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橋梁作業

昭和二十二年六月二十五日


夜十一時頃”身体検査だ"といって起された。最近南京虫が多いので、「南京虫にやるような血は一滴も無い」と数人で屋外で寝ていた時である。

体格等位が二位の者だけ検査した。十二時過ぎ、"今から名前を呼ぶ者は今日他の収容所へ替る、行く先はイヂュンと言う処だ"

私も馬詰も呼ばれた。同年兵はまた二人になった。白沢が別れに来た。収容所へ迷い込んだ鶏を捕へ食べてしまった高橋は、「頭が少し狂っている」ということにして昨日入院したがどうしているだろうか。

元七四部隊の者は沢目軍曹以下三十名程だ。午後トラックでイヂュンへ向け出発。途中車が故障したので、夜八時過ぎに到着。

スラビヤンスクと異り二階建の立派な建物である。よい気分で寝床に入ったが、夜中に南京虫に起こされてしまった。


昭和二十二年六月二十七日


全員集合。昨日他から来た者も入れて、百五十名位いる。星野曹長の話があった。

「我々の任務は健康な身体を日本まで持帰ることである。帰れる日まで要領よくやることである。ここの作業は鉄橋の架設で、極めて危険な仕事であるから、各人充分注意するように」

ゲルマン (ドイツ)人が五十名位か。イタリヤ人が二十名位、ルーマニヤ人が二十名位いた。皆、こざっぱりした服装をしている、身体も清潔だ。

彼等は真黒い顔をして垢だらけの服を着ている日本人を見て、何かガヤガヤ話し合っているが、こちらにはさっぱり判らない。

スラビヤンスクと違い、水道が多く入浴場もある。ゲルマンの理髪所もある。便所も今までと違いきれいだ。

編成発表があり私は第十五班になった。大工三人、桶屋一人、トビ職二人、左官二人、その他七人だ。馬詰と班が別れてしまった。


昭和二十二年六月二十九日


駅へトラクターの積込に行った。


昭和二十二年七月一日


私達十五班の者十五人、三時に起された。装具を持ってトラックに乗せられ直ちに出発。

三時間程して着いた処は石山だ。

鉄橋工事に使う石の選別とトラックへの積込作業だ。兵隊にノルマを聞くと、車の来る台数と同じで八台から十五台位という。

岩山で暑い仕事であるが、兵隊がおとなしいので助かる。


昭和二十二年七月四日


附近の川へ行き水浴と洗濯だ。帰りに貝を拾って来た。今夜の雑炊は米

粒より貝のほうが余程多い。


昭和二十二年七月六日


六時頃炊事当番が起床すると間もなく、トラックでまた十五人来た。応援か、と思っていたら、ロスケの運転手に私達の交替だといわれた。

ロスケの眼鏡中尉の命令で、交替するというのだ。十五班は大工班のため、直ちに十六班の者と交替させ連れて帰るようにいわれて来たという。

朝食の出来るのを待ち、直ちに分配。トラックの上でガタガタ揺られながら雑炊すすった。


昭和二十二年七月七日


今日から橋梁作業だ。この鉄橋もモスクワへ通じる軍用道路だという。河の名は"ドネッ河"独ソ職当時の新聞に "両軍ドネッ河をはさんで激戦中”と書いてあった事を思い出す。

河幅は五百メートル程で、水は中程を少し流れているだけなのに、驚く程高く大きな橋を架けるものだ。

不思議に思ってロスケに聞くと、四月、五月の雪解けの頃になると水が増し、川幅一杯になってしまうとのこと。

大工班の私達はベトンを流し込む枠を作ることになった。

根元の直経が四十センチ程もある太くて長い松の木を幾本も立て斜木を入れ、ボルトで止めて板を打ちつけるのだ。

河の中程では直経五メートル位あるちくわ状のコンクリート製の円筒を幾本も立て、中を掘って沈め、上へ継ぎ足し最後は真中の穴ヘべトンを流し込む訳だ。両岸には鳥居の様な大きな橋桁を造り、これに鉄骨を乗せるというから、何時頃完成するか判らない大作業だ。


昭和二十二年七月十日


日本人が大分大勢来た。現在の私達より汚い服装をしている。将校もいるから長が交代するらしい。

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