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魔物探偵事務所~罪を背負いし神父~  作者: 星野翔


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第5章 血腥の五昼夜、白虎の爪を断つ

第一幕:五日夜の生死限界

廃墟における激闘は、なんと丸五日、実に百二十時間にもわたって狂おしく繰り広げられていた。


周囲を取り囲んでいた無数の頑丈なコンクリート建築は、二人の狂暴な噛み合いと衝撃によって、疾くの昔に原形をとどめぬほど粉砕されている。かつてこの一帯を深く覆い尽くしていた濃密で刺すような酸性霧も、上空を舞い散る血気と、二人から放たれる荒れ狂う魔力の颶風によって完全に吹き飛ばされていた。


五日目の黄昏が落ちる頃――。

タイガーの肉体は、いよいよ完全なる限界を迎えつつあった。


その全身には骨が白く覗くほど深い爪痕が無数に刻まれ、そこから絶え間なく流れ出る鮮血が、彼の下半身を真っ暗な赤色に染め上げている。重心を崩した彼は、激しく肉体が揺らぐばかりか、もはやその場でただ立ち尽くすことすら極限の困難を極めていた。


だが、その対極に位置するキン・レオンは、まるで疲労という概念を持たない異界の怪物のようだった。


その胸のなかに埋め込まれた「金色の獅子魔核」は、今なお狂暴で力強い律動を刻み続け、その両眼に宿る鮮烈な血光は、陰るどころか、五日五夜に及ぶ凄絶な血戦を経て――一層狂おしく、恐ろしいほどの旺盛さで燃え盛っている!

彼の一身に纏う魔力の颶風は衰えることを知らず、その呼吸の乱れすら、微塵も存在していなかった!


第二幕:化物と絶望

タイガーの青白い唇が、どうしようもない恐怖と失血によって激しく痙攣した。

彼は、喉の奥まで込み上げてきた生臭い血の唾液を、苦しげにゴクリと呑み込む。


眼の前に立つ男――これほど長時間の死闘を演じながら、疲弊の色すらその端々に微塵も見せず、その瞳には絶対的な冷酷と殺意だけを底なしに宿した存在を見つめるうちに。

かつてないほどの凍てつく恐怖が、ついにタイガーのなかに残されていたすべての狂妄を、内側から完全に突き破った。


目の前にいるこの男は……もはや、血肉を持った人間などではない。

ただ純粋に、殺戮と任務遂行の完遂のためだけに神仏によって生み出された――生まれながらの、壊し屋の戦闘兵器にほかならなかったのだ!


「お前……隊長……っ、お前は……一体、何者だ……っ! まさか、化物なのか……!?」


タイガーの声には、自らの意志とは裏腹に、隠しきれない極限の震えが痛々しく混ざっていた。


だが、その泰然とした絶望の質問に対し。

キン・レオンはただ僅かにその首を不気味に傾げ、首の骨の鳴る清脆な音を、冷たく周囲に響かせただけだった。


人間的な温もりを一切、一滴すらも失ったその血色の双眸で、タイガーを冷ややかに見下ろす。そしてその口元に、見る者の精神を凍らせるような、ゾッとするほど冷徹な冷笑を刻んだ。


「それは……今さら、僕に命乞いでもしているのかい?」


キン・レオンの指先にある十本の太刀長爪から、突如として、目が眩むほど熾烈で眩い金色の光が爆発した。

その語気は、万年降り積もる解けぬ雪山の氷塊の如く、どこまでも冷酷を極めている。


「残念だけどね……僕は、疾くの昔に誓ったんだ。この生涯において……二度と、どんな裏切り者や敵に対しても、微塵の情けすら残さないとね」


第三幕:五段に砕けし右腕

その、冷たい言葉の残響すら夜空の彼方へ消え去らぬうちに――。


『轟――――ッ!!』


キン・レオンの巨体は、百分の一秒という人間の知覚を超えた刹那のうちに、闇夜を両断する一筋の眩い「金色(こんじき)の閃光」へと化していた!


肉眼の限界を優に超越した、神速の突撃!

五指に伸びる数尺の鋭利な太刀利刃を振り上げ、周囲の空間すら切り裂く凄絶な破滅の気流をその身に纏い、彼はタイガーの咽元めがけてまっすぐに直進する!


「クソがぁぁぁぁぁぁ――っっ!!」


死線に直面した一瞬の極限。

タイガーは、自暴自棄に追い詰められた野獣のごとき、最後の悲鳴交じりの咆哮を上げた!


彼はその体内に残された最後の魔力をすべて絞り出し、自らの右腕全体を極限まで完全異化させる――!

黒と白の不吉な縞模様がその皮膚を走り、鋼のごとき硬質な剛毛と、すべてを抉り取る巨大な利爪に覆われた「白虎の巨爪」を大きく横たえ、この致命の一撃を何がなんでも阻まんと荒狂い抗った!


だが。

五日間の殺意と狂気を極限まで蓄積させた、あの太刀の圧倒的な金光の前に――その白虎の巨爪は、余りにも脆弱で、無力だった。


『パキィンッ――!! プスッ……ズシャアアアッ――!!』


想像されていたような、鈍い肉弾戦の衝突音などは、最初から存在しなかった。

ただ、耳の奥を直接引っ掻くような、歯の浮くほど冷徹な骨肉の断裂音だけが、夜空に虚しく響き渡る!


キン・レオンの、極限まで研ぎ澄まされた金色の利刃が、恐るべき切削力を伴って閃いた――。

タイガーの、太く強靭な巨体の誇るはずの「白虎の右腕」は、なんと一瞬にして綺麗さっぱり、残酷なまでに『五段』へと均等に斬り刻まれていたのだ!


『ドシャアッ――!!』


噴水のような鮮血が、半空へと盛大に撒き散らされる!

黒白の剛毛を纏った断腕の肉片が、ドス黒い音を立てて泥地へと重々しく叩きつけられた。


「ギャアアアアアアアアアアアアアア――っっっ!!!!」


我が身を分断される、身を割くような想像を絶する劇痛に。

タイガーは、もはや人間とは思えぬ凄惨極まる絶叫を上げた。

完全に平衡感覚と戦う気力を失い砕け散った彼は、自らの血の海へと重々しく崩れ落ち、その巨大な巨体をエビのように丸めて、激しく、無様に痙攣させ続けることしかできなかった。


第四幕:倒れ伏す旧王

キン・レオンは、その優雅な手つきのまま、十本の太刀長爪をスッと静かに肉体の中へと収縮させた。


彼は、自らの流した血の海で虫のように呻き、もがくタイガーを、どこまでも冷ややかな、底冷えのする瞳で見下ろしている。

西の空に残された夕暮れの最後の残光が、彼の纏う純白の駆魔の長袍を血色に照らし出し――彼は今や、この廃墟の世界における揺るぎなき『金血の修羅』へと、完全に染め上げられていた。


「任務……これにて、半分完了」


キン・レオンは、足元で這い回るタイガーに向かって、氷のように冷たく吐き捨てる。


そして彼は、その倒れ伏す旧き王にとどめの一撃を刺すため、一歩、また一歩と、容赦のない歩みを進めていった……。

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