【第354話】新たな仕組み
その知らせは、アルフォロメイ王国・エルレイン王国・ビクトリアス皇国の三大王国と他連合国を結ぶ連絡網により、通常の馬車で六日かかるところを僅か一日でガイナン王国アスハイマへと届けられた。
情報速達網と呼ばれるそのシステムは、各国の拠点同士を十数か所、または数十か所の閃光灯火灯台で結んだもので、符号化した文字コードを信号灯の光によって伝える、所謂、回光通信網の事である。
このシステムを利用できるのは各国の王家だけであり、それが使われたと言う事は当然、勇者の力が必要な事態だという事だと誰もが予想していた。
「近く、アルフォロメイ王国王都アルファスにおいて、連合国及びエターナエル神教、冒険者協会、魔調研代表による首脳会議が行われます」
滞在するヴィラの一室、パティーユの部屋のゲストルームで、エマーシュは全員が揃ったのを確認すると、一人立ったままこれからの予定を説明を始める。
「会議……?」
直人は予想と違う内容に、少々困惑した様子で呟いた。
首脳会議ならば、直人たちが出席する必要はないはず。
「ああ、もしかして会場の警備、とか?」
それならばあり得るかもしれない。
「俺たちならともかく、日向さんたちに警備をさせますかね……」
シリューが疑問を投げ掛けた。
前線で戦うとはいっても、勇者はこの世界の英雄であり希望の象徴である。
一般兵が受け持つような任務を、はたして直人たちに当たらせるとは考えにくい。
「それを言うのなら、龍牙戦将の貴方にも当てはまるわ」
そうであるべきだと、ハーティアは主張する。
「エマーシュ、どういう事でしょう?」
パティーユが話しの続きを促して、これ以上憶測の議論が進む流れを止めた。
「首脳会議へは、殿下と日向様に出席の要請がきております」
その言葉を聞いて、直人は眉をひそめる。
「お疲れです。日向さん」
そう言ってほっとしたように笑みを向けるシリューに、直人は大げさな仕草で溜息をついた。
シリューも直人も会議が好きではない。
いや、はっきり言って嫌いだ。
堅苦しいお偉方の集まる会議は特に。
直人は他の誰にも聞かれないよう、そっとシリューに耳打ちする。
「何の会議か知らねぇけど、この世界の人間だけでやってほしいよな。頭の固そうなお偉いさんと会議とか、ホント面倒くせぇ」
「大丈夫、そうじゃない人もいますよ」
シリューは口元を隠して応える。
頭に浮かんだのはアルフォロメイ国王のウィリアムや、冒険者ギルドの本部長エリアス。
二人とも理解のある人物だし、もう一人魔調研長官のタンストールに至っては、かなりユニークな性格の持ち主だ。
「えっと、日向さんが呼ばれてるのは分かったんですけど、シリューさんも一緒に行かないといけないのは、どうしてでしょう?」
ミリアムの意見に、ハーティアとクリスティーナが頷く。
当然シリューもその理由を考えてみるが、思いつくのはやはり警備くらいしかない。
「首脳会議で共同声明は発表された後に、実務者による協議が行われます。議題は今後の安全保障に関するものとなりますが、明日見様にはその協議に出席してほしいとの事です」
「安全保障……」
立て続けに災厄級が出現した事に対して、各国とも相当な危機感を抱いているのだろう。
大災厄への布石ではないのかと。
いつどこで発生するか、どんな魔物が出現するのかも定かではない大災厄に、一国だけで対応するのは非常に難しい。
想定される被害を最小限に抑えるためには、各組織の連携と団結が必要となる。
「何か、俺ら二組の共同チーム結成ってカンジじゃね?」
直人は、顔の横に立てた二本の指を合わせ、楽し気に笑った。
「それ。有りよりのアリ!」
有希が右手でガッツポーズをとり、恵梨香ほのかもこくりと頷き合う。
「私たち、初めてとは思えない連携でしたもんね」
ミリアムは両手を胸の前で組み、ハーティアとクリスティーナはその言葉を肯定するように笑った。
ミリアムの肩で、ヒスイがこくこくと頷く。
「や、まだ決まったワケじゃないから……」
全員が盛り上がる中、シリューは冷静に呟いた。




