↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

391/447

【第382話】君は……

「これは……結界?」


 シリューは一帯を覆う緑の幕を見上げて尋ねた。


「そう。これで、暫くは魔物を防ぐ事ができると思う」


 アリエルが空を指差す。


 結界内の空中を飛ぶ大蝙蝠(ビイアンフ)やハーピー、飛行蜥蜴(ディスアザード)が、羽ばたく力を失ったように、ふらふらと地面へ落下してゆく。


 地上を蹂躙していた魔物たちは、立つ事もままならず次々と倒れ伏す。


 やがてその目からは生気が消え、ピクリとも動かなくなる。


 結界発動から僅か数分。結界内を動く魔物は一体も見当たらない。


「変わった結界だな……」


 シリューは、その光景に薄ら寒いものを感じた。


「これは、旧世代の技術で作られた反魔導領域(リ・エクスレウム)。領域の中にいる魔物から、魔力を奪って行動不能にするの」


【魔物の体内にある魔石から、魔力を強制抽出・分解しています】


 解析により、セクレタリー・インターフェイスが補足する。


「それで、魔石から魔力を吸い取られた魔物は、一匹残らずあの世行きってわけだ……」


「うん。はっきり言えばね」


 これほど効率的な結界にもかかわらず、アリエルは旧世代の技術だと言った。


 ここの様子だと、機械設備と遺跡だけが辛うじて残っているだけで、人の手によって保管されているようには見えない。


 つまり、設備も技術も新しい物にとって代わられ、うち捨てられたという事だ。


「何で、使われなくなったの?」


「この結界は、魔物だけじゃなくて、人や動植物にも影響するの。魔石を持つ魔物ほどではないけど、少しずつ魔力を奪われてしまう」


「じゃあ、そんなに長くは……」


 アリエルは、こくんと頷く。


「だから六百年前、新しい結界ができた時に廃棄された。ただ、こんな時のために、解体はしないで取っておいたの」


 結界を張り続ければ、やがて人も魔物と同じ運命を辿るという事か。


「どれくらいが限界?」


「四日かな。ううん三日かも」


 それが長いのか短いのか。


 アリエルは少し困った様子で続ける。


「防護結界の再展開には一週間掛かるから、できるだけ長く使いたいけど……」


「四日か……」


 アルフォロメイからの援軍が来るのが、早ければ四日。


 それまで使えるなら、戦い詰めだったこの国の兵士たちも休息を取れる。


 だが三日しか使えなかった場合、一日はここだけの戦力で対処しなければならない。それも結界なしの状態で。


「三日か……作戦会議には、十分だな」


 もちろん、対策を実行するにも。


「とりあえず、城に戻ろう」


「うん」


 横に並ぼうとするアリエルを制して、シリューは少し前を歩く。


 もう危険はないだろうが、用心に越したことはない。


「リィルムは、どうなったのかな……」


 遺構を出る時、思い出したようにアリエルが呟いた。


「リィルムって、ああ、オルタンシアが化けてた人? それなら大丈夫。あのアイテムは生きてる人にしか使えないんだ。その人もきっと生きてるよ。たぶん、何処かに監禁されてる」


 最も可能性が高いのは自室だろう。


 少なくとも、城の中にはいるはずだ。


「シリュー様、あの……ありがとう」


「リィルムさんの事?」


「ううん。わたくしと、このアストワールの人たちを、救ってくれた事。本当に、ありがとう」


「どういたしまして」


 後で必ず、正式にお礼をしたいとアリエルは続けた。


 シリューは立ち止まらずにふと考える。


 彼女は、本当にアスラの記憶で見たアリエル、そして美亜なのだろうか。


 記憶の中で、彼女はアスラの事を「僚ちゃん」と呼んでいた。


 だが今は「シリュー様」だ。


 そもそも、龍脈の中やマナッサで自我の崩壊から救ってくれた、あの女性と同一人物なのだろうか。


 頭の中に直接語り掛けて来た時とは、話し方も雰囲気も別人といっていいほど大きく違う。


「アリエルさん……一つ、教えてほしいんだけど……」


 シリューは振り向かずに尋ねる。


「なぁに?」


 こんな所で話す事ではないかもしれないが、シリューは確かめすにいられなかった。


「君は、美亜なのか?」


 アリエルが不意に立ち止まった気配がして、シリューも立ち止まり振り返る。


「わたくしは……確かに、美亜、だよ……でも、もう……君の知ってる美亜ではないかも……」


 感情の読み取れないアリエルの表情が、初めて陰りを見せた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
下記のサイト様のランキングに参加しています。
よろしければクリックをお願いします。

小説家になろう 勝手にランキング
こちらもよろしくお願いします。
【異世界に転生した俺が、姫勇者様の料理番から最強の英雄になるまで】
― 新着の感想 ―
美亜もまさかシリューと同じ状況になったりして、2人いるってことなのか。
そりゃまあ最低でも1500年生きてるしね つまりおばあ… おや、客が来たようだ
更新有り難うございます。 美亜の存在が結構な謎なんよね⋯⋯。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。