四章
一章の「木村さん」が「北弍さん」になっていた……
〜二週間前〜
冒険者ギルドはどこだろう。
この世界の土地の事なんか全く知らないので、冒険者ギルドの場所なんて知っている訳がないのだ。
「あの、この街の冒険者ギルドはどこですか?」
厳ついおっさんや若い女の人に話し掛けるなんて一時期コミュ症だった俺に出来る訳がないので、人の良さそうなおばさんに話しかけてみた。
「あら、もしかしてこの街にくるのは初めて? ようこそプピアナへ。冒険者ギルドならあそこの通りを右に行った所よ。気をつけて行ってね。」
「ありがとうございます。」
どうやら成功したようだ。
なぜか普通に日本語を喋ろうとしたのに、口から出た言葉は全く知らない言葉だった。なのに、なぜか理解できた。
多分アリア様のおかげだろう。
「ありがとうございます。アリア様……!」
「ん? 君はアリア教徒かい?」
俺がアリア様がいるであろう天に向かって祈っていたら、声を掛けられた。
アリア教徒ってなんだ?
「アリア教徒……?」
「え? 君はアリア教だろう?」
おじさんは首を傾げた。
アリア教ということは、アリア様を信仰する団体か何かだろう。
よくわかんないけど答えは……
「はい!」
あのあと同教者のよしみとして、1500ヒロシを貰った。
ヒロシというのは、この世界の共通の金の単位で、この国、タナカ王国の初代国王の名前だそうだ。
この国造ったのって日本人かよ、金の単位がヒロシってダサ過ぎんだろ、とツッコんだのは言うまでもない。
冒険者として登録するには金が必要らしい。
「ここが冒険者ギルドか……!」
おばさんが教えてくれた通りに行ってみたら冒険者ギルドと書かれた板が屋根に掛かった建物を見つけた。
これまた日本語で書かれていなかったが、やっぱり読めた。
も、餅つけ俺!
いや餅はつくな! 落ち着くんだ!
こういう時は、だいたいテンプレが起きるものだ。
おそらく中に入ったら絡まれるんだ。
………………。
「よし! 行くぞ!」
俺は勢い良くドアを開けた。
中に入ると、そこは、ゲームで見るようなギルドと、酒場が一緒になったような場所だった。
やはりというか、モヒカンやスキンヘッドの荒くれ者が多いが、俺みたいな若い普通のヤツもいれば、俺より年下の女の子もいる。
奥には掲示板と、三つに区切られているカウンターがある。
おそらくあれがギルドの受付だろう。
俺はそこにいる受付の人に声を掛けた。
「あ、あの、冒険者登録をしたいんですが。」
「えーっと、登録ですか? では、登録費として1000ヒロシ払っていただきます。」
1000ヒロシか。
それならさっき貰った金で足りる。
というかヒロシっておかしいだろ。
誰もそう思わないのかよ。
「はい、確かに受け取りました。では、このカードに触れてください」
俺はそう言って差し出された銅色のカードに触れた。
「あっつ!」
触れた途端、発熱し出したカードに驚き、俺は思わず手を引っ込めた。
さっきまで触れていた銅色のカードが一瞬光り、文字が刻まれていった。
凄え……
なんかファンタジーしてる!
「では、それが貴方の冒険者カードになります。身分証明書となりますので、なくさないでくださいね。今はまだブロンズですが、クエストをこなしていくと、シルバー、ゴールドに昇格していくので頑張ってくださいね」
つまりあれか。
ゴールドになると敬われたりするようになるのか。
「では、職業を決めるので冒険者カードを見せてもらいます。えーっと、キムラ・カズトさん? 珍しい名前ですね? 」
俺は言われた通りに冒険者カードを見せた。
冒険者カードには、名前とかが刻まれているようだ。
職業を決めるのに必要なものが刻まれているのだから、やはり重要な物なのだろう。
「では、ステータスを確認させて頂きますね……って何この魔力は! 四桁なんて見たことないですよ! 」
俺のステータスを見て受付のお姉さんが驚いている。
「おい、今魔力四桁って言ったか?」
「マジか! 四桁って亜神族でも珍しいんじゃねえのか?! でも、アイツ黒髪黒目だし偽装じゃねえのか?」
「いや、冒険者カードは先代賢者が作った物だ。『鑑定』は対象の魂を視るから誤魔化せねぇ…… 」
「つうことはマジで四桁か?!」
遠くから様子を窺っていた野次馬冒険者達の、そんな会話が耳に入る。
マジか!
これってフラグ立っちまったんじゃ?!
「これだけの魔力があるんだから魔法職に……て…あれ? 属性適性がどの属性もすごく低いですね……。他のステータスは大体低いので……多分魔法職ぐらいにしかなれないし、それも初級魔法しか使えないですね……」
俺の期待と夢が崩れ落ちた。
「え……? う、嘘ですよね……?」
いや、俺ってリッチーなんだし魔法とかバンバン使っちゃつたりするんじゃねえの?
何だよ初級魔法しか使えない魔法使いって。
酷いだろ……。
「で、でも! 多い魔力が役に立つ職業は他にも沢山……ってあれぇ? 職業適性も殆どないですね……ってなれるのはマイナー職の盗賊ですね……」
お姉さんがとても言いにくそうにそう言った。
それより盗賊がマイナー?
「盗賊がマイナー職ってどういうことですか?」
「盗賊、又はシーフという職業は、戦闘用になるスキルが少なく、ダンジョンぐらいでしか役に立ちません。また、その職業柄から、犯罪が起きると真っ先に疑われます。
キムラさんの様な見た目の人は珍しいのでそういうことは少ないと思いますが……」
「マジっすか」
「マジですね」
思わず聞いてしまった。
「おい、アイツシーフだってよ」
「シーフってあのマイナー職か?」
「魔力四桁もあんのにシーフって災難だな……!」
「しかもプピアナってダンジョンあそこしかねえよな?」
「ブロンズじゃあのダンジョンは無理だな……」
野次馬冒険者達の会話が聞こえる。
何それ。
つまり俺って何もできねぇじゃんか……
「では、盗賊でいいですか………?」
「もういいです……」
俺はパーカーの袖で潤んだ目を擦った。
「では、冒険者についての説明をしますね!」
冒険者カードをパーカーのポケットに突っ込んだ俺を見てお姉さんが言った。
「冒険者のお仕事は、大まかに分けて三つあります。一つ目はモンスターの討伐。住民からくるモンスターの討伐依頼を受けるのは、冒険者の仕事です。二つ目は住民からの一般の依頼。剣を教えて欲しい、子供が行方不明になったのでその捜索を、薬草の採取など、住民からの、冒険者にしか頼めない仕事などです。三つ目は、街の防衛。これは主に魔王軍や大物賞金首との戦闘ですね。他にも色々ありますが、どれもあそこにあるクエストボードの貼ってある。紙を受付に持ってきてください。あと、適性クラスがあるクエストもあるので、気を付けてくださいね。ここまでで質問はありますか?」
「特に無いです」
ここまではゲームや漫画ラノベを読んでいればわかる。
問題はここからだ。
「では、冒険者カードについて説明しますね」
俺は耳を凝らして、お姉さんの言葉を一言も聞き漏らさまいとした。
「冒険者カードは、この国の先代賢者が八百年前に作った物です」
先代賢者ってどんだけ長生きなんだよ。
これってそんなにご大層なもんだったのかよ。
「冒険者カードには、名前と職業、ステータス、スキル、スキルポイントなどか刻まれています。」
「あの、スキルポイントってなんですか?」
俺はお姉さんに聞いてみた。
スキルポイントというのだから、すきるの習得に必要だったりするのだろう。
「スキルポイントととは、全ての生物が持っているスキルの習得に必要なものです。レベルが上がったときに一ポイント手に入りますが、生まれたときからもっている人もいますね。キムラさんも結構な量のポイントを持っていますよ?」
「マジっすか」
「マジですね」
さっきもやったようなやり取りをまたしてしまった。
「では、冒険者カードの操作についての説明をしますね。カードのこの部分を押すことによってスキル一覧が出てきます。光っているのが習得可能なスキルで、光っていないのがそうでは無いものですね。スキル名の横に習得に必要なスキルポイントがあるのでよく見てくださいね。光っているスキル名を押すことで習得できます。あと、この討伐モンスターというところには、討伐したモンスターの名前と数が記されています。生き物を殺した時に、その魂の一部が吸収されます。この魂の一部の事を経験値といいます。分かりましたか?」
「はい!」
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あの後俺は、その日の日当を稼ぐ為に簡単そうなスライムの捕獲のクエストを受けて、その日からずっとスライムの討伐もしくは捕獲だ。
「俺は何をしてるんだ……! 俺の異世界生活はこんなんでいいのか?いや違うだろ! 魔王軍の幹部とかの大物を討伐して、美少女達にちやほやされたいんじゃねえのか?! それなのに何だよ『スライムスレイヤーのカズト』っつう二つ名は!恥ずかしく無いのかッッッ!!」
俺は宿で叫んだ。
こうしてはいられない。行動に移さなくては。
「まずはパーティーだな……」
まずは仲間を集めなくては。
孤高のソロプレイヤーというのも悪くないが、さすがに辛そうだ。
あと、純粋に仲間が欲しい。
パーティー内で結婚する人達は結構居たりしそうだ。
「とりあえずギルドいくか……」
〜四時間後〜
「こ、こねぇ……」
あれからギルドに行ってパーティー募集の貼り紙を出してからもう四時間たった。
「やっぱり盗賊って人気無いのか……」
さすがにマイナー職の盗賊じゃ入りたがる人もいないのだろう。
一応俺はブロンズのゴールドなんだけどな……
俺が貼り紙を剥がしに行こうと席を立った時だった。
「ねえ、パーティー募集している盗賊ってキミ?」
街の名前を変更しました。




