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工兵少尉 ドンタ

安城じいちゃんが緊急入院した。

長年の煙草が原因か、肺気胸を起こし、息が吸えない状態が発生した。私はそこににいたわけでは無いが、聞いた話では、どんどん紫色になっていく顔を見て、祖母、叔母共に”もうダメだ”と思ったそうだ。

(祖母は助産師、叔母は看護師)

胸にでっかい針をさすと、”シュッ”という音と共に息が吸えるようになったのか、じいちゃんは落ち着いてきたそうだ。

それからのじいちゃんは、何処へ行くにも酸素ボンベを転がしながら歩いていた。遠出ができなくなり、一人で出歩くこともできなくなった。

もともと痩せていたじいちゃんだったが、”人はこんなに痩せるものなのか”と思うほど、安城じいちゃんの体はどんどん小さくなっていった。


◇◇


昭和二十二年七月十三日


今日からゲルマンの二班と共同で作業することになった。工兵中尉のドンタが班長で十人いる。西側の橋桁を造るための丸太を立てた。ドンタはロスケに信用があるので作業については現場監督の下士官も何も言わなかった。この工事の測量、設計等は全部ゲルマンが行ったと聞かされた。


昭和二十二年七月二十五日


丸太組みが一段落し、板は他の班が打つので、今日からドンタ達と共に鉄骨の組立を始める。一本が六トンもある鉄骨のため、定位置までなかなか運べない。

理由は道具が無いからだ。これ程の作業をするのに、手廻しの小さなウインチが三個、

ドンクラ二個、ローム五本あるだけだ。

私等十五人では手も足も出ないが、ドンタの指示に従い働くと結構運ぶことが出来た。

矢張り工兵中尉だと感心させられた。


昭和二十二年八月上旬


鉄骨を何処から持って来るのか判らないが、運搬する方が間に合わず組立を中止することになり、ドンタと別れて私達は棒打を始めた。

これも楽な仕事ではない。四角い鉄塊を四人で頭上まで持上げて杭打をやるのだ。足場が倒れて鉄塊が足に当り骨折事故を起したこともあった。


昭和二十二年八月〜十月


この三か月位、降っても照っても毎日モストへ行く。仕事は丸太組みか鉄骨の組立である。

日曜日は殆ど休みであったが,十月に入ると駅に石炭や木材を積んだ貨車が入るようになり、交替で引張り出された。

ここの仕事はスラビヤンスクにいた時より重労働であるのに、皆の顔色も元気もよい。理由は何であろうか。八時閻労働が守られているためか。それとも食物のためであろうか。

スラビヤンスクでは十か月間毎日雑炊と三百二十グラム程のパンばかりであったが、ここでは、朝食は麦飯とスープ、昼はパンとスープ、夜は米飯といもの煮付とスープで、炊事の山内班長は雑炊は絶対に作らない。このためか皆元気だ。

八時間労働して帰って来ても退屈なので遊ぶことを考える。麻雀、将棋、花札等だ。

この収容所は出たり入ったり移動が多かった。九月中頃、将校の大勢いる一団が来た。この内に藤宮中尉もいて、共に元気であることを喜び合った。一団の長として来た水谷大尉の話。

「皆が麻雀、花札等で楽しんでいる姿を見て非常に嬉しく思っている。遊びそのものは感心するものではないが、何か遊び事でも始めなければ退屈で仕方がないという気持が、皆の心の中に出来たことを嬉しく思う。スラビヤンスクにいた時のように、身体がだるい、何もしたくない、と暇さえあれば寝ているようでは心配である。何でも好い大いに楽しむことだ」

この頃早出から帰って見ると、夜勤者も起きて麻雀を盛んにやっていた。

三交替制も十月末で終った。


昭和二十二年十一月七日


今日から三日間、革命記念日のため休み。二階の広場で映画を見た。

(ナチス瞡犯の絞殺死体が並んでいた。)


昭和二十二年十二月中旬,


日が短かくなり日没と同時に帰る日が続く。素手で鉄骨へ触れると危い。高い鉄骨の上で吸った煙草のうまかったことは忘れられない。

イヂュンへ来てからの身体検査では、いつも四十七キロ位で等位は二位。

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