【第378話】蒼の流星
「先ずは一つ!」
シリューは、残る二体のサウラープロクスに向かって加速する。
「アンチマテリエルキャノン!」
音速の五倍で撃ち出された、高硬度・大比重の30mm砲弾三発が、サウラープロクスの頭を豆腐のように砕く。
残りは一体。
「極光の雷撃!」
巨大な稲妻が天を奔り、最後の一体を一瞬で焼き尽くす。
「次は……」
シリューは城壁の手前で上昇。
ターゲットをワイバーンへと切り替える。
「嘘だろ……サウラープロクス三体を、一瞬で……」
城壁の兵士たちは戦場である事も忘れ、呆然とその光景を見つめていた。
時を同じくして、前庭では城壁の崩壊に備え全軍が臨戦態勢にあった。
ラヴィトルは、最後の命令の前に兵士たちを見渡す。
兵士たちの士気は高く、一人一人が優れた戦士でもあるが、絶望的に数が少ない。
おそらく、誰一人生き残る事は出来ないだろう。
たった一つの望みは反魔導領域だが、それもどうやら間に合いそうにない。
城壁に振動が走る。
続いて大きな爆発音。
「来るぞ!!」
ラヴィトルは剣を握りしめた。
しかし、城壁が崩落する様子はない。
「どうした……?」
次の瞬間。
ラヴィトルと配下の兵士たちの目に、空へ昇る蒼い影が映った。
「レイ!」
急降下するワイバーンを、幾筋もの光が貫く。
空からの攻撃に気付き、二体のワイバーンがシリューへと方向を変える。
シリューは双剣を抜いて、すれ違いざま二体の首を斬り飛ばす。
「マルチブローホーミング!!」
続けて、屋上のエクスプレームスに取り付く、数十体のビイアンフたちを纏めて排除する。
背後から吐かれた爆光球をフレアバレットで迎撃。接近して、
「アブソリュート・ゼロ!」
一瞬で全身を凍結させ蹴り砕く。
ここまででワイバーン四体。
「残りは……」
上空を仰ぐ。
三体のワイバーンが、編隊を組むように下降してくる。
「メビウス・ディストラクション!!」
双剣から放たれた黄金のメビウスリングが、三体のワイバーンを空間もろとも斬り裂いた。
これで、災害級の排除が完了。
残る空の脅威に対し、シリューは狙いを定める。
「喰らえ! ガトリング! マルチブローホーミング! 爆轟! 刃の気流! サンダーヴォルト!!」
同時発動の魔法によって、空は一瞬のうちに爆炎を光に覆われ、数百体の魔物が原型も残さず引き裂かれ、爆散していった。
「あれは……人……?」
空を見上げた兵士の誰かが呟く。
「……奇跡、か……」
全員が同じ事を思った。
たった一人が、この状況を塗り替えた。
「ああ、そうだ……」
ラヴィトルは確信する。
蒼の服、黒い髪。
多彩な魔法を駆使し、空を自在に翔ける。
それは生ける伝説。
「彼こそ、もう一人の勇者……『深藍の執行者』だ」
空を仰ぐ人々の心に、もはや絶望は存在しなかった。
「何だ……」
リィルムは、目の前に繰り広げられる事態に戦慄を覚えた。
災害級のサウラープロクス三体と、同じく災害級のワイバーン七体が瞬殺されたのだ。
「いったい、が起こっている……」
額に一筋の汗が流れる。
圧倒的に有利だったはずの戦況が、一瞬で覆された。
援軍の気配は一切ない。
とすると、遠距離攻撃だろうか。
だが、ここまでの破壊を成し得るような、遠距離からの攻撃手段が存在するはずはない。
例え近距離だったとしても、これほどの威力を持った兵器など知らない。
いや、違う。
リィルムは、戦場の空を包んだ爆炎を見つめた。
たった一つ、たった一人だけ、それを可能にする存在を知っている。
「まさか……」
思わず呟いた時、背後で肉を切り断つような音が聞こえた。
「何だ!?」
捕らわれのアリエル以外に誰もいないはずだし、気配も魔力も感じない。
だが。
リィルムが振り返った先には、触手から解放されたアリエルと、彼女を守るように立つ男の姿が。
「騎兵隊の到着さ」
男は、日の光を浴びて涼し気に笑った。




