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魔物探偵事務所~罪を背負いし神父~  作者: 星野翔


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第3章 修羅降世と血色のミサ

第一幕:単騎破城

深夜。

重く禍々しい黒雲が月光をすっかりと覆い隠し、冷たい夜風に乗って、遠方の反乱軍要塞都市から狂乱と喧騒のうめき聲が届いていた。


この街こそ――かつて辺境の修道院を無慈悲に襲撃し、ガブリエル神父と無辜の民を虐殺した、あの敗残兵部隊の最後の核心拠点であった。

要塞の頑丈な城壁の上では、反乱軍の見張り兵が酒瓶を抱え、下品な笑い声を上げて油断しきっていた。


その時。

重く、凍てつくような足音が、一面の枯れ葉と泥水を踏みしめながら、濃厚な闇の霧の奥から城門へと一歩、また一歩と近づいてきた。


闇の中から、高大な人影が次第に鮮明となる。

キン・レオンは、返り血で黒く染まった古びた駆魔の長袍(ローブ)を纏い、その両眸からは、見る者を一瞬で凍りつかせる狂暴な「金色の凶光」を激しく噴出させていていた。


「き、敵襲――っ! 駆魔公安の――」


見張りの恐怖に満ちた尖叫が夜空に響き渡るより早く。

キン・レオンの両手が、音を立てて硬く、硬く握りしめられた!


『ガァンッ! ガァンッ! ガキィィィン――ッ!!』


骨格の劇的な伸縮と、金属が痛々しく擦れ合う鋭い悲鳴のような音とともに――彼の両手の十本の指が一瞬にして爆発的に伸長した!

人の背丈ほどにもおよぶ、鋭利な太刀のごとき金色の利爪が指先から暴射され、凍てつく闇夜の中で絶望的な血色の寒芒を鋭く反射させる!


『轟――――ッ!!』


キン・レオンの巨体が、一筋の金色の閃光と化して突進し、要塞の重厚な鉄の城門を粉々に粉砕した!

その太刀長爪が一閃するやいなや、門の周辺にいた数名の反乱軍兵士は、分厚い木製の扉ごと一網打尽に切り刻まれ、ドス黒い鮮血が滝のごとく大地へと飛び散った。


第二幕:修羅の屠殺

その夜、この要塞都市は、文字通りの生きた地獄へと変貌を遂げた。


胸のなかに埋め込まれた「金色の獅子魔核」から際限なく湧き上がる狂暴な力量と、キン・レオンの魂の奥底に巣食う、過去の惨劇への極限の憎悪が――今、破滅的な共鳴を引き起こしていた。

彼は一條の無情なる殺戮の修羅と化し、その十本の太刀長爪が、暗い路地や大通りで、死の金色格子(メッシュ)を狂おしく紡ぎ出していく。


肉を引き裂く凄まじい音、断末魔の悲鳴、そして次々と倒壊する建物の巨響が、絶え間なく重なり合う。


重装甲で身を固めた反乱軍の歴戦の精鋭であろうと。

震えながら銃を構えて抵抗しようとする悪辣な官吏であろうと。

あるいは、戦火を恐れて地下室や押し入れに身を潜めていた、反乱軍の家族や、ただの一般平民であろうと……。


キン・レオンの血光を宿したその双眸には、いささかの動揺も、迷いも、猶予すらなかった。


(憎しみは、さらなる新たな憎しみを生み出す……。今ここで芽生えた小さな種は、いつか必ず、恐ろしい報復の毒藤へと育ってしまうのだ……)


彼は猛然と太刀長爪を振るい、眼前の防衛線と、命乞いをする者たちを次々と切り裂いていく。

脳裏には、あの日の修道院の血の海に倒れたガブリエル神父の惨状が、そして「自らが犯したひと時の慈悲が招いた、取り返しのつかない破滅」の光景が、呪いのように幾度となくフラッシュバックしていた。


もう、情けなどかけられない。

将来、成長して自分たちへ牙を剥き、復讐の炎を抱いて訪れるかもしれない「憎しみの種」を――この地上に、一つたりとも残すわけにはいかないのだ!


金色の獅爪が通り過ぎた後には、草木一本として残らない。

街全体が、極めて濃密で、そしてあまりに甘やかな血生臭い気配に完全に呑み込まれていった。


第三幕:血の海の中の涙と聖歌

どれほどの時間が過ぎ去ったことだろうか。

街を狂乱の渦に巻き込んでいた荒れ狂う暴風は、ようやくその勢いをひそめ、冷たい静寂へと戻りつつあった。


かつて喧噪と欲望に満ちていた要塞都市は、完全な死寂へと帰し。

鉛色の空から舞い降りる重い大雪が、地表を覆い尽くす漆黒の泥と、眩い猩々緋(しょうじょうひ)の血溜まりを、白く、静かに覆い隠そうとしていた。


街の中心広場には、無数の死体が乱雑に転がっている。


その中で――まだ幼い我が子をしっかりと抱きしめたまま、力なく倒れている一人の女性の死体の傍らで。

キン・レオンの十本の太刀長爪が、まるで役目を終えたかのように、ゆっくりと彼の肉体の中へと収縮していった。


「ドサッ……」


全身を敵の血と肉片で真っ赤に染め上げたキン・レオンは、冷たく凍てつく血の泥水と積雪の中に、その両膝を重く、崩れ落ちるように突いた。


かつては純真な祈りを捧げ、いまや血走り、底知れぬ絶望に満ちたその両眼。

血の海に倒れた母子の姿を直視しながら、その目元から――二筋の熱い血の涙が無声のまま滑り落ち、カチリと乾いた音を立てて、冷たい石畳を叩いた。


キン・レオンは、その震える両手を胸の前で固く組み、項垂れ、その額を深く冷たい積雪へと擦り付けた。

そして、かすれ、切れ切れになり、すすり泣きの混じった声で――かつてガブリエル神父から教わった、死者を導くための聖書の引導を、低く、狂おしく誦唱し始めた。


「主よ……どうか彼らの罪を許し、その永遠の苦しみを和らげたまえ……。彼らの魂を、戦争もなく、暴力も苦痛もない……真の安らぎの郷へと、導き給え……」


無慈悲な赦しを乞う経文の、その一節一節が。

死体で埋め尽くされたこの死の街に、あまりに孤高に、そして凄惨に響き渡る。

それは、この上なく恐ろしく、そして見る者の心を抉るような、痛切な余韻を残していた。


第四幕:悲劇の誓い

「ごめんなさい……ごめんなさい……っ!」


キン・レオンは、震えながら経文を途切れ途切れに紡ぎ続け、その手で、目の前に転がる幼子の冷たくなった頬をそっと撫でた。

彼の目元から零れ落ちる涙と、顔にこびりついた鮮血が混ざり合い、その視界をぐしゃぐしゃに歪ませる。身を裂くような慟哭の声が、その喉から漏れ出した。


「ごめんなさい……僕は、僕はあなたたちを……殺さざるを得なかったんだ……!」


彼はハッと顔を上げ、光の完全に入り混じった漆黒の空に向かって、まるで死に瀕した野獣のような、悲痛な叫びと低く唸る吼声を叩きつける。


「あなたたちを……ここですべて殺し尽くさなければ……この子たちが大きくなった時、いつか同じように憎しみを抱いて、僕たちを殺し返しに来てしまう……っ!」


「このクソみたいな終わりのない戦争は……永遠に終わらない! 憎しみの連鎖なんてものは……人間の手では、どうあっても断ち切ることができないんだぁぁぁぁ――っ!!」


雪と血にまみれた冷たい広場で、彼は自らの胸を強く叩き、咽び泣く。


「だったら……この世のすべての罪業も、すべての地獄の業火も……この僕一人だけで背負えば、それで十分なんだ……っ!」


その夜。

キン・レオンは血の海と降り積もる白雪の中で、ただ一人、街全体のすべての魂のために経文を唱え続け、そのすべての死者に手ずから引導を渡した。


彼は、自らが信じる「憎しみの連鎖」を、その血塗られた手で完全に断ち切った。

だが同時に――その行為によって、自らの魂をも、永遠の罪悪と狂熱という、決して逃れることのできない終わりのない枷の中へと、永久に縛り付けてしまったのだった。

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