい」
シリューの指示に従い、ミリアムは手綱を緩めてハミを外し、馬の速度を適度に落とす。
「ところで、城はどんな状況じゃろうか」
エリアスが思い出したように尋ねる。
「城はまあ、結界も無くなってちょっとやられてますけど、反魔導領域のお陰で今は安全? 安全かなってとこです」
「そうか……あれを使ったのか……」
ぽつりと呟いたエリアスの表情は、期待半分、不安半分といった様子だ。
「アリエルさんは、二、三日が限界だろうって言ってました。それと、気になる事もあるんで、城に着いてから話しましょう」
途切れる事なく襲ってくる魔物を蹴散らし、シリューたちは改めて城を目指した。




