第25話『これが光魔法ですねぇ。』
第25話『これが光魔法ですねぇ。』
あれからリリナは、何度も《ライティ》の練習を続けていた。
最初は一瞬だけだった光も、少しずつ消えるまでの時間が長くなっている。
「では、今日もやってみましょうか」
「はい」
リリナは手のひらを上へ向けた。
自分の中にある魔力を感じ、そのまま手の方へ動かしていく。
ここまではもう、以前ほど迷わない。
手の上に浮かぶ小さな明かりを思い浮かべる。
「ライティ」
ぽっと光が現れた。
以前のように一瞬だけ瞬いて消えることはない。
まだ小さいものの、丸い光が手のひらの少し上に浮かんでいる。
「……できました」
リリナは声を小さくしながら、目の前の光を見つめた。
「ええ。ちゃんと《ライティ》になっていますね」
イスターニャも光を見ながら頷く。
「本当ですか?」
「はい。まだ長く保つ練習は必要ですが、明かりとして使えるところまでは来ています」
その言葉を聞いて、リリナはもう一度光を見る。
自分が動かした魔力が、今は目に見える明かりになっている。
少し前までは、魔力が何なのかすら分からなかった。
それが今では、自分の手の上で光っていた。
「……不思議ですねぇ」
「そうですか?」
「はい。ずっと自分の中にあったのに、今まで何も知りませんでしたから」
やがて光が消える。
リリナは空になった手のひらを見つめてから、ふと思い出した。
「先生」
「はい?」
「兄様に見せてもいいですか?」
イスターニャは少しだけ目を細める。
「もちろんですよ」
以前、アルクスは言っていた。
光を出せるようになったら見たい、と。
待っていてくれるとも言っていた。
(やっと見せられそうですねぇ)
◇
アルクスは訓練場にいた。
木剣を振っていた手を止めると、こちらへ歩いてくるリリナに気づく。
「リリナ?」
「兄様」
アルクスは木剣を下ろした。
「どうしたの?」
「見せたいものがあります」
「見せたいもの?」
そう言ったところで、アルクスの顔が少し変わった。
「もしかして、魔法?」
「はい」
「できるようになったの?」
「少しだけですけど」
アルクスはすぐに木剣を脇へ置いた。
「見たい」
返事が早い。
リリナは思わず笑いそうになった。
「では、やってみますね」
アルクスが少し離れて立つ。
リリナは手のひらを上へ向けた。
さっきはイスターニャがそばにいた。
今はアルクスが見ている。
それだけなのに、少しだけ緊張する。
(いつも通りですねぇ)
魔力を感じる。
手の方へ動かす。
明かりの玉を思い浮かべる。
「ライティ」
手の上に光が現れた。
「おおっ!」
アルクスの声が上がる。
小さな明かりの玉が、リリナの手のひらの上で淡く光っていた。
「本当に出た!」
「はい」
「すごいな、リリナ!」
アルクスが顔を近づける。
「これ、ずっと出していられるの?」
「まだそんなに長くは無理です」
「動かせる?」
「それもまだやってません」
「じゃあ、もっと大きくできる?」
「兄様」
「あ、ごめん」
アルクスが少し照れたように笑った。
「だって、本当に魔法なんだな」
その言葉に、リリナは手の上の光を見る。
「そうですねぇ」
練習している時には、できるようになってきたことは分かっていた。
けれどアルクスが目を輝かせて見ていると、少し違って感じる。
本当に自分が魔法を使っている。
この世界へ来てから初めて覚えた、自分にはなかったものだった。
やがて光が小さくなり、そのまま消えた。
「あ」
アルクスが少し残念そうな声を出す。
「消えちゃった」
「まだ練習中ですから」
「でも見られた」
アルクスは嬉しそうに笑う。
「約束してたからな」
「覚えていたんですね」
「もちろん」
アルクスは胸を張った。
「またできるようになったら見せてよ」
「また、ですか?」
「今度はもっと長いやつ」
「それは先生に習ってからですねぇ」
「じゃあ待ってる」
以前と同じ言葉だった。
リリナは少し笑って、自分の手のひらを見る。
小さな光だった。
長く出せるわけでもない。
それでも、待ってくれていた人にちゃんと見せることができた。
(兄様に見せられましたねぇ)
リリナはもう一度、さっきまで光が浮かんでいた手のひらをそっと握った。




