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魔物探偵事務所~罪を背負いし神父~  作者: 星野翔


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第2章 咆哮せし金獅子と血塗られた狂熱の願景

第一幕:最前線の黄金戦神

駆魔公安に入隊したキン・レオンは、自らの時間と精力のすべてを、終わりのない苛烈な修練と命がけの戦闘に注ぎ込んだ。


「白衣の死神」クロードの厳しくも、深い慈愛に満ちた直接の指導のもと――。

長年、少年の胸の奥底で抑え込まれていたキン・レオンの恐るべき戦闘の才能は、まるで地底のマグマのごとく狂おしく爆発した! 重厚極まる大剣の扱いにしろ、近接格闘の絶妙な受け流しにしろ、あるいは複雑緻密な陣形の指揮にしろ、彼は一度見れば完全に修得し、ひとたび修得すれば誰よりも完璧にそれを極めてみせたのだった。


「クロード様、本日分の最前線における反乱軍および狂暴な魔物の掃討作業、すべて完了いたしました」


わずか数年のうちに。

キン・レオンはその類稀なる勇武と、驚異的なノーミスの戦績によって、一隊員から公安の精鋭「衝鋒隊(アサルト隊)」の隊長へと破格の抜擢を果たした。


彼は常に戦場の先陣を切り、最も危険な最前線へと身を投じては、治安と無辜の民を脅かす魔物どもをその大剣で粉々に引き裂いた。隊員たちの目には、彼は最も頼もしい不落の盾であり、最も鋭利な矛であった。

そして、キン・レオンの心において――クロードは単なる救いの恩人であるだけでなく、彼をあの修道院の血の闇から引き上げ、「平和なる新世界」へと導いてくれる、唯一絶対の希望の光だった。


第二幕:黄金の獅子の禁忌融合

日増しに苛烈を極める魔物の脅威を完全に粉砕し、一刻も早く世界に秩序をもたらすため。

駆魔公安の上層部は、ついに禁忌の生物兵器研究――「魔化戦士計画」を秘密裏に始動させた。


研究室の中央。

巨大な強化ガラスの培養槽には、眩い金光を放ち、計り知れない狂暴な獣力を宿した強大な魔核――高級魔物「黄金の獅子」の魔核が、生々しく浸されていた。


「キン・レオン隊長……この手術の危険性は、これまでの比ではない。魔核の強烈な拒絶反応は、君の神経系を容易に破壊し、廃人にする恐れがある……」


白衣の研究員が、冷や汗を流しながら憂慮の面持ちで告げた。


だが、キン・レオンの顔に、躊躇の色は微塵もなかった。

彼は培養槽の傍らに立つ、どこか神妙な面持ちのクロードを一瞥すると、心からの、あまりに純粋な笑みを浮かべて頷いた。


「より強大な力を手に入れられるのなら……そして、クロード様の背負う重荷を少しでも分かち合い、戦争も犠牲もないあの世界を一日も早く築けるというのなら……魔核の移植どころか、この命すら喜んで差し出しましょう」


手術は、極秘裏に執り行われた。


鋭利なメスが彼の胸を切り開き、金色に燃え盛る獅子の魔核が、その心臓の傍らに深く埋め込まれた瞬間――。

キン・レオンは、鋼のごとき強靭な意志力ですべての絶叫を喉の奥底に押し殺し、激痛と激しい拒絶反応の嵐に耐え抜いた!


黄金の魔力が怒涛の濁流となって全身の四肢百骸を駆け巡り、一撃で鋼鉄すら引き裂く恐るべき獣力を彼にもたらす。

手術は……類を見ない、完全なる成功を収めたのだった。


第三幕:崩壊する絶望の訃報

数日後。

研究施設の重厚な防爆扉が、重い音を立てて緩やかに開いた。


身体にいまだ消毒液と生々しい血の匂いを残したまま、キン・レオンは、その澎湃たる金光を全身に滾らせる両手を開閉させ、期待と歓喜に満ちた笑みを浮かべて歩み出てきた。

自分を鍛え上げてくれたクロードにこの素晴らしい朗報を伝え、彼のあらゆる障害を払い清める力を手に入れたのだと、一刻も早く伝えたかったのだ。


だが、彼を待ち受けていたのは――クロードからの温かな賛辞などではなかった。

そこにあったのは、凍りつくような沈寂と、窓を叩く冷たい雨の音だけだった。


扉の前に立ち尽くすのは、顔面を蒼白にし、深くうつむいて沈黙に耐える数人の公安の同僚たちだった。


「クロード様は……?」


キン・レオンは微かに眉をひそめた。その胸の奥底から、正体の知れぬ不吉な不安が黒い波のように湧き上がる。


一人の同僚が、おずおずと顔を上げた。

その目元は真っ赤に腫れ上がり、声は激しく震えて、まともに言葉にすらならなかった。


「キン・レオン隊長……あなたが手術を受けていた、この数日の間に……。クロード様の屋敷が、高階級の強力な魔物による、予告なき急襲を受け……。クロード様は……ご夫人と共に……命を落とされました……」


『轟――――ッ!!』


万斤の重槌が脳天から直接振り下ろされたかのように、キン・レオンの魂は、一瞬にして木端微塵に砕け散った!


キン・レオンは、その場に石像のように硬直した。

耳鳴りが耳朶を激しく突き刺し、眼前の世界からは、その瞬間からあらゆる色彩が失われ、ただ冷酷な惨白の光景だけが広がっていく。


「な……何を、ふざけたことを言っている……っ!?」


キン・レオンは、目の前にいた同僚の胸ぐらを掴み上げた。その両眼は血走り、その声はまるで地獄から這い出す野獣の痙攣のごとく掠れていた。


「クロード様は、『白衣の死神』だぞ……! 誰よりも強くて無敵のお方だ! 死ぬはずがないだろう……!? 嘘だ……お前たち、僕を騙しているんだろう――ッ!!」


「本当なんだ……! それに……お二人の子どもまでもが、行方不明に……っ!」


同僚は、耐えきれず泣き叫んだ。


その瞬間。

キン・レオンのなかに残されていた、最後の理性の防壁が――完全に、音を立てて崩壊した。


神父は死んだ。町は炎に包まれて滅びた。

そして今……彼の人生における最後の光であり、この世に平和な世界を創り上げると誓い合った、あのクロード様までもが、彼を一人残してこの世を去ってしまった。


この世界には……。

優しさや愛など、最初から存在する価値すらなかったのだ!


この世界は、醜悪な魔物と、救いようのない人間の罪悪によってのみ織りなされた――果てしなく暗い地獄そのものだったのだ!


第四幕:血色の願景と咆哮する狂魔

「オオオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアア――ッッ!!!!」


耳を穿つほどの一声が、底知れぬ絶望の悲痛と、すべてを焼き尽くす狂暴な殺意を孕んで、キン・レオンの喉の奥底から爆発した!


彼の胸の中に、つい先日移植されたばかりの「黄金の獅子の魔核」が、宿主の天をも揺るがす絶望と怒りの波動に反応し、恐るべき共鳴を引き起こしたのだ!


先刻までの、あの温かく眩い金色の光は――この瞬間、暴虐で、あまりに熾烈な「血色の烈焔」へと、完全に変貌を遂げた!


キン・レオンの瞳からおぞましい血光が放たれ、その身に纏う狂暴な魔力が暴風雨となって狂い吹き、周囲の頑丈な石壁を粉々に打ち砕いていく!


「魔物め……敵め……すべて殺す……!」


彼は両手を、死に物狂いで泥のなへと突き立てた。その目頭からは熱い血の涙が止めどなく零れ落ち、その口からは、呪文のごとき狂気と、狂信的な執着に満ちた低語が漏れ出し続ける。


「殺す……殺す、殺す、殺す……っ! この世のすべての魔物を殺し尽くす! すべての敵と、悪意ある人間を根絶やしにするんだ……っ!」


彼は、狂ったようにゆっくりと立ち上がった。

血のように赤い双眸は、もはや虚無の空虚だけを映し出し、その口元には――極めて歪で、しかし神仏をも恐れぬほどに虔誠(けんせい)なる笑みが刻まれていた。


「クロード様……あなたが成し遂げられなかったその願景は、この僕が、代わりに完全に叶えてみせます……」


「この世のすべての魔物を斬り伏せ、すべての罪悪をその血で綺麗に洗い流せば……もう二度と、あんな悲劇も、戦争も、魔物の蹂躙も起こりはしない……」


キン・レオンは狂おしく天を仰ぎ、血の涙を流しながら叫ぶ。


「これこそが……この汚濁した世界を、神聖なるユートピアへと至らせるための……唯一にして絶対の道なのだからァッ!!」

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